Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

「菊池寛が落語になる日」

2022-02-18 09:26:11 | 読書
春風亭 小朝,文藝春秋 (2022/1).

菊池寛という人物の言動あるいは生涯が落語になるのかと思ったら,そうではなく,彼の書いた小説が落語になるという意味だった.「...になる日」は小朝の独演会シリーズのタイトルで,この 1/29 で第 10 回だそうだ.

この本では章ごとにタイトルに続き,小朝による解説らしきものが1ページ,落語が1段組で続き,最後に原作が2段組で現れる.
目次 *****
1 入れ札 - 菊池寛の原作は「入れ札」,以下同様に「」内が原作.
2 予感 - 「妻は皆知れり」
3 うばすて山 - 「うばすて山」
4 お見舞い - 「病人と健康者」
5 時の氏神 - 「時の氏神」
6 好色成道 - 「好色成道」
7 龍 - 菊池寛「竜」
8 ある理由 - 「葬式に行かぬ訳」
9 マスク - 「マスク」
対談 : 浅田次郎 × 春風亭小朝「菊池寛の小説には、心の動きがある」*****

菊池寛が「父帰る」「恩讐の彼方に」「藤十郎の恋」「忠直卿行状記」などのテーマ小説の著者としてブンガク的に評価されるのは 1920 年代初頭まで.それ以後 菊池は大衆路線に転換する,と聞いた.ここでは 1,4,8,9 が初期の作品.読んだ覚えがあるのは 1 だけだが,2 以下はそれほど有名な作品ではないと思う.でも有名作は落語化しづらそう.巻末対談によれば「藤十郎の恋」計画があるそうで,期待しよう.

落語 2,4,5,8,9 の時制は現代で,ぼくは米丸などの新作落語の呪縛から逃れきれなかった.8,9 は原作からヒントをもらったという程度で新作と言ったほうがいい.9 のトイレおち がおかしかった.
6,7 あたりは,原作をあまりいじり回していないし,古典っぽくて良い.
帯には「落語小説」とあるが,小朝が書いた部分は,小説とは言えない.噺として聴けば納得できそう.3は読んだ限りではただのとんち話だが,高座で聞けば「うばすて山」感が出るのだろうか.

巻末に独演会の演目もリストアップされていて,目次の順番はおよそ披露された順番らしい.ぼくの評価では,回を重ねた後のほうが落語としての出来は良い.


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