いよいよ銃本体の彫刻です。
本物の銃の彫刻があまりに錆びていて分からないので、これはその道のプロに任せるしか無いということで、ネットで彫刻師を探した所、すごい人を見つけました。
その方は「井浦勝雄さん」です。
この方は、本来金属に彫刻される方で、プラスチック製のモデルガンやエアーガンに彫刻されるような方では無かったと思います。
一度自分で彫刻して見れば分かりますが、金属のようなしっかりとした素材に模様を彫るのは、素材がしっかりとしているので彫りやすい所が有るのですが、プラスチックのような粘りの有る柔らかい素材は、非常に彫りにくい!
つい、力が入りすぎて刃物が行きすぎたりして大失敗と言うこともしばしば有ります。
私は金属の彫刻はしませんが、木材に文字を彫ったり、以前に牡丹の彫刻を木製看板に彫ったことが有ります。
くるみ、桜、楠のような硬めの木は非常に綺麗に彫れますが、湿った杉の木などは物凄く彫りにくい!
硬い所(節のある部分)と、柔らかい部分の差が激しく、硬いと思って刃物に力を入れると急に柔らかくなったりして刃物が滑ってしまったりします。
なので、金属に彫る人が、こんな柔らかい変な素材に彫ってくれるのか?
そこが心配でした。
一か八か、井浦さんのホームページのメールページでメッセージを送りました。
その内容は、「幕末の拳銃を作ったのですが、全体の彫刻が複雑すぎて、しかも、錆だらけで細かい彫刻がわからない状態ですが、これを復元するように彫る事が出来ますでしょうか」と言うような内容だったと思います。
お寺に所蔵されている歴史的遺産と言うことも書きました。
こちらの電話番号も書き込み、後は連絡を待つのみでした。
すると、翌日、井浦さんから電話が有り、色々経緯を話し、お寺で展示するもので歴史的資料です。と言うことを強調してお話しした所、快く引き受けて頂きました。
井浦さんは非常に丁寧で気さくな感じの方だと電話だけでも分かりました。
その後、パソコンのメールで今現在の銃のレプリカと、実銃の写真を送り、見て頂きましたが、すぐにル・フォーショーだと理解して頂きました。
錆だらけの写真で模様が分かるかどうかとお聞きした所、「大丈夫」と言うお返事を頂き、もう嬉しくて舞い上がるようでした。
早速、実銃の細部の写真を数十枚プリントアウトして、複製した銃と一緒に井浦さんに送り出しました。
その後数日経って、「出来上がりました。」と連絡が有り、現物が届きました。
そのブツがこれです。
見れば見るほどすごい彫刻です。
何時間でも見ていられるくらい見事です。
こんな柔らかい樹脂にこんな彫刻が良くできるものだと不思議な位に感じます。
井浦さんいわく「赤子を扱うように彫りました」とのことです。
錆だらけで良くわからない部分ばかりでしたが、葉っぱの筋が入っている所とか、シリンダーに、ブドウの実の様な模様がある所も見事に再現されていました。
ヨーロッパでは、ブドウというのは子沢山という意味もあって縁起のいい物とされている様です。
なのでこの銃に彫られているのでしょう。
本当に見事な彫刻で、井浦さんには感謝の言葉しか有りません。ありがとうございました。
この原型は私にとって一生の宝物になります。
でもこれで終わりではありません。
この彫刻原型から型取り複製し、錆だらけの塗装をしなければなりません。
こんな感じに。
上の写真は実銃では有りません。今回作ったレプリカです。
これを発注して頂いた「泉龍寺」では、因幡二十士の記念モニュメントや、小さいながらも博物館を作って「河田佐久間」の遺品やレプリカの銃を展示しています。
上の写真は、一番上の銃が原型、真ん中がその複製品、下の銃が井浦さんに彫って頂いた銃です。
モニュメントに取り付ける銃は彫刻のないものをブロンズで鋳造し、展示する物は彫刻して頂いた銃を更に複製して錆塗装した物です。
その錆塗装ですが、これは結構楽しみました。
その塗装方法は次回に。
続く!