自称米子のプロモデラー

模型、フィギュア、ジオラマを製作するブログ

幕末のリボルバー ル・フォーショーを作る Part07

2024-04-10 08:57:15 | Gun

いよいよ銃本体の彫刻です。

本物の銃の彫刻があまりに錆びていて分からないので、これはその道のプロに任せるしか無いということで、ネットで彫刻師を探した所、すごい人を見つけました。

その方は「井浦勝雄さん」です。

この方は、本来金属に彫刻される方で、プラスチック製のモデルガンやエアーガンに彫刻されるような方では無かったと思います。

一度自分で彫刻して見れば分かりますが、金属のようなしっかりとした素材に模様を彫るのは、素材がしっかりとしているので彫りやすい所が有るのですが、プラスチックのような粘りの有る柔らかい素材は、非常に彫りにくい!

つい、力が入りすぎて刃物が行きすぎたりして大失敗と言うこともしばしば有ります。

私は金属の彫刻はしませんが、木材に文字を彫ったり、以前に牡丹の彫刻を木製看板に彫ったことが有ります。

くるみ、桜、楠のような硬めの木は非常に綺麗に彫れますが、湿った杉の木などは物凄く彫りにくい!

硬い所(節のある部分)と、柔らかい部分の差が激しく、硬いと思って刃物に力を入れると急に柔らかくなったりして刃物が滑ってしまったりします。

なので、金属に彫る人が、こんな柔らかい変な素材に彫ってくれるのか?

そこが心配でした。

一か八か、井浦さんのホームページのメールページでメッセージを送りました。

その内容は、「幕末の拳銃を作ったのですが、全体の彫刻が複雑すぎて、しかも、錆だらけで細かい彫刻がわからない状態ですが、これを復元するように彫る事が出来ますでしょうか」と言うような内容だったと思います。

お寺に所蔵されている歴史的遺産と言うことも書きました。

こちらの電話番号も書き込み、後は連絡を待つのみでした。

すると、翌日、井浦さんから電話が有り、色々経緯を話し、お寺で展示するもので歴史的資料です。と言うことを強調してお話しした所、快く引き受けて頂きました。

井浦さんは非常に丁寧で気さくな感じの方だと電話だけでも分かりました。

その後、パソコンのメールで今現在の銃のレプリカと、実銃の写真を送り、見て頂きましたが、すぐにル・フォーショーだと理解して頂きました。

錆だらけの写真で模様が分かるかどうかとお聞きした所、「大丈夫」と言うお返事を頂き、もう嬉しくて舞い上がるようでした。

早速、実銃の細部の写真を数十枚プリントアウトして、複製した銃と一緒に井浦さんに送り出しました。

その後数日経って、「出来上がりました。」と連絡が有り、現物が届きました。

そのブツがこれです。

見れば見るほどすごい彫刻です。

何時間でも見ていられるくらい見事です。

こんな柔らかい樹脂にこんな彫刻が良くできるものだと不思議な位に感じます。

井浦さんいわく「赤子を扱うように彫りました」とのことです。

錆だらけで良くわからない部分ばかりでしたが、葉っぱの筋が入っている所とか、シリンダーに、ブドウの実の様な模様がある所も見事に再現されていました。

ヨーロッパでは、ブドウというのは子沢山という意味もあって縁起のいい物とされている様です。

なのでこの銃に彫られているのでしょう。

本当に見事な彫刻で、井浦さんには感謝の言葉しか有りません。ありがとうございました。

この原型は私にとって一生の宝物になります。

でもこれで終わりではありません。

この彫刻原型から型取り複製し、錆だらけの塗装をしなければなりません。

こんな感じに。

上の写真は実銃では有りません。今回作ったレプリカです。

これを発注して頂いた「泉龍寺」では、因幡二十士の記念モニュメントや、小さいながらも博物館を作って「河田佐久間」の遺品やレプリカの銃を展示しています。

上の写真は、一番上の銃が原型、真ん中がその複製品、下の銃が井浦さんに彫って頂いた銃です。

モニュメントに取り付ける銃は彫刻のないものをブロンズで鋳造し、展示する物は彫刻して頂いた銃を更に複製して錆塗装した物です。

その錆塗装ですが、これは結構楽しみました。

その塗装方法は次回に。

続く!

 

 

 


幕末のリボルバー ル・フォーショーを作る Part06

2024-04-09 08:58:00 | Gun

連日アップしている幕末の拳銃「ル・フォーショー」ですが、銃本体の造形はほぼ完成しました。

この原型をシリコンで型取りし、無発泡ウレタン樹脂で複製します。

完成した原型を試しに黒で塗装すると、

塗装すると、仕上がりの悪い部分が目につきますので、さらに仕上げます。

上の写真の様にパーツがバラバラになります。

これは、型取りする際、一体化していると型取れない部分が出るためと、形状をリアルに仕上げるために出来るだけパーツを細かく分割しました。

シリコンで型を取るには2面取り出来るようにパーツを配列します。

先ず、「ほいくねんど」でパーツを半分埋め込みます。

これに離型剤を塗って乾燥後シリコンを流し込みます。

シリコンに気泡が入らないように真空の窯を持っている所に頼んでシリコンを流してもらいました。

これがシリコン型と複製した銃です。

流し込んだ樹脂は「キャスト」と呼ばれる無発泡ウレタン樹脂です。

これも、真空で流し込むので気泡の無い綺麗な複製品が出来上がります。

これが複製した全パーツです。

これが原型(黒い方)と、複製品(白い方)です。

この複製用の樹脂は流し込んで固まると、若干収縮して小さくなります。

複製品を綺麗にバリ取りして組み立てると、

このように原型と同じものが出来上がりますが、若干小さくなります。

多少の寸法の収縮は許してもらうとして、問題は全体の彫刻です。

実銃と比較した写真をよく見ると、

各所に金色の部分が見て取れます。

この写真は銃身のライフリングも見えます。

レプリカの原型は塞いでます。

この実銃は本来、全体が黄金の拳銃だったようです。

幕末のの頃はまだ電気メッキは無かったと思いますので、多分金箔貼りだったのでは無いでしょうか?

部分的に金色がハッキリと残っています。

それに、全体に唐草模様?の彫刻が入っています。

これを再現するに色々悩んだあげく、ネットで見つけたすごい人にダメ元で連絡して見ました。

その方とは、「井浦勝雄さん」です。

と言っても誰?と言われると思いますが、銃などの彫刻では日本一の方では無いでしょうか?

日本にこのような彫刻のできる方が居られること自体知りませんでした。

こちらが井浦勝雄さんのサイトです。

 

井浦勝雄・彫刻の世界

この方の彫刻は凄いです。

金属の表面に彫刻するのはもちろん、モデルガンやエアーガンのようなプラスチックの表面に見事な彫刻が施されています。

見れば見るほどすごいです。

これほどすごい彫刻師の方が、私が作ったようなショボいガレージキット的な銃に彫刻をしてもらえないのでは無いか?と思いましたが、ダメ元メールしてみようと思いました。

ドキドキしながら、ホームページにあるメールにメッセージを送りました。

その時の話は次回に!
続く!

 

 


幕末のリボルバー ル・フォーショーを作る Part05

2024-04-08 09:20:28 | Gun

幕末の拳銃、ル・フォーショーですが、本体の形状は大体仕上がりました。

これから、細部の造形に入ります。

先ず、ネジのモールドをつける為、モデルガンやエアーガンに使われているマイナスネジを集めました。

モデルガン用のジャンクパーツの中から探してこれだけ集めました。

今現在この様なマイナスの頭のネジは、ホームセンターでも売っていません。

一番簡単に手に入れる方法はモデルガン用のネジをメーカーに頼んで買わせてもらう事です。

頭の大きさが色々あるので、手持ちのモデルガンをバラしてみて、どこのネジが一番合うか調べてメーカーに通販で買わせてもらいます。

これでも足りない時は作るしか有りません。

ネジは、ただ穴を開けて差し込むだけでも良いのですが、タップを切ってねじ込める様にしました。

最終的にシリコンで型取り複製するのでネジ部分はただの穴になります。

このネジは、銃身とフレームを繋ぐネジです。

フレームにはタップを切ってねじ込んでいます。

次に弾を装填する部分を作りました。

丸い部分に半月型の部分が有りますが、ここを上に上げる事でシリンダーの後部の装填口を開きます。

別パーツにしていますが、接着して固定する予定です。

この弾を装填する部分ですが、不用意に開かない様に板ばねの留め具が付いています。

本物はこの金具を摘んで蓋を上に開きます。

コルトシングルアクションアーミーと逆方向に開きます。

それと、「泉龍寺」で保存されている実銃は、フレームの野球のバットの様なパーツが無くなっていたので作りました。

このパーツはネジやピンが飛び出して来ないように押さえるパーツだと思います。

こちらの面にはネジの頭が出ているので、それを再現します。

ドリルで穴を掘ってネジを埋め込みます。

ピンのモールドはプラ板を切って貼り付けてあります。

ランヤードリングもアルミ線で作りましたが細すぎるので交換します。

激鉄の指をかける部分に滑り止めのチェッカーの彫刻をすじ引きヤスリで入れます。

引き金は滑り止めのないスムーズな物でした。

大体形が出来上がったので、サーフェーサーを吹き付け、全体の質感を統一させます。

ランヤードリングも太いものに交換しました。

フレームの下部にもネジが有ります。

銃身の付け根部分にあるネジは空薬莢を押し出す棒を抜けない様に押さえるバネを止めているものです。

撃鉄の指かけ部分に滑り止めのチェッカーが入っています。

雷管ピンを叩く部分には溝が有ります。

銃身はシリンダーのセンターピンとフレーム下のマイナスネジで繋がっています。

手に持つと、意外なほどスリムです。

実銃は900g位の重さなのですが、銃身が長いのでずっしりと重さを感じます。

古式銃と言え、管理者のいないところでは触れないので、管理者「泉龍寺」の住職さんがみている所で採寸や写真の撮影、実銃を手にとらせて頂きました。

製作したレプリカ原型がどの位正確か?、実銃と並べて見ました。

実銃と並べてみるとフロントサイトが若干大きいとか、エジェクターロッドの先端の形状が若干大きめと言うのが分かりました。

この後修正しました。

銃本体は形に成りましたが、この銃は金色で全体に唐草模様の彫刻が入っています。

ただ、上の写真の通り、錆だらけで彫刻がよく分かりません。

最初、想像で模様のデータを作り、レーザーで掘れば?と考えましたが、レーザーの掘り方と実際の銃の彫刻とはかなり違うと言うことに気がつきました。

さ〜困った!

どうするか?

錆だらけの彫刻をなんとか解析して、忠実に掘らなければならない。

どうしよう?

それを解決する方法を思いつきました。

それは次回に。

続く!

 

 

 


幕末のリボルバー ル・フォーショーを作るPart04

2024-04-07 08:24:26 | Gun

連日アップしている「ル・フォーショーリボルバー」ですが、細かい部分を除き、形になって来ました。

まだネジのモールドやピンの跡、リアサイト、ランヤードリングなどが無いので順を追って製作します。

先ず、シリンダーを正確な位置にストップさせる突起を作ります。

最近のリボルバーはシリンダーに彫り込まれた凹みにシリンダーストップと言うパーツがはまり込んでシリンダーの回転を正確な位置に止めますが、この当時の銃は簡単な突起にシリンダーストップが接触して止める方式だった様です。

なので引き金を引いていない時は、シリンダーがクルクル回ります。

シリンダーが完全に固定されない構造の様です。

なので、完全に銃身とシリンダーが所定の位置にならない状態で激発したら、銃自体が吹っ飛びそうで怖いですね。

この突起は1ミリのプラ板をカットして貼り付けた物です。

この突起を斜めに削り出しました。

この突起にシリンダーストップと言うフレームから飛び出ているパーツにぶつかるだけでシリンダーの回転を止めています。

かなり不安ですが。

シリンダーの後部にはカートリッジ(薬莢)から飛び出しているピンを合わせる切りかぎが有ります。

次にリアサイト(照門)を作りました。

透明アクリルで見えにくいかもしれませんが楕円形で上の部分に切りかぎが有ります。

こちらがフロントサイト(照星)です。

てっぺんが丸棒の付いた形状です。

銃口も少し掘り込みました。

口径は44口径位と思います。

この当時の銃って大口径なんですよね。

ダーティハリーのM29と同じくらいの口径ですが、火薬の量がマグナムの半分くらいの様です。

こんな形状の銃になりました。

昔の銃ですが、かなりかっこいい銃だと思います。

坂本龍馬のS&WのNO,2よりずっと優れたデザインだと思います。

しかも、この銃、ダブルアクションなんですね。

坂本龍馬の銃は、一回一回撃鉄を起こして引き金を引くシングルアクションですが、このル・フォーショーは、引き金を引くだけで撃鉄が自動的に起きて、引き金を引き切ると倒れて撃発する方式で、短時間に連発できる方式です。

いちいち撃鉄を起こさなくても撃てるんです。

もちろん、撃鉄を起こしてから引き金を引いても撃てます。

次に制作する部分は弾薬(カートリッジ)を装填する部分です。

上の写真の鉛筆で下書きしている部分が弾を装填する部分です。

この写真では完全に塞がってますが、これからモーターツールで削り落とし開口します。

それに合わせてフタも作ります。

後、ネジのモールドと、ランヤードリングも作ります。

続く!

 

 

 


幕末のリボルバー ル・フォーショーを作る Part03

2024-04-06 08:20:00 | Gun

フルスクラッチ(完全自作)で製作の「ル・フォーショー ピンファイアリボルバー」ですが、基本的な形状は出来上がってきました。

次に撃鉄(ハンマー)、引き金(トリガー)、用心がね(トリガーガード)等の製作をします。

使用素材は、やはりアクリルとプラ板です。

アクリルとポリスチレンのプラ板はアクリルの溶剤系接着剤で非常に良く溶着されます。

完全に一体化するので削っている時に剥がれたりしません。

なので、安心して削ることが出来ます。

瞬間接着剤などを使うと削っている途中で剥がれて来たりするので使えません。

瞬間接着剤って案外接着力が無いんですね。ちょっとした衝撃で剥がれます。

熱にも非常に弱いし、アセトンをかけると簡単に剥がれます。

それに引き換え、アクリルの接着剤はアクリル自体を溶かして溶着させるのでガッチリくっ付きます。

それゆえに、間違って接着したら剥がれません。

切るか、削るかしないと修正できないので慎重に作業を進めます。

上の写真ではまだ切り出したアクリルとプラ板を貼り合わせただけですが、これを半丸ヤスリとモーターツールで実銃の形状に削り出します。

 

グリップも作りました。

アクリルをベースに、エポキシパテを盛って硬化後丸く削り出します。

銀色の棒はエジェクターロッドで、撃ち終わった空薬莢をシリンダーから押し出す棒です。

実銃は前後に稼働します。

実銃のリボルバーは弾丸を発射した後、薬莢が火薬の圧力で膨らむので、シリンダーに張り付いて抜けなくなります。

モデルガンの様に傾けたら抜け落ちると言う事は有りませんので、棒で突っついて出す必要が有ります。

この棒は五寸釘をカットして使いました。

フロントサイト(照星)も付けました。

まだリアサイト(照門)が付いてません。

マスキングテープで止めている部分に、下からマイナスネジをねじ込んで銃身とグリップフレームを繋ぎますが、シリンダーの真ん中に長くて細いネジを銃口側からねじ込んで組み立てます。

それとグリップの下にランヤードリングをつけます。

ランヤードリングとは、警察官が拳銃に紐をつけて所持している様に、紐を取り付ける金属製の輪です。

軍用銃には大抵ついています。

拳銃を落として無くさない様にですね。

それと、ネジのモールドが全く有りませんのでドリルで凹みをつけてマイナスネジの頭を彫刻します。

本物のネジを使いたいのですが、今時、マイナスのネジはホームセンターにも売ってません。

なので作ります。

昔の銃のネジは、一本一本職人が手でネジ部分を削って作っていたそうで、同じ大きさのネジでも、場所を間違えると入らなかったりするそうです。

1箇所一本の専用ネジになっていたそうです。

この当時から銃身には発射された弾丸に回転を与えるライフリングというねじれた溝が複数入っていたそうで、そのライフリングも専用の刃物で削っていく場合と、ねじれた溝のついた棒をパイプに通し、そのパイプを外側から叩いて潰し、その後パイプに通したねじれ棒を抜き取って銃身のライフリングを掘っていたそうです。

なので、昔の銃の銃身は8角形の叩きやすい形だったと聞いたことがありますが、本当かどうかは分かりません。

この「ル・フォーショー」はベルギーで製作された物ですが、この当時日本ではパイプ状の金属を作る方法がなく、火縄銃の銃身を作る際は長い平べったい鉄の板、(フラットバー)を丸棒に斜めに巻き付けて焼いて叩き、トイレットペーパーの芯の様に鉄パイプを作っていたそうです。

その為、銃の発注の際、「タネガシマを一本巻いてくれ」と発注していたそうです。

この後、ネジのモールドや、激鉄の滑り止め、リアサイト、ランヤードリング等の細かい部分を作ってゆきます。

続く!