Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

信時潔

2007-04-27 11:46:21 | 読書
新保祐司著「信時潔」構想社 (2005年初版)

発行時に話題になったのを覚えていたので,図書館で見かけたので借りた.写真が信時潔で,「海ゆかば」という曲の作曲者.この曲は戦前第二の国歌のような扱いだったが,「戦後的価値観」により封印されていたと著者は言う.これがラジオでは玉砕のテーマとして使われたと,どこかで聞いた気がするが,この本にはそういう記述はない.

著者はこの曲はバッハのコラールに比すべき深い曲だという.百読は一聞にしかず.ウェブを探して聞くことができた.歌手は藤山一郎のように思えた.歌詞が 7 行のためなんとなく収まりが悪い感は否めない.
「海行かば 水漬(みづ)く屍(かばね),山行かば 草生(くさむ)す屍,大君(おおきみ)の 辺(へ)にこそ死なめ,かへりみはせじ」
という歌詞に,短調でなく長調の曲というところが日本離れしている.しかも曲とがまったく一体化しているところは確かに名曲だ.
しかし,博物館に陳列されるのはいいが,日常生活に入り込まれてはかなわない歌詞である.

著者は軽薄派山田耕筰・対・重厚派信時潔という構図を作っているが,現代から見れば山田耕筰さえ十分重厚だ.また著者は現代音楽が嫌いらしい.
この本を読めば信時潔がいかに高潔な人格の持ち主であったかは理解できる.
しかし信時はこの曲が第二の国歌と扱われていた当時,また終戦後,この曲についてどう考えていたのだろうか.心中に葛藤があって当然と思うのだが,この本では触れられない.まあ信時のような明治の男は思ったことを素直に口にはしないだろうが.

信時に関する客観的資料は,信時潔のお孫さんによるホームページ
http://home.netyou.jp/ff/nobu/
にまとめられている.

信時と熊谷守一は互いの子供どうしが結婚したそうで,熊谷の文章にはときどき信時が登場する.信時が熊谷を紹介した文章も読んだが (別冊太陽「気ままに絵のみち熊谷守一」平凡社2005年7月),かるく熊谷をからかった感じもあって,なかなか良かった.
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3 コメント

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歌は世に連れ (遊民爺)
2007-04-28 08:58:07
そういえば,インターナショナルなども近頃さっぱり聞きませんな。
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Re 歌は世に連れ (16トン)
2007-04-28 20:09:23
恋愛のうたは永遠ですけどね. 
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Unknown (とおりすがり)
2007-05-17 09:12:09
「大君」の「君」は「君が代」の「君」と同じと思うと、キミが悪い
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