乙川優三郎『太陽は気を失う』文藝春秋 (2015/7).
アメリカ西海岸を思わせるカバー写真で,タイトルの英訳 (ここでの also のニュアンスは?) まで印刷されている.
これほど内容と関係ない装丁ははじめて.
著者は時代小説作家という先入観があったのだが,認識不十分だった.
14 編の短編集で,ひとつ 20 ページ.表題作が東日本大震災を扱っていて,ちょっと毛色が変わっている.
「太陽は気を失う」の他にも「ろくに味わいもしないで」「単なる人生の素人」など,タイトルが面白い.
「誰にも分からない理由で,考えるのもつらいことだけれど,悲しみがたくさん.まだ夜は長い.」
上の文章はタイトルを四つ選んでつなげてみたもの.
暗い話が多い.若い人向きではない.オール讀物に掲載されたとのことだが,この雑誌の読者は中高年なんだろう.
夫婦は運命共同体だが.子供達が独立し,定年すれば共同体である必要もなくなる.生活には困らない (というより,贅沢な),けれど,索漠とした人生を諦めて送っているというケースが代表例.
男の立場で書くときは女を非難し,逆の場合は vice versa.
図書館で借用.