Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

歌うネアンデルタール

2007-02-10 18:23:38 | 新音律
副題 音楽と言語から見るヒトの進化
スティーヴン・ミズン (Steven Mithen 原著), 熊谷 淳子 訳 早川書房 (2006/06)

このカバーはどう見てもゴリラだな.洋書の表紙のほうも,看板に偽り.ネアンデルタールがパンツをはいて楽器を使ったと本文には書いてない.

著者は「初期人類は歌うこと・踊ることが会話であったとし,彼らのコミュニケーションを全体的holistic,多様式的multi-modal,操作的manipulative,音楽的musical,ミメシス的mimectic(見よう見まねとでも訳すのかな)な「Hmmmmm」と名づける.これを極限まで進化させたのがネアンデルタールだ.彼らネアンデルタールはじゅうぶんに発達した咽頭と大きな脳容量(現代人より大きかった!)を持っていた.20万年前の地球は,狩りをし,異性を口説き,子どもをあやす彼らの歌声に満ちていた.しかし彼らは,いまのわれわれのように音節言語をあやつるホモ・サピエンスに取って代わられる.でもHmmm....はホモ・サピエンスのなかに「音楽」として生き残った.」と言っている.

「歌うネアンデルタール」というタイトルに従って要約するとこのようになるが,この本のカバーする範囲はもっと広い.失語症,音楽サヴァン(異常な音楽能力を持つ知的障害者),絶対音感,サル・類人猿のコミュニケーション,おとなと赤ちゃんとの対話などの,膨大な文献に裏打ちされた知識の切り売りには圧倒される.500ページ近い大著だが20%は注と文献.この部分は百科事典的に役に立ちそうだが,索引がなくて!!役に立ちそうもない.

クライマックスのはずの「恋するネアンデルタール」のあたりになると推測が多くなり説得力が落ちる.洞窟に壁画は残るかもしれないが歌声は残らない.証拠がないのは,いいような悪いような.

この本のタイトルは売れ筋をねらったのかもしれないな.最後の数章にはタイトルに続いてマイルスだの,ブルーベックだの (このひとが出てくるあたり,いかにも米国白人の著書だ) の曲名が呈示されているが,とってつけたようだ.翻訳調で読みにくい文章だが,原著も訳しにくい文章なのだろう.

そもそもどういう読者を対象としているのかと思うが,とばし読みすれば門外漢にもおもしろい.

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2 コメント

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声の再現 (16トン)
2007-02-14 10:01:57
頭蓋骨などが残っていて,口やのどの構造もある程度推測できるようなので,ネアンデルタールの声,歌などを計算機で合成することは可能かと思います.でも,何をしゃべらせ,何を歌わせるかが問題か!
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進化の証明 (みなが仙人)
2007-02-11 15:21:29
石器、絵画、文字など「外部」に表現された遺物が現れるまでは、化石しか「物証」がないので、初期の言語や音楽の進化を証明するのは容易でないのでしょうね。
本は読んでおりませんけど・・
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