私が、パソコンを導入してインターネットに接続できるようになったのが
ちょうど10年前の2003年。
それ以前はネット無しで近代建築撮影の下調べをしていた。
当然、調べ物は紙資料に限られる。
最初に購入した書籍が、鹿島出版会「近代建築ガイドブック」。
1982~1985年にかけて日本全国を5ブロックに分けて刊行された。
私が購入した1994年頃には「関西編」「関東編」以外は絶版状態で入手不可能。
その穴を補完する為に、地方出版社の近代建築本を集め、
更に「新版 日本近代建築総覧」を手にすることになる。
この“総覧”は登録文化財制度が導入された時には基本資料になったと聞く。
しかしながら、下調べには向いていない。
なんせ1970年代に収集したデータである為
半数近くの建築が喪失していたのである。
東京・大阪の街歩きでは、戦災焼失マップも重宝した。
このような紙資料で下調べをしていた頃は漏れが多かったので、
地図を持って雰囲気のある通りと筋をできる限り見て歩くようにしていた。
町外れまで歩いて、旧市街はここまでだと思っても、
次の四辻まで足を運び、交差する全ての道を観察した。
そうすると、何か見つかることも多かった。
手間はかかるが、発見の喜びを感じることも多かった。
それに比べて、インターネットを使った下調べは、簡単である。
訪問する土地の名前で「姫路 近代建築」などと検索すると
いくつかのサイトが見つかる。
見つかったサイトで物件名を片っ端から確認し、
所在地が不明であれば、更に物件名で検索する。
このような、検索の繰り返しで
物件の所在地と外観を確認していく。
そして「Google マップ」の出番。
所在地と外観が分れば、
航空写真やストリートビューを活用して
建築の向きを特定できる。
撮影アングルと太陽の位置を考慮して
訪問撮影時間を決める。
このような過程を経て青空写真を撮影する。
更に、所在地が不明でも、大建築なら航空写真から位置特定できる物件もある。
ネットを使えば、物件情報を知るだけでなく
訪問撮影計画(タイムテーブル)まで作成できる。
しかし、発見の喜びが少ない。
便利になったが、楽しみが減ったように思う。
仕事でないなら、ここまでやらなくても良い気もするが、
どうなのだろうか?
表題写真は桐生倶楽部会館(清水巌/T8/木2/登録文化財)です。
Google マップ で西向きと確認して午後に訪問、撮影した。
正面に車が停まっていたが、青空写真が撮影できた。
探索エリアを決めたら、あらゆる資料を駆使して対象物件を積み上げていく という手法が基本だ。
旧版地形図で戦前期に栄えた地域を特定して探索 という方法も捨てがたいものがある。
しかし、下調べにはどうしても限界があるし、結局、予想もしていない場所で思いがけずお宝を発見!が一番ワクドキする瞬間かもしれない。
このヨロコビを求めて旅をしてきたのかも。
初めて行く場所で誰も紹介していない近代建築を発見するのが至上の喜び!