2009/6月上旬 丹沢・小川谷廊下
記憶
古き良き時代というものが誰にでもあろう。
郷愁にも近い感性であろうか。
父親から古いカメラを譲り受けた。
実に私の生まれる前に世に出たシロモノらしい。
いわば骨董か。
古きアルバムでは、このカメラが活躍していたに違いない。
そういわれれば見覚えはある。
あれは、小川谷にも似た渓谷の橋上からだ。
このカメラのファインダ-を初めて覗いた記憶が蘇った。
久々の山行は丹沢・小川谷廊下。
今シ-ズンの沢初め。
なんとか、復活の狼煙となるといいのだが・・・。
ROKKOR
さあ、ゴルジュの始まり。
体が鈍っているので、努めてビスタ-リペ-スで。
平日ということもあってか、前後にパ-ティ-はなく、十分ゆったり。
やはり、ゆったり気ままな沢旅はいい。
時に直登の滝場は登れる所は気分に任せてクライミング。
おおむね美しい水の流れ。この美しい流れが、一時の癒しだ。
滝場もいいが、これがまたいい。
ミノルタAL-2。1963年12月発売。
セレン光電池式、ROKKOR-PF(5群6枚)45mm、F1.8
いわゆる”明るいレンズ”。四角いボディ-が時代を感じさせる。
重厚
流れを遮るのは”つるつるの大岩”
一見、傾斜もゆるく見えるものの、名の通りフリクションが効かず「ツルツル」だ。
最初の一歩が踏ん張りどころ。
突然「ツルっと」なんて考えずに無心で行く。
ファインダ-こそ曇りがちだが、レンズはくすんでいない。
絞りもシャッタ-速度もマニュアル。
シャッタ-スピ-ドが一部不安定なものの、シャッタ-自体死んでいない。
この重厚感、堅牢な造り。この時代のカメラには感心させられる。
現代のそれとは、アプロ-チがまったくもって別物だ。
緊張感
石棚2段 20mは左の岩塔を行く。巻きだが、ちょっとしたクライミング。 落ち口には立派な確保支点があるので、登られているらしい。
最後の5mトイ状は、「深い釜で泳いで取り付くしかない」とあったので、 気合入れていたが、今ではすっかり埋まってしまったようで、ひざ下程度。 それでもクライミングは、ちょうどいい緊張感。
引き出しの奥にあったフィルムを装填してみる。カウンタ-を見ながらフィルムを巻く。
撮影距離、絞り、シャッタ-スピ-ドを決めて目盛りをあわせる。
シャッタ-を切る。「カシッ」と軽い音。
モデルは子供たち。
三世代目が被写体となった。
代物
最後に壊れた堰堤を越えて終了。
廃墟の風情が時代を感じさせる。
時の流れの代償とでもいうのだろうか。
懐かしき時代がある。良き日の思い出がある。
世代の記憶と記録はここにあった。
そんな代物を、自分は残せるのだろうか。
「山は高きを以って・・・。」あなたにとって、この後に続く言葉は何であろうか?
志向、嗜好、思考。
最近、山へのアプロ-チが変わってきたようにも感じている。
今年の夏は、倅と沢歩きをしてみようと想い立つ。
自分が後に残せるものはそう多くはないはずだ。
第三章は始まったばかり。
あの写真はどんな風に写っているのだろうか。
sak