先週は二日間で、九百キロメートル以上の距離を走った。大忙しで移動するので、各地の景観をカメラに収めて紹介したいのだが、その余裕がない。当然、記事を書くところまでには、なかなかたどり着かない。
最近の不思議な経験をひとつ。
人通りの多い道でのこと、前方からゆっくり走ってくる車があった。近くまで来たとき、助手席から放たれる柔らかな視線に気がついた。何気なく見ると、助手席には犬が陣取っていた。その犬は、じっとこちらを見つめていた。目と目が合ったまま、距離が縮まり、そして交差した。互いにこれ以上無理というところまで左へ首を回しながら。
その目は犬の目だったのか、そんな疑念がわいたのだが、振り返ることはしなかった。もしもそこに乗っている犬の後ろ姿が人だったら、運転席にも犬が座っていたら、と考えると、確かめる勇気がなかったから。翌朝から、私の首は左へ回らなくなった。(2013.8.12)