『スカイフォール』の吹き替え版を観ようと思っていたのに、『アルゴ』が最終日だったので『アルゴ』を観ちゃった。そして観終わったら、『ザ・タウン』はそんなに好きじゃないのに勢い余ってブルーレイを注文しちゃった。そんな金曜日深夜。
長年の王政の後に、イランで民主的な政権が誕生した。ところが、その民主政権はそれまで英米が独占してきたイランの石油権益から締め出した。怒った英米はCIAなどを用いて軍事クーデターを起こし、民主政権を転覆させる。その後に傀儡の王政を敷いて石油利権を再び英米に戻させた。それに留まらず、新しい王は贅沢と独裁の限りを尽くし民衆に圧制を強いた。だがあまりの圧制に絶えかねた民衆が王政をひっくり返し、王は民衆からの報復を恐れ癌の治療の為として、アメリカに亡命。石油利権の独占、政治介入、そして憎い王を匿うアメリカに対して民衆が怒り狂った末にアメリカ在イラン大使館を襲撃。大使館職員や一般人を人質に立てこもるが、その中の6人は襲撃の最中に脱出。カナダ大使の私邸にかくまわれることになった。かれらをアメリカに連れ帰るためにCIAのトム・メンデスが奇想天外な救出作戦に挑む。
やっぱり本作の肝は人質救出のために偽の映画をでっち上げるという点。救出作戦の指揮を取る国務省の面々が「自転車で国境を渡らせる」とか真顔で言っている中で、アドバイザーとして参加したメンデスはどれも無理だと却下。そんな中、別れて暮らしている息子がSFに嵌っており、息子に言われて回したチャンネルで放送されていた『最後の猿の惑星』を目にして、そのロケーションにぴんとひらめく。当時のSF映画の多くが広大な荒野での撮影を行っており、『スターウォーズ』はアフリカのチュニジアで、『猿の惑星』はアフリカのジプチで撮影されている。そこにヒントを得て、イランでの偽映画の撮影スタッフに偽装する救出作戦を立案する。
自国民をイランから脱出させるために偽映画のスタッフに偽装する。そんなもの国務省も当事者の6人も乗り気じゃない。隠れ家から一歩も外に出られないので、彼らのストレスも限界に達し、大使の家に勤めるイラン人メイドは彼らのことを疑い始めている。そんな中でメンデスは彼らの信頼を勝ち得、イランからの脱出を図る。
すごい面白い。パンチの効いた作戦。イランとアメリカ国内での作戦の舞台裏。個性豊かでありつつも、現実味のある登場人物たち。丁寧な描写と丁寧な複線。最後の最後まで息をつかせぬ展開。最後には本物の人質や大物ゲストまで。至れり尽くせりのスーパーエンターテイメント映画だと思う。けれども、どこか物足りない。
過去作の『ゴーン・ベイビー・ゴーン』も『ザ・タウン』でも感じたものをまた再び感じる。何というのか、瑕疵がなさ過ぎるというか、隙がなさ過ぎるというか、優等生過ぎるというか、遊びが足りないというか。アメリカ本国では「第2のクリント・イーストウッド」と称されているそうだけれど、明らかに後期イーストウッドだと思う。クオリティは確かに高いんだけれど、何処となく愛しづらい。整った美人よりも少し愛嬌がある女性のほうが魅力的だったりするのと同じように。