(1973/ドン・シーゲル製作・監督/ウォルター・マッソー、ジョー・ドン・ベイカー、アンディ・ロビンソン、ジョン・ヴァーノン、ジャクリーン・スコット、ノーマン・フェル、シェリー・ノース、フェリシア・ファー/111分)
“突破口”じゃどんな映画か分かりませんね。戦争映画(?)
原題は【CHARLEY VARRICK(チャーリー・バリック)】。もっと分からない?(笑)
ウォルター・マッソー扮する主人公の名がチャーリー・バリックで、元曲芸飛行乗りで今は農薬散布を生業(なりわい)としている彼が、愛妻と二人の男とニュー・メキシコの田舎町の銀行を襲い大金をものにする。田舎町の小さな銀行にあるまじき75万ドルを越える大金で、チャーリーは仲間の若者に『これはマフィアの金だ。あの銀行はマネーロンダリング用のドロップ(=隠し場所)に違いない。返したいがどっちみち命はない。FBI十人の方がましだった』と言う。
悪者がもっと悪い奴らに追いかけられるという話で、結末も含めて72年の「ゲッタウェイ」と同じ趣向だが、コチラには派手なドンパチは序盤の銀行強盗のシーンしかない。追う側と追われる側を平行して描きながら最後に二人が対面し、その対決がクライマックスになるという定石通りの面白い本(原作:ジョン・リーズ)でした。
超面白かった「ダーティハリー(1971)」のドン・シーゲルが、後輩のペキンパーに負けじと作ったのではないでしょうか。大昔に観たので内容は忘れてしまいましたが、殺し屋が迫るという設定は、ヘミングウェイの短編が原作の「殺人者たち(1964)」に似ているのかも知れません。
殺し屋モリーを演じたのは、巨漢のジョー・ドン・ベーカー。大きな声は出さずに腕力と簡潔な脅し文句で迫ってくる所は、「ターミネーター」のシュワちゃんも参考にしたのではないですかな。
「ダーティ・ハリー」で変質的な犯罪者を演じたアンディ・ロビンソンが、今作ではチャーリーの若い相棒ハーマン役。慎重なチャーリーを腰抜けだと馬鹿にするが、予想通りの惨めな最期でした。
チャーリーの奥さん役はジャクリーン・スコット。チャーリーと曲芸飛行で知り合った度胸ある彼女も、序盤の強盗シーンでの警官との銃撃戦で重傷を負う。彼女の亡骸に二度もキスをしながらも冷静に後処理をするチャーリーが印象的でした。
ジョン・ヴァーノンは銀行の頭取役で、「ブリット(1968)」のノーマン・フェルがここでも警官の役。
シェリー・ノースは偽パスポート作りの女性で、フェリシア・ファーは頭取の秘書シビル・フォート役でした。
面白かったシーンを幾つかご紹介。
爆破したつもりの奥さんの遺体の歯型から足がつきそうになったチャーリーが、行きつけの歯科医院に忍び込み奥さんのカルテを盗むところ。ついでにハーマンのレントゲン写真を自分のモノにすり替える。何の意味があるのかなと思ってみていましたが、ラストで合点する。チャーリーの勘というか、先見の明がものをいったという設定ですね。
ラスト・シーンで、お金を返すからと頭取を呼びだし、殺し屋が潜んでいるとにらんだチャーリーが頭取にしたこと。観てのお楽しみということで、コレは書かない方がよろしいでしょう。
幾つかパロディっぽいシーンもあって、クライマックスの農薬散布に使う複葉飛行機と殺し屋の車との一騎打ちで思い出すのはヒッチコックの「北北西に進路を取れ」。
農薬散布の飛行機が出てくるだけでソレと分かりますが、その直前でチャーリーとシビルとのベッドシーンがあり、円形ベッドで色々な向きでお楽しみだった二人の最後の台詞が『今度は“南南西”の向きで・・・』とは、紛れもなく彼(か)の名作へのオマージュに違いありませんね。
愉快なお顔のウォルター・マッソーが、珍しく冷静沈着な男を演じて、見事英国アカデミー賞の主演男優賞を獲得したとのことでした。
“突破口”じゃどんな映画か分かりませんね。戦争映画(?)
原題は【CHARLEY VARRICK(チャーリー・バリック)】。もっと分からない?(笑)
*
ウォルター・マッソー扮する主人公の名がチャーリー・バリックで、元曲芸飛行乗りで今は農薬散布を生業(なりわい)としている彼が、愛妻と二人の男とニュー・メキシコの田舎町の銀行を襲い大金をものにする。田舎町の小さな銀行にあるまじき75万ドルを越える大金で、チャーリーは仲間の若者に『これはマフィアの金だ。あの銀行はマネーロンダリング用のドロップ(=隠し場所)に違いない。返したいがどっちみち命はない。FBI十人の方がましだった』と言う。
悪者がもっと悪い奴らに追いかけられるという話で、結末も含めて72年の「ゲッタウェイ」と同じ趣向だが、コチラには派手なドンパチは序盤の銀行強盗のシーンしかない。追う側と追われる側を平行して描きながら最後に二人が対面し、その対決がクライマックスになるという定石通りの面白い本(原作:ジョン・リーズ)でした。
超面白かった「ダーティハリー(1971)」のドン・シーゲルが、後輩のペキンパーに負けじと作ったのではないでしょうか。大昔に観たので内容は忘れてしまいましたが、殺し屋が迫るという設定は、ヘミングウェイの短編が原作の「殺人者たち(1964)」に似ているのかも知れません。
殺し屋モリーを演じたのは、巨漢のジョー・ドン・ベーカー。大きな声は出さずに腕力と簡潔な脅し文句で迫ってくる所は、「ターミネーター」のシュワちゃんも参考にしたのではないですかな。
「ダーティ・ハリー」で変質的な犯罪者を演じたアンディ・ロビンソンが、今作ではチャーリーの若い相棒ハーマン役。慎重なチャーリーを腰抜けだと馬鹿にするが、予想通りの惨めな最期でした。
チャーリーの奥さん役はジャクリーン・スコット。チャーリーと曲芸飛行で知り合った度胸ある彼女も、序盤の強盗シーンでの警官との銃撃戦で重傷を負う。彼女の亡骸に二度もキスをしながらも冷静に後処理をするチャーリーが印象的でした。
ジョン・ヴァーノンは銀行の頭取役で、「ブリット(1968)」のノーマン・フェルがここでも警官の役。
シェリー・ノースは偽パスポート作りの女性で、フェリシア・ファーは頭取の秘書シビル・フォート役でした。
面白かったシーンを幾つかご紹介。
爆破したつもりの奥さんの遺体の歯型から足がつきそうになったチャーリーが、行きつけの歯科医院に忍び込み奥さんのカルテを盗むところ。ついでにハーマンのレントゲン写真を自分のモノにすり替える。何の意味があるのかなと思ってみていましたが、ラストで合点する。チャーリーの勘というか、先見の明がものをいったという設定ですね。
ラスト・シーンで、お金を返すからと頭取を呼びだし、殺し屋が潜んでいるとにらんだチャーリーが頭取にしたこと。観てのお楽しみということで、コレは書かない方がよろしいでしょう。
幾つかパロディっぽいシーンもあって、クライマックスの農薬散布に使う複葉飛行機と殺し屋の車との一騎打ちで思い出すのはヒッチコックの「北北西に進路を取れ」。
農薬散布の飛行機が出てくるだけでソレと分かりますが、その直前でチャーリーとシビルとのベッドシーンがあり、円形ベッドで色々な向きでお楽しみだった二人の最後の台詞が『今度は“南南西”の向きで・・・』とは、紛れもなく彼(か)の名作へのオマージュに違いありませんね。
愉快なお顔のウォルター・マッソーが、珍しく冷静沈着な男を演じて、見事英国アカデミー賞の主演男優賞を獲得したとのことでした。
・お薦め度【★★★★=ハードボイルド好きの、友達にも薦めて】
しかし、ウェブリとgooの相性は良いので、TBできますですよ。ライブドアじゃないんだから(笑)。
最近<たけのこ掘り>に忙しく、自分のブログを上げるのに精いっぱい。三日ばかりお伺いしなかったので、気付くのも遅れました。
>南南西
あはは。そうでしたね。
観たそばから忘れておりました。
これは言わにゃあまずかったかなあ。^^;
>ハードボイルド
でしたねえ。
ジョー・ドン・ベイカーの殺し屋が探偵をひっくり返したような設定なのも面白いですね。
>マッソー・・・冷静沈着
その中にやはりとぼけた感じがあって良いんですよ。
ジャガイモなんかと一緒に煮たのが大好きなんですよ、ってあたしゃ何言ってんだろ
>ジョー・ドン・ベイカーの殺し屋が探偵をひっくり返したような設定なのも面白いですね。
そうですねぇ。
保安官みたいなハットを被って、いつもパイプをくわえているのも保安官みたいで印象的な役どころでした。
なかなかこういう映画が話題に上がらないのが寂しいですね。
田螺と申します。
「突破口!」大好きです。
マフィアの恐ろしさに較べて、警察は意図的に間抜けに
描かれていますね。
既にもぬけの殻になったトレーラーハウスに大挙して押し掛け、へっぴり腰で突入した後、管理人の老婆に「いないわよ」と一蹴されるところが好きです。
シーゲルは、あのトレーラーハウスを実に細かく作り込んでいますね。写真で奥さんが持ってたトロフィーはしっかり飾られているし(あの二枚の写真をわざわざ撮っておく手間も惜しまないのは感心します)ソファの布の柄が、奥さんが拳銃を隠していたバッグと同じ柄なの、気付いてました?
こういうサイトがあったのは、嬉しい限りです。
いやいや、そんなところまで。相当回数観られてますね。こちとら、全然気付いていません。
奥さんが、そのバッグ越しに警官を撃つ時に、「ヤレヤレ、参ったなぁ」って感じの表情を見せるのは覚えています。
「突破口!」は高校生だった頃に水曜ロードショーでたまたま観て(「ゴッドファーザーの翌週だったのを覚えてます。予告編で「面白そうだな」と思って)いきなりやられてしまいました。以来三十数年間で、少なくとも十五回は通して観ているはずです(レーザーで買ってからは、部分見も可能になりましたが)。これは私的には「七人の侍」
や「ナウシカ」「カリオストロ」「初代ゴジラ」に匹敵する回数で、評価もそれらの超メジャー作品に肉薄します。少なくとも「ゴッドファーザー」よりは上ですね。
何がよかったのでしょう? やっぱり、彼女こそはヒロインだと思っていた奥さんを、いきなり惜しげもなく死なせてしまうところでしょうか。最初はありきたりな強盗サスペンスだと思っていたら、あの脇腹血でビッショリのシーンで、衝撃を受けて「これは、並の作品じゃないぞ」と、いっぺんに引き込まれました。「突破口!」の後で「ゲッタウェイ」とか観ると「いやいや、そんなに甘いもんやない。現実厳しいで」とか、ヌルく思えてしまいますもん。
凄く、キャラクターの人生がしっかりと作り込まれている作品ですね。端役に至るまで。
例えば一瞬しか登場しない銀行の老守衛、出納係の老嬢、車椅子の怪しい銃砲店主、それにモリーにぶっとばされる黒人とその息子……。それら一人ひとりにしっかりとした人生がありますよ。キャラが立っていて、それらが巧く組み合わさっていて、物語に奥行きと重厚な陰影を与えています。
奥さんはとっても不運ですが、その奥さんにいきなり撃たれる警官はもっと気の毒だし(真面目だし、いかにも妻子いそうですよね)さらに気の毒なヤング支店長という人もいます。この人の一生ってどういう意味があったのでしょうって、つい考えてしまいます。小心者で、いやいやマネーロンダリングに荷担させられて……。たまらんですよ、いや実際(笑)。
一見、粗末に殺される奥さんですが、シーゲルは実は彼女にすごく愛着を持っていますね。見終わって、いちばん印象に残る役じゃないですか。度胸満点で重傷なのに運転して、逃げれば逃げるほど助かるチャンスなくなるのに懸命にコンチネンタルを走らせる。一瞬だけ見える白ブーツがかっこいいし、喘ぐ姿はなんか、妙にセクシーだし……(同意見の人、けっこういるみたいです)。こういう女に惚れられるチャーリーが妙に羨ましいですね。
ジャクリーン・スコット、地味だけどいい女優ですね。他では「激突!」のやはり主人公の奥さん役と(電話口でいきなり「レイプされそうになったのよ」とマンを責めかかけて、足下で遊ぶ子供に思わず口を噤む演技とか印象的でした)テレビでは「逃亡者」で、こっちは主人公キンブルの妹役とかが有名なところでしょうが、彼女はこの「突破口!」が本国でも評価が高くて(イギリスではさらに、だそうです)、未だに映画祭のゲストではNadine名義のサインを求められるそうですよ。間違いなく代表作ですね。
もちろん、今観ると突っ込みどころ満載の映画ではあるんですが(例えば、なんで偽造パスポート、取りに行きひんのやねん、とか、そもそもそんな危ない橋渡らずに、自動車窃盗団でええのんちゃうん?とか……)そんなことは少しも気になりません。
あ~、ダラダラと長文すみません。「突破口!」のことになると、冷静ではおれんのですわ。
失礼、ご容赦あれ。
ジャクリーン・スコットは聞き覚えがありましたが、「激突!」の奥さんでしたか。最初の方に少ししかでてきませんけどね。
>主人公キンブルの妹役
旧い!旧すぎる!!
「逃亡者」も毎週観ていましたけど、子供の頃ですから名前なんか覚えるわけないですよね^^
こちらに寄せられたコメントを読んでいたら、
まるで「突破口!」ファンの集いみたいで嬉しくなっちゃいました(^-^)
皆さん、思い入れのあるところも様々で、それを知るのも楽しいです。
そうそう、読んでいて気づきましたが、主人公がトレーラーハウスに住んでいるところも「ノーカントリー」と同じなんですよね。
他にはツボはないんでしょうかね。
2回目のコメントには最初、荒らしの方かなとも思ったりしましたが、間違いでした。^^
トレーラーハウスって、西部開拓時代の幌馬車みたいなものなんでしょうかね。
先日観た「野のユリ」の神父も使ってましたし、広い国土を持つアメリカならではの文化を感じますね。
言ってるマッソーの表情がもうあの映画を
意識してる感じでしたもの~
おヨメさんに心込めて最後のキスを2回、
それから爆破まで切ないけれどいいシーンね。
印象に残る場面もたくさん。
それをいかにもサラリと作り上げてるように
観せてるドン・シーゲルはホントうまい。
じゃがいもと筍で、あっさりめですね。
こちら北海道はじゃがいもとイカのお煮つけ。
たまにはイカをホタテにかえたり。
千切り生生姜で風味づけ。
年中、定番のおかずでございます。
コメント欄への横やりでごめんなさい。
>言ってるマッソーの表情がもうあの映画を意識してる感じでしたもの~
そうでしたか^^
こういうシーンで、映画ファンは美味しさを二つぶ分得するわけですよね。
>たまにはイカをホタテにかえたり。千切り生生姜で風味づけ。
酒のつまみに最高ですな。