「母と息子の大文字山登山」・「夏の怖い体験談~美人幽霊 真弓」・1分で読めるミニ小説 2話過去作
母と息子の大文字山登山…五山の送り火
ある日、京都駅から私のタクシーに年配の女性と若い男性が乗車されて、
「運転手さん、無理なお願い聞いていただけます」
「はい、何でもどうぞ、観光なら得意ですから」
「いえ、観光と言えるかどうか...実は~」と今日の目的を聞かされた。
この母子は、岡山から来た人でこの春から一人息子が東京の大学へ行くそれで初めての日帰り旅行をと京都へ来たが、それが観光ではなくて何か一生の想い出を残したいと言う。
「一生の想い出ですか~」
「はい、この子の父親は早く亡くなり、私は死に物狂いで働いて高校までは何とか、ところがどうしても東京の大学へ行くというので...息子は奨学金とアルバイトで生活は出来るというので、でも東京と岡山では余りにも遠すぎるのでしばらく会えないので...私も二十数年働いた会社が倒産して今は失業保険暮らしの上、体調も良くないし...」
「そうですか、わかりました」と応えたが私の頭はパニックになっている。
清水寺の舞台から飛び降りれば一生の...いや、怪我をする。金閣寺の池に...、嵐山の渡月橋からーいやどれもこれも人騒がせするだけだ、
一生の想い出~ウーン、そうだ~!。
「お母さん、五山の送り火を知っていますか?」
「はい、大文字焼のことですね」
「そうです、それを何で知りました」
「いつも、お盆にNHKのテレビで...主人が亡くなってからはいつもテレビに大文字が映ると息子と二人で手を合わしています」
「それなら丁度良い、どうです、大文字山に登りませんか?」
「え、山ですか?」
「いえ、山といってもほんの30分ほど歩けば大の字の火床に行けます。そこからは京都が一望出来て素晴らしいです。それにここなら年に一度は必ずNHKの九時のニュースで放送されます。東京と岡山と同時にです、離れていても一生の想い出になります」
それまで黙っていた息子が始めて口を開いて、
「お母さん、そうしょう。金閣寺や清水寺は俺が学校を卒業して就職したら必ず連れってやるから、今日は運転手さんの言う通りに...」
どんな小さな山でも山は山。曲がりくねった坂道は自然に親子の手を固く結ばせ、息子は照れもせず母親の額の汗を拭いていた。
⭐~大文字山は銀閣寺の裏山にあり門前を北へ一本道になっています。大文字の火床までは約30分で行けます。途中にはこの山が大昔地中にあった証拠としての「貝の堆積」の地層があります。京都の人はこの大文字の火床に残った黒い灰を持ち帰り「家内安全」のお守りにしています。尚、小さな山でも山ですから火床から奥へは絶対に行かないでください...遭難の恐れもあるからです。
⭐~銀閣寺からは哲学の道~法然院~永観堂~南禅寺~と歩くコースになっています。健脚の方は、さらに平安神宮~知恩院~円山公園~八坂神社~高台寺~清水寺~三十三間堂~JR京都駅。このコースは先に市バス(230円)タクシー(JR京都駅から約2200円)に乗って銀閣寺に行くほうが便利で復路もししんどくなったり時間がななくなれば即タクシー、市バスに乗れます。
⭐~身障者手帳をお持ちの方は全国共通ですから忘れないように!この手帳を明示すればタクシーは10%割引、各観光寺院にも本人無料、介添え者割引等々のサービスもありますが、これは拝観料の券を買う窓口には不親切にも書いてありません。いずれ私がこの問題をこのブログ等で改善いたします。
夏の怖い体験談~美人幽霊 真弓
夏の夕暮れ、宇治の国道24号線で若い女性が手を高く上げてタクシーを拾った。客は岩倉までと告げた。私はこの暇な時に宇治から京都の北部までの客にありつけラッキーと思っていた。
その娘は17~18歳でまだ幼さが残る笑顔は透き通るように白い、小一時間の道程でその娘は病気をして入院をしている。今日は法事のため外泊がゆるされ家に帰ることなどを私に楽しげに話している。タクシーは川端通りから白川通りに入ると、娘は右前方を指さして、
「ほら、あの店「レストラン・まゆ」」は私の名前「真弓」から取っておとうさんが付けてくれたの」
「へエ~そうなの、ここにこんな店があるのは知らなかった」
「そらそうよ、まだ開店していないの、私の病気が治るまで」
「それなら病気が治って、店がオープンしたら必ず行きます」
「うれしい~♪」
車は岩倉の閑静な住宅街に入り、娘の指示通りの家の玄関に止めた、娘は、
「運転手さん、少し待ってね、お金もらってくる~」
それからもう十数分たつが誰も出てこないので、玄関のチャイムを鳴らすと母親らしき人が出てきた。
「すいませんータクシーですけど~」
「はぃ?、うちはタクシーをたのんでいません…」
「いやいや、その~娘さんの分です」
「娘…娘って、真弓のこと」
「はい、その真弓さんを宇治の病院の前からここまで…」
その母親は、真っ青な顔になり、「お、お父さん~」
ようやく事情がわかったのか部屋に通された私の目に、真新しい仏壇と遺影が入った。そこにはさっきまで私のタクシーに乗っていた真弓が笑顔で私を見ている。
真弓は白血病で宇治の病院で亡くなった。そして昨日葬儀が行われていた。両親にタクシーの中での会話を伝えると、母親は涙を流して、
「真弓を家に連れて帰ってもらってありがとうございました。これであの娘も成仏できます」
と、何度も頭を下げられていました。
⭐~タクシーと幽霊というのは何かと縁があるものでこの京都でも、真夜中に美人を乗せたがルームミラーには映らず運転手が後ろを見ると乗せたはずの女性が消えていた。そして座席はびっしょり濡れていたというものです。
⭐~この幽霊が出没する場所というのも病院の裏、墓地、池の近くと相場も決まっています。また京都らしく平安時代の風葬の跡地の北嵯峨野、渋谷街道、蓮華谷となります。この渋谷街道の裏山は豊臣秀吉の墓がある阿弥陀ヶ峰で、その裏山の谷には今でも京都市の火葬場があります。つまり一千年以上もここは死者の最後の場でもあるのです。
⭐~国道1号線の山科から京都市内の抜け道として私もよくタクシーで通りますが、やはり空車でも行灯を消して大急ぎで通り抜けますがやはり一千年の怨念というのか霊気が…この怨念の谷になぜか女子大のテニスコートと女子寮があります。この話をもしこの女子大の寮生が偶然読んだら!~!!!
作/音川伊奈利
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