黒猫 とのべい の冒険

身近な出来事や感じたことを登載してみました。

風土記の動物祭祀

2022年10月29日 23時08分12秒 | ファンタジー
 出雲国風土記には、
 ①因幡の白兎(イナバノシロウサギ)
 ②八岐の大蛇(ヤマタノオロチ)
 ③娘を食うワニ
などの動物に絡んだ神話が記されている。いずれも出雲地域から国中に広まったメジャーな神話だ。
 ①は、ワニに襲われて苦しむウサギを大国主が助ける話。
 ②は、出雲勢力が越の国の大蛇に対し戦を挑む話。一説にはオロチとは大蛇や妖怪でなく、製鉄のための溶鉱炉が放つ火焔だとする説がある。
 ③は、娘をワニに食い殺された父親が、多くのワニの中から下手人ワニを探し出して討ち取る話。
 ①と③は、海や川などにいる主のような魚に生け贄を捧げる古代の風習がうかがえる話だ。
中でも③では、娘を殺された父親はワニをバラバラに解体して野ざらしにする。この行為だけを切り取るなら、動物解体を伴う古代祭祀を思い起こす。
 思うに、この国の神話には、万物の対等性を尊重する話と、恐ろしい力を持つ存在に対し生け贄を捧げる話とが混在している。それはこの列島には、大陸や海洋を伝ってあちこちからさまざまな人々が入りこんでいるからかもしれない。
 南の方面の人々は、北方民特有の創世神話を持たないという。なので、今あるものすべてははるかに前からあるがままに存在していた。これは、万物に生命の存在を感じるアイヌの精神性に通じるのでは。昨年の科目履修生の修了レポートにも書いたが、北方狩猟民のサハが最高神(主霊)をいただいて、ヒグマさえ生け贄にするのとは大違いだ。
 独りよがりだと非難されるのを承知の上で言うのだが、出雲の神話の基盤には南方起源とされる縄文人の祭祀があり、それが北方からやってきた弥生系と狩猟民系の祭祀に乗っ取られたと感じるのは飛躍しすぎかな?(2022.10.29)


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