(2003/ヴォルフガング・ベッカー監督・共同脚本/ダニエル・ブリュール、カトリーン・ザース、マリア・シモン、チュルパン・ハマートヴァ、フロリアン・ルーカス/121分)
ネタバレあります
今は無き東ドイツ、夫婦と姉と弟の4人家族の話で、末っ子のアレックスが主人公。
アレックスが小学生の頃、医者の父親が西側に出張に行ったきり音信不通となり、母クリスティアーネ(ザース)は亡命を疑う警察に夫は西側に女が出来たのだと説明する。ショックからクリスティアーネは子供達とも会話をしない程の鬱病になるが、数ヶ月後には退院して戻ってくる。元気を取り戻した母は、夫のことを忘れるかのように熱心な党員となり、社会主義教育に励んだ。
それから十年後。報道の自由を求めるデモ隊に参加したアレックスが警察に捕まるのを見たクリスティアーネは、心筋梗塞を起こし病院にかつぎ込まれる。彼女は意識不明の重体となり寝たきり状態に。その間に東ドイツではベルリンの壁が壊され、東西ドイツは統一されることになる。
更に八ヶ月後。クリスティアーネは奇跡的に意識を回復し、医者が懸念した子供の名前さえも忘れるような深刻な記憶喪失には成らなかったものの、引き続き安静に生活することが求められた。医者は入院の継続を勧めたが、東ドイツが無くなった事を知った時の母親のショックを考えたアレックスは、自宅に連れ帰ることにした。病院内に居てはかえって国の情報が入りやすいというのである。
アパートの母の部屋を元の様にし、テレビが見たいという彼女のために、偽のビデオフィルムを見せて東ドイツが今も健在であるかのように装うのだが・・・。
全編アレックスのナレーションが入る形式で、子供の頃のエピソードでは父親が撮ったホームビデオを混ぜたり、全体としても当時のニュース映像による社会情勢も盛り込みながらの編集で、上手いなぁと思いながら観ていたんですが、中盤の1時間は奇跡的に意識不明から回復した母親がショックを受けないように情報の偽装に躍起となるアレックスの奮闘ぶりをユーモラスに描いたもので、ここが似たような話の連続で途中から飽きてくる。チャン・イーモウの「至福のとき」も主人公の少女に対する周囲のオジさん達の善意の偽装の苦労話がオカシク描かれた作品で、個々の人々の心情がよく描かれていて面白かったけど、「グッバイ、レーニン!」ではアレックスや姉の心情についてそれ程の濃いものが無く、母親の扱いも中途半端に感じました。
終盤、母親がベッドから出てアパートの外に出かけた所からようやく状況に進展が見られるかと思いきや、それでも母親が偽装に気付かないので正直イライラする。
本当に面白くなってくるのは家族が昔使っていた別荘に行ってからで、そこでクリスティアーネは夫の出奔についての真実を明かす。夫、つまりアレックスの父親が西側から帰ってこなかったのは、あちらに女が出来たからではなく、実は家族全員で西側に亡命する予定だったのに、クリスティアーネに勇気がなかったために東側に残っただけだった。党員でなかった父親は職場の中で冷遇されており、出て行くしかなかったのだ。
アレックスにとっては母親に騙されていたのはショックだったが、その後再び様態が悪くなった母の為に、今は自由にいけるようになった旧西ドイツの父親を訪ね、母親の事を話す。クリスティアーネが彼に会いたがったからだが、ここでは父親とアレックスの再会シーンが面白かった。
アレックスの父と母の病院での再会シーン。
直前にはアレックスの恋人が(アレックスの居ない所で)クリスティアーネにベルリンの壁が無くなったことを話しているシーンもあり、これこそはこの映画一番の山場になると思われたのに、父親が病室に入った所で(なんと!)あっさりスルー。同じドイツ映画「マーサの幸せレシピ」の終盤と同じで、観たいところが観れないと言う、痒いところに手の届かない思いになりました。
母の為に最後に作った偽ビデオが東ドイツに西ドイツの難民が流入し東がそれを愛情を持って受け止めたというモノで、一応ドイツが統一されたことになったわけですが、クリスティアーネが何処まで聞かされていたのかも分からないので、このビデオを見ている彼女の心情をどう捉えて良いのか私の気分も宙ぶらりんとなりました。
東側に西側国民が救済を求めて来るという、皮肉なのかなんなのか分かりませんが面白いビデオではありましたな。
統一ドイツ誕生の裏に起こった庶民のドタバタ話。人情劇としては中途半端な印象でした。
NHK-BSの解説によると、<本国では歴代興行収入記録を更新、ドイツ内外で数々の映画賞を受賞し、日本でもヒットした話題作。>とのことで、ベルリン国際映画祭では最優秀ヨーロッパ映画賞受賞、セザール賞でもEU(欧州連合)作品賞などさまざまな映画賞を獲った作品だそうです。
ネタバレあります
今は無き東ドイツ、夫婦と姉と弟の4人家族の話で、末っ子のアレックスが主人公。
アレックスが小学生の頃、医者の父親が西側に出張に行ったきり音信不通となり、母クリスティアーネ(ザース)は亡命を疑う警察に夫は西側に女が出来たのだと説明する。ショックからクリスティアーネは子供達とも会話をしない程の鬱病になるが、数ヶ月後には退院して戻ってくる。元気を取り戻した母は、夫のことを忘れるかのように熱心な党員となり、社会主義教育に励んだ。
それから十年後。報道の自由を求めるデモ隊に参加したアレックスが警察に捕まるのを見たクリスティアーネは、心筋梗塞を起こし病院にかつぎ込まれる。彼女は意識不明の重体となり寝たきり状態に。その間に東ドイツではベルリンの壁が壊され、東西ドイツは統一されることになる。
更に八ヶ月後。クリスティアーネは奇跡的に意識を回復し、医者が懸念した子供の名前さえも忘れるような深刻な記憶喪失には成らなかったものの、引き続き安静に生活することが求められた。医者は入院の継続を勧めたが、東ドイツが無くなった事を知った時の母親のショックを考えたアレックスは、自宅に連れ帰ることにした。病院内に居てはかえって国の情報が入りやすいというのである。
アパートの母の部屋を元の様にし、テレビが見たいという彼女のために、偽のビデオフィルムを見せて東ドイツが今も健在であるかのように装うのだが・・・。
*
全編アレックスのナレーションが入る形式で、子供の頃のエピソードでは父親が撮ったホームビデオを混ぜたり、全体としても当時のニュース映像による社会情勢も盛り込みながらの編集で、上手いなぁと思いながら観ていたんですが、中盤の1時間は奇跡的に意識不明から回復した母親がショックを受けないように情報の偽装に躍起となるアレックスの奮闘ぶりをユーモラスに描いたもので、ここが似たような話の連続で途中から飽きてくる。チャン・イーモウの「至福のとき」も主人公の少女に対する周囲のオジさん達の善意の偽装の苦労話がオカシク描かれた作品で、個々の人々の心情がよく描かれていて面白かったけど、「グッバイ、レーニン!」ではアレックスや姉の心情についてそれ程の濃いものが無く、母親の扱いも中途半端に感じました。
終盤、母親がベッドから出てアパートの外に出かけた所からようやく状況に進展が見られるかと思いきや、それでも母親が偽装に気付かないので正直イライラする。
本当に面白くなってくるのは家族が昔使っていた別荘に行ってからで、そこでクリスティアーネは夫の出奔についての真実を明かす。夫、つまりアレックスの父親が西側から帰ってこなかったのは、あちらに女が出来たからではなく、実は家族全員で西側に亡命する予定だったのに、クリスティアーネに勇気がなかったために東側に残っただけだった。党員でなかった父親は職場の中で冷遇されており、出て行くしかなかったのだ。
アレックスにとっては母親に騙されていたのはショックだったが、その後再び様態が悪くなった母の為に、今は自由にいけるようになった旧西ドイツの父親を訪ね、母親の事を話す。クリスティアーネが彼に会いたがったからだが、ここでは父親とアレックスの再会シーンが面白かった。
アレックスの父と母の病院での再会シーン。
直前にはアレックスの恋人が(アレックスの居ない所で)クリスティアーネにベルリンの壁が無くなったことを話しているシーンもあり、これこそはこの映画一番の山場になると思われたのに、父親が病室に入った所で(なんと!)あっさりスルー。同じドイツ映画「マーサの幸せレシピ」の終盤と同じで、観たいところが観れないと言う、痒いところに手の届かない思いになりました。
母の為に最後に作った偽ビデオが東ドイツに西ドイツの難民が流入し東がそれを愛情を持って受け止めたというモノで、一応ドイツが統一されたことになったわけですが、クリスティアーネが何処まで聞かされていたのかも分からないので、このビデオを見ている彼女の心情をどう捉えて良いのか私の気分も宙ぶらりんとなりました。
東側に西側国民が救済を求めて来るという、皮肉なのかなんなのか分かりませんが面白いビデオではありましたな。
統一ドイツ誕生の裏に起こった庶民のドタバタ話。人情劇としては中途半端な印象でした。
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NHK-BSの解説によると、<本国では歴代興行収入記録を更新、ドイツ内外で数々の映画賞を受賞し、日本でもヒットした話題作。>とのことで、ベルリン国際映画祭では最優秀ヨーロッパ映画賞受賞、セザール賞でもEU(欧州連合)作品賞などさまざまな映画賞を獲った作品だそうです。
・お薦め度【★★=映像も編集センスも、悪くはないけどネ】
古い記事、しかも、実際にはそれより1年くらい前に観た作品ですので、ディテールに曖昧なところが多いです。
>アレックスや姉の心情についてそれ程の濃いものが無く
この辺り、作者は人情ものを作ろうとしたのか、それをこえて体制に翻弄される人間を諧謔しようとしたのか曖昧になっていますね。
僕もやはり人間の描写が弱いと思ったので、これは一種の文明批判(批評かな)なのだろうと思ったわけです。
>「至福のとき」
は言わば昔のハリウッド映画の法則を踏襲したような作品であり、こちらは良くも悪しくも「アイデンティティー探し」という現在的な主題を扱っているのでしょう。
その観点ではこちらのほうが面白かったのですが、映画としての完成度には必ずしも満足しないというのが僕の本音ですね。
色々なモノを詰め込もうとしたのじゃないでしょうか。コマ落としの描写などは諧謔を狙ったように思えるし、アレックスのナレーションには人情モノのムードが漂う。
ドイツ本国でヒットしたのは理解できますが、日本でもヒットしたというのは?ですね。
「至福のとき」は★★★★でした。
結末がスッキリしないんですが、嫌みなく笑わせて泣かせてくれたので★半個分くらいおまけしたように覚えてます。
この作品は東京国際映画祭で観ました。監督と脚本家が来日して舞台挨拶を行い、映画の裏話的エピソードをいろいろしてくれたのを覚えてます。ただ、それほど政治的メッセージを込めたつもりはないよ、と言っていたような気がします。
公開当時はミニシアターでの上映でしたが、結構人気があったと記憶しています。
そうでしょう。
どちらかというと、アレックスの母親に対する愛情を中心に描いたものですよね。でも、中盤のアレックスの一人相撲的な部分での彼の心情描写がワンパターンで、諧謔的な描写もあり、どこか客観的になっていて、私にはそれほど入り込めませんでした。
>結構人気があったと記憶しています。
主演のダニエル・ブリュール君が、ジャニーズ系の可愛い男の子なので話題になったのかなと思いました。
恋人役の女の子もいつも半袖の制服で・・・