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由良の門(と)を 渡る船人 かぢをたえ
行くへも知らぬ 恋の道かな (曽禰好忠・そねのよしただ・生没年不詳)
京都府の日本海側にある、由良川の川口にて、舟人が櫂(あるいは櫓)を
なくしてしまったかのように、行方のわからない恋です。
47
八重葎 茂れる宿のさびしきに
人こそ見えね 秋は来にけり (恵慶法師・えぎょうほうし・生没年末詳)
「八重葎」とは、荒地や野原に茂る雑草の総称。そのような草の茂る宿に訪れる人もいないが、秋はくるものだ。
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風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ
くだけてものを 思ふころかな (源 重之 ?~千年頃)
強い風が吹いている。
岩打つ波も砕けている。そのように私の恋も、心砕けるほどだ。
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みかきもり 衛士のたく火の 夜は燃え
昼は消えつつ ものをこそ思へ
( 大中臣能宣朝臣・おおなかとみのよしのぶあそん・九二一~九九一)
「衛士・えじ」は篝火を焚いて、皇居の門を警護する人たちのこと。
その篝火のように、私の恋は燃えているのだ。
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君がため 惜しからざりし 命さへ
長くもがなと 思ひけるかな (藤原義孝・九五四~九七四)
あなたにお逢いできるのでしたら、我が命さへ惜しくはないと
思っていたが、お逢いできました今は、ながく生きていたいと思います。
(勝手にしやがれ。わたしの本音 笑)