中国行きのスローハンド

彼女に出会った、あの日から

離別

2023-06-30 06:59:37 | 日記
義姉はベットから起き上がれなくなっていた

妻が姉の世話をする

言葉数も少なくなり
一日の殆どが眠りの中である

あるとき
僕にマッサージしてもらおうかな
と呟いたそうだ

彼女の下半身は
パンパンに腫れあがっていて
マッサージどころではなくなっていた

日々弱っていく義姉が僕を枕元に呼んだ

全身で振り絞った声は
とてもか細く
僕を悲しくさせた

「ありがとうね」

彼女の目には涙が浮かんでいた

「義姉さん
僕の方こそ、出会ってくれてありがとう」

力の限り上げた彼女の手が微かに動いた

僕はその手を両手でしっかりと包み込んだ

義姉は何度か頷いて、微笑み
眠りにつく

しっかり、彼女を抱きしめたかった
しかし、それは叶わない


大好きな義姉の寝顔はとても優しかった

僕は、朝、目が覚めたとき
仕事にでかけるとき
仕事から帰ったとき
眠りにつくとき

必ず、ベットに横たわる義姉に声をかけた

義姉は、そのたびごとに

微かに頷いた

目を閉じた、その笑顔は
この上なく、愛おしかった













感情

2023-06-20 02:37:15 | 日記
例えば既婚者であっても
聖職者と呼ばれる人であっても
人を好きになってしまうことがある

その気持ちを抑えることこそが正義だとしたら
あまりに酷なことである

しかし、抑えきれずに
思うがままに行動してしまった場合
取り返しのつかないほどのリスクを背負うことになる

リスクを背負ってしまうから
その感情に蓋をしてしまうのか…

人として、それが正しいから
飛び出しそうな欲望に鎖をかけてしまうのか…

不倫という言葉が独り歩きしてしまって
その奥底にある感情を誰も理解しようとしない

でも、誰もが陥ってしまう可能性はあるのだ

まことしやかに正義を振り翳す
詭弁者たちにも、その感情は絶対といっていいほど潜んでいる


僕は、義姉を力いっぱい抱きしめることはできなかった

妻のことを、そして、妻の両親のことを考えると
妄想の域を脱することはできなかった


義姉が少しずつ力を失くしていく

ソファーで眠っている彼女の髪を撫でる

彼女の額に、そっとキスしようとしたけど
躊躇してしまう

義姉は、もしかしたらそれを待っていたのかもしれない

優しく閉じた瞼のふちに、雫が滲んでいた


2023-06-14 02:34:59 | 日記
僕は、週末も家に帰るのをやめようかと思った

義姉への想いが
僕の意識を正常じゃない方へと誘ってしまう

その顔を見ているだけで
居た堪れないのだ

彼女に触れたいという願望が極限まで達している

みんなで食事をするときも
車に乗ってどこかへ出かけるときも
寛いでテレビを見ているときも

とにかく、義姉に触れたくて仕方ない

妄想の中でしか、彼女を抱けない

どうしても自分の感情を抑えることができなかった

ある時、ふと言葉にしてしまったことがある
義姉と二人きりになったとき…

「好きになってはいけない人を好きになってしまっている」

僕の言葉に、彼女は少し戸惑いを感じていた
自分のことだと気が付いたはずだ

今この場で、義姉を後ろから抱きしめ
唇を重ね
服を脱がし、肌を寄せ合いたい

でも、それをしたら、すべてが崩壊する

切なすぎる…

僕は、油断すると溢れ出してしまう本当の気持ちに
分厚い蓋をし、重い石を乗せた

欲望は、妄想の中で爆発していた





同居

2023-06-08 10:52:19 | 日記
1階に、妻の両親と姉
2階に、僕たち夫婦が住むことになった

やはり、一緒に住むとなると
いろいろ、気になることが出てくる

パジャマ姿で、2階に上がってきて寛ぐし
洗濯物の下着だって目に入る

一度、風呂上りにバスタオル一枚でトイレに行ったら
義姉が入っていたことがあった

バスタオルがするっと落ちて
一物を見られた

僕は、そんな毎日に限界を感じて
当時勤めていた会社の寮に寝泊まりすることにした

週末に家に戻る生活

せっかくの新居に僕だけ住めないという状況になった


週末、家に戻って2階のソファーに寝ていると
顔のあたりに人の気配を感じた

頬に唇があたった

義姉の髪の匂いがした

僕は、そのまま寝ているふりをした



しばらく、目を開けることができなかった

2023-06-07 02:22:48 | 日記
義姉は東北の高校を卒業して
上京した

外国語の専門学校に入学し
卒業後は、大手の電機会社に入社する

そこを退社してからは
派遣会社に登録し、様々な職種の仕事を経験した


彼女は、生涯独身だった
既婚歴はない

若いころからずっと付き合っていた男性はいたが…
彼は既婚者だった

僕たちが同居するまで、彼との関係は続いた


20代の頃、都内に輸入雑貨店を開業することになり
義姉に店の管理をしてもらったことがあった

そこに、その男性が頻繁に出入りしていたのを知る

結局、運営はうまくいかず、閉店した

僕は、彼女に嫌悪感を感じ始めていた

今思うと、それは嫌悪感ではなく
嫉妬だった

断ち切れない執を抱えながら
僕は、家を建て、妻の家族と同居することを決意する