礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

鵜原禎子が見送る列車は金沢行きの急行「北陸」

2019-01-30 00:36:45 | コラムと名言

◎鵜原禎子が見送る列車は金沢行きの急行「北陸」

 二〇一五年七月九日のブログで、「映画『ゼロの焦点』(1961)を見る」というコラムを書いた。その冒頭部分のみを、以下に、引用してみる。

◎映画『ゼロの焦点』(1961)を見る
 昨日、ビデオで、野村芳太郎監督の映画『ゼロの焦点』(松竹大船、一九六一)を鑑賞した。この映画は、一九七〇年前後に、どこかの名画座でおこなわれたリバイバル上映で見た記憶がある。また、それ以前に、原作(松本清張の小説)のほうも読んでいたと思う。しかし、ストーリーなどは、ほとんど忘れてしまっており、まったく新たな気分で観賞することができた。
 映画は、結婚後一週間しか経っていない妻・鵜原禎子(久賀美子)のナレーションで始まる。すなわち、この映画は、鵜原禎子の視点で描かれている。
 夫の鵜原憲一(南原宏治)は、広告会社の優秀な社員で、金沢出張所長から東京の営業部に異動したばかり。金沢で引き継ぎがあるというので、新しい金沢出張所長である本多良雄(穂積隆信)とともに、上駅駅から夜行列車に乗って金沢に向かう。それを見送る妻の禎子。
 映画の冒頭は、鵜原憲一、禎子、本多良雄の三人が、上野の駅前でタクシーから降りてくるシーンである。タクシーの車種はよくわからないが、ドアが観音開きだったので、たぶん、トヨペット・クラウンRSであろう。このトヨペット・クラウンRSのタクシーは、あとのシーンでも登場する。
 鵜原憲一が、駅の窓口で、金沢までの乗車券と急行券、各二枚、入場券一枚を買う。もちろん「手売り」である。合計で五九三〇円。たぶん、当時の入場券は一〇円だったと思う。改札口では、駅員が鋏を入れる。もちろん、自動改札などというものは、まだない。
 列車は、21時15分発。これは、ホームの表示板で確認できる。また、「直江津・富山経由、金沢行き」というアナウンスが聞こえてくる。【以下、略】

 その後、再度、『ゼロの焦点』を鑑賞してみた(ただし、最初の部分のみ)。その上で、若干の補足をおこなってみたい。
 鵜原憲一らが、切符を買った窓口を、たしか、「出札口」〈シュッサツグチ〉と言った。すでに今日、死語になろうとしている言葉である。
 金沢までの乗車券と急行券、各二枚、入場券一枚で、合計五九三〇円というのは、たぶん、この映画が撮影された時点(一九六〇~一九六一)での料金であろう。入場券が一〇円とすると、乗車券・急行券の合計額は、ひとり当たり、二九六〇円ということになる。
 鵜原憲一らが乗った列車は、二一時一五分発、金沢行きの急行「北陸」である。直江津、福井を経由する。等級は、一等および二等。当時の時刻表があれば、金沢駅着の時刻などが確認できるだろう。
 列車が出発したあと、鵜原禎子がひとり、ホームに立って見送る。ここで、「ゼロの焦点」のタイトル、以下、クレジットとなる。出だしから、なかなか、よく出来ている映画だ思う。
 小説の舞台とされている時代は、一九五七年(昭和三二)、またはその翌年であると言われている。ただし、映画は、時代をそこまで遡らせようとはしてはいない。もし、遡らせようとしているのであれば、映画のなかに、一九五九年(昭和三四)発売の「グロリア」(プリンス自動車)が登場するはずはないからである。【この話、続く】

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