(2002/エイドリアン・ライン監督/ダイアン・レイン、リチャード・ギア、オリヴィエ・マルティネス、エリック・パー・サリヴァン/124分)
ほんの些細な浮気のつもりだったお父さんに対して、実は相手がとんでもない女性だったという不倫サスペンス映画「危険な情事(1987)」のライン監督の、いわば逆バージョン作品。
緑豊かな郊外に庭付きの住宅を構え、ニューヨークで会社を経営する夫と9歳の男の子がいる美人でスマートな奥さんが、買い物に出かけた街でセクシーな青年と出逢い、淫らな誘惑に負けてしまう。夫に不満はないし家庭も壊したくはないんだが、日常では味わえない快感が彼女を突き動かす。背徳の喜びと共に、罪深さにも苛まれ、彼女が男との別れを決心した頃、夫は男のアパートに乗り込んでいた・・・という話。
ダイアン・レイン扮する人妻はコニー、夫エドワードにはリチャード・ギア、フランス訛りの青年ポールにはオリヴィエ・マルティネスが扮している。(マルティネス君はよく知りませんが、イブ・モンタンの遺作「IP5/愛を探す旅人たち(1992)」の共演者だそうです)
ダイアンはこの作品の演技で2002年のアカデミー賞、 ゴールデン・グローブ賞、放送映画批評家協会賞の主演女優賞にノミネートされ、全米批評家協会賞とNY批評家協会賞では主演女優賞を獲得した。エロチックなシーンが多い為、劇場では成人指定となったようですが、そういった大胆なシーンだけでなく複雑な心理描写も見事な演技でした。
「二重の鍵」、「いとこ同士」などのフランスのヌーベル・バーグの監督、クロード・シャブロルが1969年に手掛けた日本未公開作品がオリジナルとのこと。
脚本は、「ペーパー・ムーン(1973)」、「ジュリア(1977)」、「普通の人々(1980)」等のアルヴィン・サージェントと、「アポロ13」にも参加したウィリアム・ブロイルズ・Jrの共作。
「トスカーナの休日」の記事へのコメントでH度テンションが高くて面白いとご推薦いただいていた作品で、その頃吹き替え版が放送されたので録画し、終盤の手前で観るのを封印しておりました。今回はレンタルDVDの鑑賞。序盤、中盤にも吹き替え版には無かったシーンがありましたが、緊張の途切れないイイ本でした。しかも、ショットの構成も上手い!
ピーター・ビジウのカメラが切り取った幸せそうな日常風景も、ライン監督の手に掛かるとサスペンスの序章に見えてきます。
基本は昔の昼メロにありそうな人妻の浮気話なのに、見せ方や設定で登場人物の心理に深みをもたせ、映像に厚みを出すことに成功しています。
例えば、コニーとポールとの最初のベッド・シーンを、彼女が家へ帰る途中の電車の中で思い出すという形で見せたり、幾度目かの逢瀬でポールのアパートの近くに来ていたコニーが知人の女性二人に偶然会い、彼女達とお茶をしているところにポールが素知らぬフリでやって来て、コニーと彼との関係を知らない知人がポールを話題にしたり、片方の女性が昔の浮気で酷く傷ついた話をしたり・・・など。
ネタバレになるので詳細は(ネタバレ注意)の中で書きますが、中盤以降の夫婦の関係にもサスペンス要素が満ち満ちていて面白うございました。
そしてそして、我々男性にはダイアン・レインのセクシーショットも堪能出来るわけです。
▼(ネタバレ注意)
探偵に調査をさせてコニーの浮気を確認したエドワードは、単身でポールのアパートを訪ねる。コニーの夫だと自ら名乗り、ポールの反応を見る。ベッドの横にかつてコニーにプレゼントしたガラスの置物を見付けたエドワードは、錯乱状態となり、いきなりポールの頭をソレで殴り、殺してしまう。
一旦は自首しようとしたエドワードだが、思い直して隠蔽工作を始める。指紋をふき取り、遺体をシーツやカーペットで包み、床に広がった血を洗う。この時にも面白いシーンがありました。
エドワードが隠蔽工作中のところにコニーから電話が入る。それはポールへの別れを告げる電話で、留守電のテープに『これ以上夫や子供にウソはつけないから』とコニーは涙ながらに話している。
この映画には、“あそこでアレがこうなっていたら、こんな結果にはならなかったのに”という設定が多いのですが、このシーンではエドワードも“もう少し早く電話してくれてたら”なんて思ったのではないでしょうか。
コニーは知らなかったがポールは妻帯者であって、別居中の妻が連絡の取れなくなった彼の捜索願を出し、アパートに残っていたコニーの電話番号を辿って警察が訪ねてくる。コニーとしては縁の切れた男だし、最初は行方不明の件だったので、名前は知っているがそれ以上はよく知らないとウソをつく。やがて、ポールの死体がゴミ置き場で発見され、エドワードと一緒の時に又しても警察がやって来る。
この時の夫婦と刑事のやりとりも面白いし、その後の夫婦のシーンも見応えがある。
夫が自分を庇って刑事にウソをついていることに気付いたコニーは、同時に夫がポールの死に関係していると薄々気付く。
友人達を招いたホーム・パーティーでポールに渡したはずのガラスの置物が自宅に帰っているのを見付けたコニーは、夫がポールを殺したことを悟る。その後クリーニングに出そうとしたエドワードの上着に、自分とポールとの2ショット写真を見付けたコニーは、夫が全てを知っていたことに衝撃を受ける。その夜、二人は全てを話す。
一回目の鑑賞では、この後の展開の予想が出来ませんでした。
自分達の運命を決めかねたまま夫婦の時は過ぎる。
休日を静かに家族で過ごしながらも、遠く聞こえるパトカーのサイレンに互いを見つめ合い、夫婦はかけがえのないものを失ってしまいそうな自分達の情況を共有する。ポールのアパートから夫が持ち帰ったガラスの置物を見ていたコニーが何気なく台座を外すと、中に夫のメモと家族の写真が入っているのに気付く。何年か前にプレゼントされた時から入っていたはずだが、写真の裏にはエドワードの永遠に変わらぬ愛が綴ってあった。『君は人生の糧だ』。
その夜、ポールとの写真を暖炉で燃やすコニーの表情を見ながら、私はコニーがエドワードの身代わりにポール殺害の犯人として警察に自首しに行くのだろうと読みました。自らの運命をそうし向ける、だから日本語タイトルが「運命の女」なんだと。実際は違いましたが、昔のヨーロッパ映画ならこんな結末もありそうですよね。
特別編DVDには、特典映像に別バージョンのエンディングがあるそうですが、今回借りたものにはソレがなく、ちょっと気になりました。いつか探してみよ。
▲(解除)
ほんの些細な浮気のつもりだったお父さんに対して、実は相手がとんでもない女性だったという不倫サスペンス映画「危険な情事(1987)」のライン監督の、いわば逆バージョン作品。
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緑豊かな郊外に庭付きの住宅を構え、ニューヨークで会社を経営する夫と9歳の男の子がいる美人でスマートな奥さんが、買い物に出かけた街でセクシーな青年と出逢い、淫らな誘惑に負けてしまう。夫に不満はないし家庭も壊したくはないんだが、日常では味わえない快感が彼女を突き動かす。背徳の喜びと共に、罪深さにも苛まれ、彼女が男との別れを決心した頃、夫は男のアパートに乗り込んでいた・・・という話。
ダイアン・レイン扮する人妻はコニー、夫エドワードにはリチャード・ギア、フランス訛りの青年ポールにはオリヴィエ・マルティネスが扮している。(マルティネス君はよく知りませんが、イブ・モンタンの遺作「IP5/愛を探す旅人たち(1992)」の共演者だそうです)
ダイアンはこの作品の演技で2002年のアカデミー賞、 ゴールデン・グローブ賞、放送映画批評家協会賞の主演女優賞にノミネートされ、全米批評家協会賞とNY批評家協会賞では主演女優賞を獲得した。エロチックなシーンが多い為、劇場では成人指定となったようですが、そういった大胆なシーンだけでなく複雑な心理描写も見事な演技でした。
「二重の鍵」、「いとこ同士」などのフランスのヌーベル・バーグの監督、クロード・シャブロルが1969年に手掛けた日本未公開作品がオリジナルとのこと。
脚本は、「ペーパー・ムーン(1973)」、「ジュリア(1977)」、「普通の人々(1980)」等のアルヴィン・サージェントと、「アポロ13」にも参加したウィリアム・ブロイルズ・Jrの共作。
「トスカーナの休日」の記事へのコメントでH度テンションが高くて面白いとご推薦いただいていた作品で、その頃吹き替え版が放送されたので録画し、終盤の手前で観るのを封印しておりました。今回はレンタルDVDの鑑賞。序盤、中盤にも吹き替え版には無かったシーンがありましたが、緊張の途切れないイイ本でした。しかも、ショットの構成も上手い!
ピーター・ビジウのカメラが切り取った幸せそうな日常風景も、ライン監督の手に掛かるとサスペンスの序章に見えてきます。
基本は昔の昼メロにありそうな人妻の浮気話なのに、見せ方や設定で登場人物の心理に深みをもたせ、映像に厚みを出すことに成功しています。
例えば、コニーとポールとの最初のベッド・シーンを、彼女が家へ帰る途中の電車の中で思い出すという形で見せたり、幾度目かの逢瀬でポールのアパートの近くに来ていたコニーが知人の女性二人に偶然会い、彼女達とお茶をしているところにポールが素知らぬフリでやって来て、コニーと彼との関係を知らない知人がポールを話題にしたり、片方の女性が昔の浮気で酷く傷ついた話をしたり・・・など。
ネタバレになるので詳細は(ネタバレ注意)の中で書きますが、中盤以降の夫婦の関係にもサスペンス要素が満ち満ちていて面白うございました。
そしてそして、我々男性にはダイアン・レインのセクシーショットも堪能出来るわけです。
▼(ネタバレ注意)
探偵に調査をさせてコニーの浮気を確認したエドワードは、単身でポールのアパートを訪ねる。コニーの夫だと自ら名乗り、ポールの反応を見る。ベッドの横にかつてコニーにプレゼントしたガラスの置物を見付けたエドワードは、錯乱状態となり、いきなりポールの頭をソレで殴り、殺してしまう。
一旦は自首しようとしたエドワードだが、思い直して隠蔽工作を始める。指紋をふき取り、遺体をシーツやカーペットで包み、床に広がった血を洗う。この時にも面白いシーンがありました。
エドワードが隠蔽工作中のところにコニーから電話が入る。それはポールへの別れを告げる電話で、留守電のテープに『これ以上夫や子供にウソはつけないから』とコニーは涙ながらに話している。
この映画には、“あそこでアレがこうなっていたら、こんな結果にはならなかったのに”という設定が多いのですが、このシーンではエドワードも“もう少し早く電話してくれてたら”なんて思ったのではないでしょうか。
コニーは知らなかったがポールは妻帯者であって、別居中の妻が連絡の取れなくなった彼の捜索願を出し、アパートに残っていたコニーの電話番号を辿って警察が訪ねてくる。コニーとしては縁の切れた男だし、最初は行方不明の件だったので、名前は知っているがそれ以上はよく知らないとウソをつく。やがて、ポールの死体がゴミ置き場で発見され、エドワードと一緒の時に又しても警察がやって来る。
この時の夫婦と刑事のやりとりも面白いし、その後の夫婦のシーンも見応えがある。
夫が自分を庇って刑事にウソをついていることに気付いたコニーは、同時に夫がポールの死に関係していると薄々気付く。
友人達を招いたホーム・パーティーでポールに渡したはずのガラスの置物が自宅に帰っているのを見付けたコニーは、夫がポールを殺したことを悟る。その後クリーニングに出そうとしたエドワードの上着に、自分とポールとの2ショット写真を見付けたコニーは、夫が全てを知っていたことに衝撃を受ける。その夜、二人は全てを話す。
一回目の鑑賞では、この後の展開の予想が出来ませんでした。
自分達の運命を決めかねたまま夫婦の時は過ぎる。
休日を静かに家族で過ごしながらも、遠く聞こえるパトカーのサイレンに互いを見つめ合い、夫婦はかけがえのないものを失ってしまいそうな自分達の情況を共有する。ポールのアパートから夫が持ち帰ったガラスの置物を見ていたコニーが何気なく台座を外すと、中に夫のメモと家族の写真が入っているのに気付く。何年か前にプレゼントされた時から入っていたはずだが、写真の裏にはエドワードの永遠に変わらぬ愛が綴ってあった。『君は人生の糧だ』。
その夜、ポールとの写真を暖炉で燃やすコニーの表情を見ながら、私はコニーがエドワードの身代わりにポール殺害の犯人として警察に自首しに行くのだろうと読みました。自らの運命をそうし向ける、だから日本語タイトルが「運命の女」なんだと。実際は違いましたが、昔のヨーロッパ映画ならこんな結末もありそうですよね。
特別編DVDには、特典映像に別バージョンのエンディングがあるそうですが、今回借りたものにはソレがなく、ちょっと気になりました。いつか探してみよ。
▲(解除)
・お薦め度【★★★★=大人の、友達にも薦めて】
別バージョンのエンディングがあると言うことですから、製作者も迷ったのかも知れませんね。
オープニングで夫婦の家の廻りの風景に風があって、それが不倫相手との出逢いにまで繋がっている。巧かったですよねぇ。
>ダイアン・レイン・・・ワイフにしたいどす
不倫されても・・・ですか?
あっ、そんな意味じゃなく。
そうですね、コニーじゃなくて、ダイアン・レインを、ですね
最近のgooさん、安定してTBが入るから好きどす。
本作の感想は上のviva jiji姐と全く同じであります。
あの幕切れは最高。
つまり扱いが最高なのです。
トリックというかなあ、肩透かしというかなあ、
あの幕切れを見せたくて全編作ったのではないか、
という気がするくらい。
それと最初の風のシーンが良いですな。
ダイアン・レイン・・・ワイフにしたいどす(爆)。
DVDの最初の方にチラッと彼女のインタビューが入ってまして、あの風はもの凄くて、彼女を降板させようとの意地悪ではないかとまで思ったとか。
>嬉々として派手な下着を脱ぎ着する・・
一度ドレスを着て、その後インナー(ブラ)を抜く、みたいなシーンも海馬に残ってしまいました
西洋人って若い頃から、このしわが目立つ人多いな~
ダイアンは「パーフェクト・ストーム」では漁師の恋人役でいかにもそんな感じだったけど、この作品ではアッパークラスの奥様をいかにもそんな感じで演じていて・・やっぱりうまいんだろなと思います。
彼との情事にオツムが上の空になっている妻が夫の前で嬉々として派手な下着を脱ぎ着する・・夫の「オンヤ~~?」という視線にまったく気づかないほど、妻は舞い上がっている・・
「おいおい」なシーンであり、かつ鮮やかに印象に残るシーンでした。
子供がいなければ、それこそ異国に旅立つところなんでしょうがネ。
心理サスペンスものは、筋を追うよりは、登場人物を追うという観方がよろしいので、結末はともかく、ソレまでの各シーンがとても面白くて、ホントに<緊張&不安感の
醸成演出がすこぶる巧い>です!!
>ダイアン・レイン週間
「ブラック・サイト」ではFBIの捜査官に扮しているそうで、ピストルを持った彼女は観たいですなぁ。
それと最新作は、ギアと再共演のロマンス映画とのことで、コチラも楽しみです。
インパクト強いですから~やはりこちらへ
隠し持つHN・TBでございます。^^
題材としては単なる不倫ものでも、ライン監督は
エロティック表現だけでなく緊張&不安感の
醸成演出がすこぶる巧いっす!
深夜の交差点で止まるクルマを徐々に
俯瞰で撮った、余韻を残したあのラスト・・・
いいでしょう~