【選挙】:政治刷新前面「政治とカネ」舌戦…東京15区は自民が公認候補擁立断念、9人乱立の混戦模様に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【選挙】:政治刷新前面「政治とカネ」舌戦…東京15区は自民が公認候補擁立断念、9人乱立の混戦模様に
16日告示された衆院3補選は、自民党派閥による政治資金規正法違反事件など、「政治とカネ」の問題が噴出する中で迎えた。各地の候補者たちは政治の刷新を前面に掲げ、激しい舌戦をスタートさせた。
■衆議院3補欠選挙告示、政治改革・経済対策など論戦スタート…自民は2選挙区で「不戦敗」確定
■東京15区
東京15区補選は、公職選挙法違反事件で逮捕され、有罪が確定した柿沢未途・前法務副大臣(自民党を離党)の辞職に伴うもの。2019年には同じ15区選出の自民議員だった秋元司氏(52)が汚職事件で逮捕され、地元・江東区の前区長は、柿沢氏の支援を受けた昨年の区長選で公選法違反に問われている。不祥事続きの逆風下、自民は公認候補の擁立を断念。野党や無所属、諸派から9人が乱立する混戦模様となった。
第一声に臨んだ候補者らは、こうした「政治とカネ」の問題を一斉に批判。立憲民主党の酒井菜摘氏(37)が「大好きなこの街で、政治の汚職が広がっていることは許せない」と政権批判を強めれば、日本維新の会の金沢結衣氏(33)は「江東区から、しがらみまみれの政治を刷新していこう」と強調し、自民に代わり保守層の取り込みを図る。国民民主党が推薦する無所属の乙武洋匡氏(48)は「『逮捕者が出た江東区』。そんな言われ方をするのは最後にしましょう」と述べた。
補選にはこのほか、参政党の吉川里奈氏(36)、無所属の前参院議員の須藤元気氏(46)、いずれも諸派新人の福永活也氏(43)、根本良輔氏(29)、飯山陽氏(48)が立候補。秋元氏も、事件で実刑判決を受けながらも無罪を主張して上告中で、立候補を届け出た。
■島根1区
自民の細田博之・前衆院議長の死去に伴う島根1区補選は、3補選で唯一、自民候補が出馬し、与野党が対決する構図となった。細田氏が政治資金規正法違反事件の中心だった安倍派で会長を務めていたこともあり、両候補とも「政治とカネ」を強く意識した訴えを展開した。
自民新人の錦織功政氏(55)は、派閥による政治資金パーティーの禁止や収支報告書の透明性確保などの政治改革に取り組む決意を示し、「残りの生涯をささげ、誠心誠意働く」と述べた。
一方、立民前議員の亀井亜紀子氏(58)は、「全国の有権者が怒りに燃えながら、投票に行くことができない。私たちは貴重な機会をもらった」と強調。「島根県から声を上げ、日本の政治を変えよう」と訴えた。
■長崎3区
自民党派閥の政治資金規正法違反事件が引き金となった長崎3区では、立民と維新の候補が名乗りを上げる一方、自民は候補擁立を見送った。
第一声で立民前議員の山田勝彦氏(44)は「長崎3区には、全国が注目している。金権政治を許さない民意を全国へ届ける」と強調。維新新人の井上翔一朗氏(40)は「自民党のいない異例の選挙だが、改革を本当に実行できるのがどの政党で、どの候補者なのかを示したい」と訴えた。
他方、自民県連の幹部は「野党はここぞとばかりに政策を訴えるだろう。政権与党として情けない」と候補の不在を嘆いた。
◆人口減は 経済は…有権者 候補へ注文相次ぐ
3選挙区の有権者からは、政治改革や景気対策などへの注文が相次いだ。
東京都江東区の会社員、末永里美さん(40)は最近、物価高による食費や育児費の負担増に悩んでおり、自民党派閥による政治資金規正法違反事件にはしばしばあきれたという。「公約実現に努力し、お金の使い道をちゃんと説明できるクリーンな人が必要だ」と訴えた。
「裏金問題が盛り上がっているが、この国が抱える問題はもっとたくさんある」と危惧するのは、松江市の会社経営、青木緑男さん(58)。島根県は人口減が加速しており、「これから地元を支える若い世代への支援に本腰を入れてほしい」と政策論争に期待した。
「賃金が上がらず家計が厳しい」と漏らす長崎県佐世保市の会社員、久野綾さん(31)は「子育てや経済の面で実効的な政策を進めてくれる候補者を選びたい」と話した。
◆「不戦敗」選択肢奪う
谷口将紀・東京大教授(政治学)の話「東京15区と長崎3区では自民党が『不戦敗』したことで、与野党の論戦が交わされなくなり、有権者は選択肢を奪われる形になった。投票率の低下が懸念され、こうした状況を政治が招いたことを自覚する必要がある。補選の最大のテーマは『政治とカネ』。選挙結果は、後半国会最大の焦点の政治資金規正法改正を巡る議論にも影響を与えるだろう」
◆身近な課題 忘れないで
コラムニストの辛酸なめ子さんの話「庶民感覚とかけ離れたお金の問題ばかり注目され、国民の間では政治への諦めムードが漂い、補選は盛り上がりを欠いているように映る。物価高や少子化といった身近な課題の議論が進まない恐れがあることも心配だ。候補者は女性や若い世代が多いので、ぜひフレッシュな顔ぶれで活発な論戦を行い、政治の停滞したムードを吹き飛ばしてほしい」
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元稿:讀賣新聞社 主要ニュース 政治 【選挙・世論調査】 2024年04月17日 08:14:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。