私の誕生月の新暦二月はまだ真冬。生物はみな活動を緩めている時期。一年でいちばん目立たない静寂な月だ。ちなみに旧暦二月は三月下旬の「春分の日」前後。
ところが、ヒトの世界では、ちょっと首を振れば〇〇スポーツ大会とか〇〇祭りとか、二月の行事がうるさく目につく。バレンタインデーなる行事はなんで二月なのか。義理チョコさえもらえなくなった身にはこたえる。先ごろの日米首脳会談だって、経済界などの取り巻きのためのお祭り騒ぎみたいなもの。せっかく誕生月を忘れようとしていたのに、何だか気分がムシャクシャする。そんなことをつべこべ言わずに、年寄りは黙って姿を消すのがいいのだ。
ところで、北斎は美術館ができたからなのか、最近あちこちに出没している。
彼は、九十歳間近の亡くなる床で、娘のお栄に、あと十年、いや、あと五年の寿命があったなら真正の画工になれたのに、と言ったという。恐るべき執着心、意欲的な発言だろうか。
やはり北斎を見ならうべきか、周囲にいやがられても。(2017.2.14)