NOTEBOOK

なにも ほしがならなぁい なにも きたいしなぁい

春のハードボイルド祭り、渡辺あやの新作、そして大根仁監督の新作

2014-04-13 | 授業
土曜ドラマ『ロング・グッドバイ』(NHKオンライン)
ロンググッドバイ

2014年4月19日土曜日 21時~
『カーネーション』で心を鷲掴みにされたまま2年間放置され、待ちに待った新作がまさかのレイモンド・チャンドラー原作の『ロング・グッドバイ』。音楽に大友良英。そして演出は堀切園健太郎。しかも主演は浅野忠信。これは期待するなという方が無理な話。前情報は一切入れずに、今週の『あさいち』金曜プレミアトークと『土曜スタジオパーク』の予約録画して、座して待つ!


ロンググッドバイ
ドラマ24『リバースエッジ 大川端探偵社』(テレビ東京)

2014年4月18日金曜日 深夜0時12分~
そして、そして『モテキ』以降絶対に見逃せない大根仁監督の最新作は、脚本が大根仁。監督が大根仁。オープニング&エンディング曲がEGO-WRAPPIN'。原作はひじかた憂峰こと狩撫麻礼。しかも主演はオダギリジョー。これも期待するなという方が無理でございます。座して観るべし。

今シーズンも安易な刑事ドラマが氾濫する中で、サスペンスに走らずハードボイルド探偵ものに切り込むこの2作は必見。でも大根監督の刑事ドラマは観たい。

パスポートを更新しに行かなきゃと思える映画、LIFE!

2014-03-24 | 授業
リトルランボーズ
日本のポスターには「生きている間に、生まれ変わろう」とある。


アメリカの『LIFE』誌の写真管理部門という地味な部署に勤めるウォルター・ミティは私生活も仕事も冴えない。

父親が17歳の時に亡くなった為、家族の大黒柱として家計を支えてきた。42歳を迎えた現在も結婚はせず、母親ばかりか妹の金銭的な面倒もみている。気になる同僚の女性はいるが声をかけることも出来ず、その彼女がお見合いサイトに登録したと聞き、自らもそのお見合いサイトに登録したが彼女にアプローチ出来ない。それどころかお見合いサイトのプロフィール欄のこれまでの体験談の項目を埋めることが出来ずに、サイトの機能が使用できない不具合まで起きている。しかもしばしば妄想にトリップする。

私生活も仕事も冴えない、そんなある日事件が起きる。『ライフ』誌が買収され、紙媒体での刊行の終了が決定。世界を駆け回る著名写真家、ショーンが紙媒体の最終号の表紙を飾る写真のネガを送ってきてくれたが、ウォルターはそのネガの1個を紛失(?)してしまった。会社中探してもネガは見つからない。写真家のショーンは世界中を駆け回っているため定住しておらず、携帯電話も持っていないため居場所が分からない。考えあぐねたウォルターは、『LIFE』誌のスローガンに感化され、ネガを貰うべくショーンを探しに外の世界へと旅立つ。必要に迫られて外の世界に旅立つことになったウォルターだが、この一歩によりウォルターは変わっていく。


To see the world.
Things dangerous to come to.
To see behind walls.
To draw closer.
To find each other.
And to feel.
That is the purpose of life.



悪く言えば、昔ながらの典型的な映画といえる。問題を抱える人物(そしてその問題は大抵恋愛問題だ)があるきっかけ、イニシエーションにより自分を変える。自分を変えたことにより問題が解決していく。そしてハッピーエンド。視野の狭い人に、臆病な人に、自分以外に興味のない人に、人間関係が希薄な人に、それは間違っている!と言葉で言うのは容易いが、果たしてそれを心からその言葉の意味を理解できるだろうか、というか、それはぼくなのだけれど、理解することは出来ない。でもそれを映像で、物語で見せてくれたら、それは多少は違うかもしれない。

映像に関しては、ウェス・アンダーソン監督からの影響を隠さない主演も務めるベン・スティラーは『LIFE!』をミニマルで可愛い映画に仕上げた。多用される真上からの俯瞰ショット。ウォルターが小さな存在であることを示すためか、ロングのショットが多用される。(そしてウォルターを画面のサイドに寄せるのだ。)フラッシュバックなどもなく、時間軸どおりにストレートに映画が展開されていく。実に全うな映画だともう。ど直球に全うな映画だ。



出色はやはりウォルターが旅立ちの一歩を踏み出すときに流れる、デヴィッド・ボウイの『Space Oddity』の使い方だろう。すげーよ、スティラー監督。つか、『トロピックサンダー』とかを撮ってる監督さんですよね?マジか!というほどに、可愛くて素敵な映画になっている。そして何より昔ながらの映画的な教訓が無理なくしっかり入っている。ラストは予想の範囲内だけれど、ベタでもとっても素晴らしく、美しいラストだと思う。


今月中にパスポートを更新しにいこう。世界を見よう。危険でも立ち向かおう。壁の裏側をのぞいてみよう。もっと近づこう。互いを知ろう。そして感じよう。それが人生の目的だから。


諦めることについて考える。『アナと雪の女王』

2014-03-21 | 授業
リトルランボーズ

アレンデール王国の二人のプリンセス、姉のエルサと妹のアナ。とても仲の良い姉妹だったが、生まれもった氷の魔法の力でエルサがアナを傷付けてしまう。そのことがきっかけとなりエルサは自らの魔法の力で周囲を傷付けまいと、城の一室に閉じこもり文字通り心を閉ざしてしまう。そんなエルサが大人になり、女王となる日に再び自らの魔法の力でアナや周囲の人々を傷付けてしまい、一人北の山に逃げ込んでしまった

魔法の力は『シザーハンズ』のはさみの手よろしく、もちろんある種のメタファーであり、人間が誰しも持っている周囲を傷付けてしまう性質や行動の象徴である。それを本作では氷の魔法という形で描いている。本作でぼくがもっとも心を惹かれたのはやはりこの表現であり、アナや周りの人々を傷付けてしまったエルサが北の山に逃げ込んだ後の描写である。


『Let it Go』performed by Idiana Menzel

CMやテレビで本作が紹介される時に一番に紹介される本作のメインナンバー、『Let it go』がかかる。ゴージャスなメロディーとパワフルなヴォーカル。一見するとなんとも前向きな歌のように聞こえるが、よくよく歌詞を聴くと、必ずしも前向きなことばかり歌っているわけではない。そもそもこの歌詞は周囲を傷付け、「化け物!」とのそしりを受け、自分の国を追われ、逃げてきた女王エルサの心情を歌ったナンバーであるからだ。


The snow glows white on the mountain tonight
Not a footprint to be seen.
A kingdom of isolation,
and it looks like I'm the Queen
The wind is howling like this swirling storm inside
Couldn't keep it in;
Heaven knows I've tried


今夜、雪が山を白く染め上げる。
雪の上の足跡さえも見えない。
孤独の王国、私はその国の女王のようだ。
風は心の中で巻き起こる嵐のように吹いている。
もうそれを押さえつけることは出来ない。
天のみがそのことを知っている。


Don't let them in,
Don't let them see
Be the good girl you always have to be
Conceal, don't feel,
don't let them know
Well now they know


誰も受け入れない。
誰にも見せない。
良い子であるために、いつも隠しておかなければならない。
悟られたり、知られてはならなかった。
でもそれは知られてしまったんだ。


Let it go, let it go
Can't hold it back anymore


もういいだろう、もういいだろう。
これ以上過去にこだわるのはやめよう。


Let it go, let it go
Turn away and slam the door
I don't care
what they're going to say
Let the storm rage on.
The cold never bothered me anyway


もういいだろう、もういいだろう。
みんな追い払って、ドアを閉ざそう。
周りの言うことなど気にしない。
嵐よ、吹け。
氷の魔法の力はもはや取るに足らないものだ。


It's funny how some distance
Makes everything seem small
And the fears that once controlled me
Can't get to me at all


距離をとることですべてのものが些細なことに見えるなんて面白い。
かつては恐れが私を支配していたが、
もはや恐れは私を支配できない。


It's time to see what I can do
To test the limits and break through
No right, no wrong, no rules for me,
I'm free!


自分が出来ることの限界を試し、それを打ち破る時だ。
正しいことも、正しくないことも、ルールも私には無いのだ。
私は自由だ!


Let it go, let it go
I am one with the wind and sky
Let it go, let it go
You'll never see me cry
Here I stand
And here I'll stay
Let the storm rage on


もういいだろう、もういいだろう。
私は一人風と空とともにある。
もういいだろう、もういいだろう。
私が泣くことなどもう無いだろう。
私はここに立っている。
そしてここにとどまるのだ。
嵐よ吹け。


My power flurries through the air into the ground
My soul is spiraling in frozen fractals all around
And one thought crystallizes like an icy blast
I'm never going back, the past is in the past


私の力は空気を通じて大地を震わせる。
私の魂は辺り一面の氷の結晶の中にもぐりこむ。
私の思いは吹雪のように結晶化される。
決して私は振り返らない。過去は過去なのだ。


Let it go, let it go
And I'll rise like the break of dawn
Let it go, let it go
That perfect girl is gone
Here I stand
In the light of day
Let the storm rage on


もういいだろう、もういいだろう。
夜明けのように私は立ち上がるだろう。
もういいだろう、もういいだろう。
完璧な少女はもういない。
日の光の中で私はここに立っている。
嵐よ、吹け。


The cold never bothered me anyway!

氷の魔法の力はもはや取るに足らないものだ。
英詩は下記より参照。
http://www.metrolyrics.com/let-it-go-lyrics-idina-menzel.html


端的に言えば、周りなど気にしない。周りの言うことなど気にしない。周りと距離を置こう。そうすれば自由になれるのだと歌い上げる。それはある種の逃げであり、一面的には実に後ろ向きだ。後ろ向きだが、自分の能力に素直になったエルサはそれまでの貞淑な女王から、肉感的でセクシーな女性へと変貌を遂げる。それは諦念だ。周りに受け入れられようとしたり、合わせたりするのを諦めた、エルサの諦念。

映画を観るような気分でなく、ひどく落ち込んだままこの映画を観だしたが、このシークエンス、このナンバーになってから、一気に心が楽になった。諦めることは、こだわりを捨てることと同義だ。それは今まで囚われてきたものとの決別だ。もはやそれは過去であり、現在とは関係が無くなる。現在と関係の無いものをどうして気にするというのだろう。エルサではないけれど、少しは心が救われた。軽くなった。そんなことを考えた。

『Let it go』が後半序盤と対になって再び歌われるものだと思っていたので、勝手に肩透かしの気分だったけれど。

きっとうまくいく

2013-12-08 | 授業
上映時間の長さで敬遠していたのを後悔!映画館で観たかった!笑えて、泣けて、どきどきする。すごく良かった。


リトルランボーズ

"心はとても臆病なものだ。麻痺させる必要がある。困難が発生したときにはこう唱えるんだ。「うまーくいーく」無視する勇気がでる。"-『きっとうまくいく』より


正直、『きっとうまくいく』だなんてうそ臭い邦題、明るすぎるインド映画ののりに付いていけそうに無かった。けれども、コメディベースのその裏側にちゃんと言いたいことがある。この映画が言わんとしていることは、すごく単純な、でも真実。同じことを色んな映画や歌が語って聞かせるけれども、この映画の主人公、ランチョーが言うと真に迫る。映画の中の登場人物がちゃんと生きてるから。

凄くストレートに、分かり易く伝えてくれる。でも安易ではない。だからこそ消化できる。自分で消化するからこそメッセージが入ってくる。


探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点

2013-05-12 | 授業
今の時代にこれ以上無いくらいのまがうことなき東映アクション映画なのに、これじゃない感がぬぐえないのは何故なのだろう。


『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』
リトルランボーズ


格闘シーンは最近主流のカット割でごまかしたり、スタイリッシュの名の下に切り替わりまくるのではなく、泥臭く結構長めのカットで構成されていて見ごたえ抜群。カーチェイスもいまどき日本映画で観られないくらい泥臭く王道のカーアクション。音楽も衣装も俳優さんたちもスキのない完成度はすんばらしく、画面から漂ってくる東映臭は流石の一言。

前作の登場人物がチョコチョコと登場し、楽しませてくれるし、結末に対してもささやかではあるものの前半で伏線(DV云々やレノン云々)を敷いており良心的。また話の大筋で、女のリベンジという前作の構造をなぞっているという遊び心も。しかもそれをちゃんと反対のラストにしてる。尾野真千子さんに関西弁を喋らせてるのも正解。やっぱり尾野さんは関西弁でこそ本領を発揮するし、しかもちゃんと意味のある関西弁になっている。でも、でも何だろうか、このすっきりしなさは。前作でも感じていたすっきりしない感じは今作でもしっかりと残っている。


日本のドラマでは長いこと自民党政権が続いてきたため、物語上悪の政党、イデオロギーは自民党であり、保守勢力であったのだけれど。体制に楯突くのがドラマの主人公であるとするなら、その楯突く対象は時の権力の隆盛によって変わるべきだとぼくは思うのだけれど、自民党が政権を失い、民主党政権になってからもドラマは自民党、保守勢力を敵として描いてきてる。でも今作では脱原発を志す左派勢力の政治家が悪として描かれているのは挑戦的で面白かった。後援会長を演じる筒井真理子さんの髪型も『逆転裁判』の登場人物並みのインパクト。

でもその政治を描く部分が、正直物語に関係ないから、まったく持って物語上のただの装飾に過ぎなくて、大変上面に描かれる。それだけなら物語上の必要として許せなくもないけれど、探偵を襲う集団の正体が実はその左派政治家の脱原発を応援する人々の自発的な暴力だったと探偵に変える地にされ、泣きそうな表情で吐露したりする。この人たちは探偵を何度も襲い、ボコボコにする。その時の少なくともリーダー(矢島健一さん)は笑いながら探偵を追い詰めていた。これ無意識にやっているならアホだし、意識的やっているとしたらかなり最低だと思う。

そして本シリーズで一番の問題点というか、ぼくがずっと気になっているのがカタルシスの薄さ。ハードボイルドだから物語的にビターで不完全燃焼なのは仕方がない。でも見せ場のアクションシーンで散々ボコボコにやられてきた探偵と高田が逆襲しても、敵は対して報いを受けるわけでもなく次のシーンに移ってしまう。それが積もり積もったままビターなエンディングに突入して終わってしまう。一応最後はコメディシークエンスだけれども。やっぱりシナリオか、アクションシーンどちらかで大きなカタルシスが無いと辛い。しかもサスペンスの構造が『相棒』で頻出するパターンの落ちだし、既視感がひどい。脚本は別の人のほうが良いのでは?大根監督が書いたら、もっと面白いんじゃないのかとか思ってしまうです。


とか言いつつ、今の日本でここまで雰囲気のあるハードボイルドな日本のアクション映画って無い!大泉洋主演だから避けている人も居るけれど、ちゃんと体作っていて、アクションもしていて思った以上にアクションとバイオレンスが激しく1作目では大変驚いたし。松田龍平は『まほろ』の行天と同じ感じ。安藤玉恵さんも麻美ゆまさんが素晴らしすぎた。特に麻美さんはやっぱりAV監督よりも映画・ドラマの監督のほうがエロくとれるなぁ。このシリーズ大変すばらしく、続編ももちろん観たいけれど、欲を言うなら映画も良いけれどテレビシリーズ化して欲しい。テレビで毎週東映アクションドラマが観られていた昔が懐かしいです。