中村 弦「天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語 」新潮社(2008/11)
*****内容(「BOOK」データベースより)*****
時は明治・大正の御世。孤独な建築家・笠井泉二は、依頼者が望んだ以上の建物を造る不思議な力を持っていた。老子爵夫人には亡き夫と過ごせる部屋を、へんくつな探偵作家には永遠に住める家を。そこに一歩足を踏み入れた者はみな、建物がまとう異様な空気に戸惑いながら酔いしれていく…。
**********
昨年の日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作とのことだが,一年遅れで図書館で借りた.
「xx館の秘密」の類いはミステリーのひとつの分野.目次の次に,もっともらしい鳥瞰図や間取り図があるのが個人的には好き.こうしたミステリの延長と思ったら,違っていた.この手のものには,これまでに出会ったことがない.読みはじめたら止められなくて最後まで行ってしまった.
6編の短編連作が明治14年のエピログと昭和7年のプロログに挟まれている.この時代の洋風建築もテーマみたいなもの.
各編は時代順ではなく,全体がうまく構成されている.
でも,
第1編では笠井泉二は単なる優秀な建築家と思えるのだが,5編目でその正体が「天使」であるという解釈が,ひとりの登場人物から語られる.こういう超自然的な設定で,もっともらしく書かれた小説からは引いてしまう.
雨宮という,いかにも悪役らしい悪役?が出てくるのにも鼻白む.でも悪役は人間であって,悪魔ではないので,天使は相手にしない.続編で本当の悪魔登場などということにはならないでほしい.
オカルトとかホラーとかとは遠い位置にいるところに好感 なんだから.
うまい小説だが,もっと別な書き方も出来たんじゃないの? というのが勝手な読後感.
*****内容(「BOOK」データベースより)*****
時は明治・大正の御世。孤独な建築家・笠井泉二は、依頼者が望んだ以上の建物を造る不思議な力を持っていた。老子爵夫人には亡き夫と過ごせる部屋を、へんくつな探偵作家には永遠に住める家を。そこに一歩足を踏み入れた者はみな、建物がまとう異様な空気に戸惑いながら酔いしれていく…。
**********
昨年の日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作とのことだが,一年遅れで図書館で借りた.
「xx館の秘密」の類いはミステリーのひとつの分野.目次の次に,もっともらしい鳥瞰図や間取り図があるのが個人的には好き.こうしたミステリの延長と思ったら,違っていた.この手のものには,これまでに出会ったことがない.読みはじめたら止められなくて最後まで行ってしまった.
6編の短編連作が明治14年のエピログと昭和7年のプロログに挟まれている.この時代の洋風建築もテーマみたいなもの.
各編は時代順ではなく,全体がうまく構成されている.
でも,
第1編では笠井泉二は単なる優秀な建築家と思えるのだが,5編目でその正体が「天使」であるという解釈が,ひとりの登場人物から語られる.こういう超自然的な設定で,もっともらしく書かれた小説からは引いてしまう.
雨宮という,いかにも悪役らしい悪役?が出てくるのにも鼻白む.でも悪役は人間であって,悪魔ではないので,天使は相手にしない.続編で本当の悪魔登場などということにはならないでほしい.
オカルトとかホラーとかとは遠い位置にいるところに好感 なんだから.
うまい小説だが,もっと別な書き方も出来たんじゃないの? というのが勝手な読後感.