[マレ 23日 ロイター] - インド洋に浮かぶ小国モルディブで今月発足したばかりのイブラヒム・モハメド・ソリ新政権は、中国からの債務がどの程度に膨らんでいるのか見当もつかないと述べ、同国で起きた建築ブームの裏側で過去5年間に膨らんだ債務が持続不能となるリスクを懸念している。
17日に就任したソリ大統領の参謀役を務めるモハメド・ナシード元大統領によれば、駐モルディブ中国大使Zhang Lizhong氏は、モルジブ政府に対し32億ドル(約3600億円)に上る「請求書」を渡したという。これは国民1人当たり約8000ドルに相当する額だ。
ただし中国側はこれを否定しており、金額は15億ドルに近いと述べている。
「あれはまさに請求書だった。32億ドルという金額だけが記載されていた。衝撃的だった」とナシード氏。「単なる会話ではなく、文書を突きつけられた。はっきりと、あなた方はわれわれにこれだけ借金があると告げていた」
9月の大統領選挙で親中派のアブドラ・ヤミーン前大統領を破り、驚くべき勝利を収めたソリ大統領は、10月6日に行われた会談の席で中国大使からこの通達を受け取った。ナシード氏はそう明かすが、正確な文面については、詳細を明らかにしなかった。
この発言について、中国外務省は、駐モルディブ大使が「事実ではない」と声明で否定していると指摘。ニュースサイト「アバス」で、対中債務報道が「ひどく誇張されている」と語った同大使のインタビューについて言及した。
現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」を掲げる中国は、中東に至る活発な輸送航路上に位置するモルディブでのインフラ整備のために、多額の融資を提供している。
だが、白い砂浜と青い海で知られる人口40万人のモルディブ列島で生じた前例なき建設ブームは、同国が債務を膨らませているのではないかという懸念を巻き起こし、野党は声高なキャンペーンを繰り広げた。それに力を得た野党連合のソリ氏が、大統領選挙で現職ヤミーン氏を打ち負かした。
中国の「一帯一路」プロジェクトは、その積極的な融資姿勢によって「借金漬け外交」を繰り広げていると一部で批判を浴びている。
<食い違う数字>
ソリ新政権は、モルディブ財政が予想よりも悪化していると指摘。中国企業と締結した契約すべての詳細を解明するには、数週間から数カ月を要すると発表している。
「中国に対して、実際どれだけの債務を負っているか把握できず、困惑している」とナシード氏は語る。
「1つには直接債務、つまり政府間の2国間直接債務があるが、それに加えて、民間セクターに向けた国家債務保証がある。さらにそれ以外にも、国有企業による債務がある」と付け加えた。
ヤミーン前大統領からは、コメントを得ることができなかったが、同氏は選挙期間中、ここ数年で過去のどの時点より多くの雇用が生まれており、そのために自らの政権は債務を重ねたと発言している。
「4─5年という短期間に、多年にわたる開発が始まった。だが私が言ったように借入れを行わず、モルディブ国民が稼ぐ収入だけで事を進めようとすれば、ここまでの開発は不可能だった」と同氏は言う。
Zhang中国大使は、「アバス」のインタビューで、モルディブの対中債務は6億ドルで、首都マレと空港を結ぶ海上橋の建設、空港の拡張、埋立地でのタワーマンションの建設に投じられたと述べている。
同大使によれば、これとは別に、発電から住宅に至るさまざまなプロジェクト資金として9億ドルが複数の国有企業向けの銀行融資として確保されているが、その融資の多くはまだ実施されていないという。
この数字は、21日行われたモルディブ国民議会の公共財政委員会におけるモルジブ中銀総裁の証言によって、ほぼ裏付けられている。この証言で総裁は、同国の対中債務は15億ドルだと試算している。
前政権に任命されたモルディブ金融庁のアフメド・ナシール長官は、中国に対する政府間債務は合計で約6億ドルと推定する。残りの9億ドルは、国家による債務保証が付された、中国の銀行からの融資推定額だと同長官は述べている。
ナシード氏は、中国大使の表向きの発言は、中国側がソリ大統領に伝えた内容と異なっていると主張する。中国大使はその後ナシード氏との面会を要請してきた、と同氏は言う。
モルディブのアブドラ・シャヒード外相は22日、2国間問題を協議するために近日中に中国を訪問すると述べた。
<問題は国家による債務保証>
ソリ大統領の政権移行チームの一員で、今週政権にも参加した当局者は、中国側が先月提出した通達について話を聞いており、国家による債務保証が原因となって数値が膨れあがった可能性があると語る。
「債務の状況を明らかにしようと努めている。多くの借用証が文書として発行されたようだ。どの程度の金額をどこから借りているのか把握しようと取り組んでいるところだ」と同当局者は匿名で語った。
政府歳入が年間15億ドル、国内総生産が約39億ドルであるモルディブにとって、これほどの規模の債務を返済していくことは困難だ、と やはり新たに政権に参加し、国営企業の債務の検証を担当する別の当局者は指摘する。
「財政破綻させるわけにはいかない。国家債務保証が定める通りの債務を認めてしまえば、われわれは債務超過に陥るだろう」
環礁上に建設された高級リゾートへと観光客を運ぶ高速船の出発地となっている首都マレでは、至る所でインフラ建設ブームの兆候を確認できる。
ヤミーン前大統領は、観光客向けのリゾート施設を建設するために、中国系デベロッパーに不特定数の島々を貸与してきた。観光客の5分の1は中国人であり、8年前に中国政府がモルディブに大使館を開設して以来、両国の関係は劇的に拡大している。
モルディブ外務省はロイター宛の声明で、「繰り返しておきたいが、中国とモルディブのあいだでは、対等で相互に利益のある関係をベースに互恵的な協力が行われており、すでに誰の目にも明らかな形で成果が生まれているし、モルディブ国民に歓迎されている」と述べている。
「モルディブ新政権によるリーダーシップの下で、モルジブと中国の友好的な協力は前進を続け、新たな成果を生み続けるだろう」
(翻訳:エァクレーレン)
以上、ロイター記事
>政府歳入が年間15億ドル、国内総生産が約39億ドルであるモルディブにとって、これほどの規模の債務を返済していくことは困難だ、と やはり新たに政権に参加し、国営企業の債務の検証を担当する別の当局者は指摘する。
小国がGDPの約半分を借金すると将来、真っ暗という感覚だろう。
返済が滞ると中国に領土を取られてしまい、実質植民地化してしまう。