数か月前の雑誌をざっと眺めていたら、カサンドラ症候群というタイトルが目についた。暇なので、かなり長い記事だったが読んでみた。ところが、カサンドラの意味がどうもわからない。ずっと前に見たカサンドラ・クロスという映画のタイトルはすぐ思い出せた。そんな星座の名前みたいな映画に、私がほんの子どもだったころから有名なソフィア・ローレンが出ていたことまでおぼえているが、そんな記憶はこの際何の役にもたたない。
ともかく、カサンドラの意味が不明なので、近くにいた家人に聞いてみた。すると、私の顔に向けた家人の目が引きつった。彼女によると、その雑誌が発刊された直後、二人で長時間にわたってその記事の話をしたという。確かにカサンドラという言葉を耳にしたおぼえはあるが、家人の証言に思い当たる節がない。鈍感な私も、これには参ったと思った。
家人の指示でしぶしぶ辞書を引いてみた。パートナーの特異な思考・行動パターンに翻弄されて、良好な関係を築けないことから起きる神経症のことだと書いてあった。そのパートナーとはつまり私のことか、と思って顔を上げると、家人の顔が急に明るくなったような気がした。
そういえば、私には昔から何度読んでも聞いても頭に入らない言葉があった。たとえば愛とか情感とか雰囲気とか。言葉の意味が理解できないだけでなく、以前も書いたが、飽きるくらい繰り返し練習しても、身につかない動作、手仕事、手順などが多々あった。それは、子どものころから慣れ親しんだアイススケート、キャッチボールのほかボールにかかわるすべてが初心者のまま推移したこと。簡単な料理のレシピ、たとえばチャーハンや焼きそばにどんな調味料を入れるのか、毎回頭を悩ますこと。家庭菜園のどの場所にどんな作物を植えたか、前年の苦労を忘れてしまうこと。完璧に大工仕事やペンキ塗りをしたことがないこと。これらはほんの一例。年取ればさらに増えるだろうと思うとゾッとする。
日常生活では、一方の側だけにすべての問題があるわけではないと思う。互いに自分を知り、パートナーにできるだけ迷惑をかけないよう配慮することは、長く共同生活するための秘訣なのだ。私には、いつになったら身につくのだろう。
(2020.1.7)
そういえば、私には昔から何度読んでも聞いても頭に入らない言葉があった。たとえば愛とか情感とか雰囲気とか。言葉の意味が理解できないだけでなく、以前も書いたが、飽きるくらい繰り返し練習しても、身につかない動作、手仕事、手順などが多々あった。それは、子どものころから慣れ親しんだアイススケート、キャッチボールのほかボールにかかわるすべてが初心者のまま推移したこと。簡単な料理のレシピ、たとえばチャーハンや焼きそばにどんな調味料を入れるのか、毎回頭を悩ますこと。家庭菜園のどの場所にどんな作物を植えたか、前年の苦労を忘れてしまうこと。完璧に大工仕事やペンキ塗りをしたことがないこと。これらはほんの一例。年取ればさらに増えるだろうと思うとゾッとする。
日常生活では、一方の側だけにすべての問題があるわけではないと思う。互いに自分を知り、パートナーにできるだけ迷惑をかけないよう配慮することは、長く共同生活するための秘訣なのだ。私には、いつになったら身につくのだろう。
(2020.1.7)