東京日記
静岡県焼津市、藤枝市、北海道の札幌市にあるIT企業グループの経営者 松田敏孝の日記です。




とても不思議なんだけど、夏になると小説を読みたくなる。学生の頃は小説をよく読んだけど、社会にでてからはもっぱらビジネス書ばかり。でも毎年 夏は小説なんだよね。

日本の夏って欧米と違ってジトーッとしてるし、8月になると「高校野球」と「戦争」という2大コンテンツがテレビ、新聞を独占して、一種独特な「日本的雰囲気」を創りだしていると思う。そんなとき、なんとなく日本っぽい小説を読みたくなるんだよね。そういう気分になるのが今年は例年よりちょっとはやかったかな。


「夜のピクニック」は2005年度の本屋大賞受賞作品。「本屋大賞」っていうのは全国の書店員の投票で決められる、「本屋さんがいちばん売りたい本」とのこと。

自分的にはこういう賞は好き。芥川賞とか直木賞とか言うと、審査員がプロなので、「一般読者がいいと思っている作品と同じ作品を選ぶと、読者と同じレベルの選定眼しかもっていないと思われる」のがいやなのか、なんかとっぴな作品を選ぶ傾向があるように感じる。歴代の本屋大賞と芥川賞の受賞作品を比べれば一目瞭然だ。本屋大賞の受賞作品の方が断然いい。

そうそう。書評を書かないと。

ある高校で毎年1回行われている「歩行祭」という行事。これは日中から次の日の日中まで、ほぼまる1日歩き続けるという伝統行事で、1年生から3年生まで、全生徒が参加する。その歩行祭の様子を描いた作品。

最初のうちこそ、おしゃべりをしながら楽しく歩くけど、徐々に足は限界になり、押し黙ったままの行列になっていく。ただ深夜の「しゃべるのもだるい」という状況だからこそ、友だちと話せることもたくさんあり、そんな会話や生徒たちの心の機微が克明に語られる。

登場人物は高校生だけ。主人公の西脇融(にしわきとおる)と甲田貴子(こうだたかこ)を中心に、その友人たちが多数登場する。先生は一度も登場しない。高校生だけの「ワールド」だ。

生徒たちの多くは極限まで肉体を酷使する歩行祭を鬱陶しく思っているけど、心のどこかで「歩行祭はいいな」と思っているのは、「極限状況を乗り越えてこそ味わえる達成感」があるからなんだと思う。
「1日中歩く」という極めて地味な行為を続け、「もう歩けない」という状況を乗り越えたときに、爽やかな達成感が訪れる。そのことを知っているからこの伝統行事を大切にしているんだと思う。

そこに高校生らしい会話、特に主人公たち高3生は、まもなく仲間と離ればなれになっていく時間的切迫と受験という難関を抱えているし、ほのかな恋心みたいなものもからんできて、精神的には不安定なんだけど、彼らなりに懸命に考え、生きている様子がすごくいい感じなのだ。暴力沙汰も色恋沙汰も、なにもでてこなくて、淡々と歩行祭の1日が語られるんだけど、最後の方はどんどん盛り上がってきて、引き込まれてしまう。

この小説が2005年に書かれていることに、「ちょっと感動的」と思ってしまった。現代もすてたもんじゃないね。
高校生たちはもちろん、大人が読んでも なんとなくノスタルジックな感じで楽しめる小説。おススメです。

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
私が書いた小説も・・・ (はな)
2007-08-04 08:41:52
もしも,もしも,万が一,そんなチャンスが訪れるとすれば,私が書いた小説も読んでやってください!(って,それじゃあ,どんな小説なのかわからないですね。はい。すみません。)
でも,この3月まで,とある雑誌に連載をしたりもしてたんですよ!(って,それでもわからないですねっ。すみません。)

出直してきます。
 
 
 
ぜひ教えて下さい (としたか)
2007-08-04 11:41:49
はなさん、コメント どうもありがとうございます。

そうです。それじゃわからないです (^_^;) 。どうぞ教えて下さいませ。こちらのコメント欄に小説名を書くのが気が引けるようでしたら、このブログの右側にある「CONTACT ME」ってところから ぼくに意見など送れるようになっていますので、遠慮なくどうぞ。

どんな小説なのか楽しみ~。コメント、お待ちしております。
 
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