【社説②・12.13】:補正予算案通過 税制合意 経緯不透明だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.13】:補正予算案通過 税制合意 経緯不透明だ
総額13兆9千億円に及ぶ本年度補正予算案が、与党に加え日本維新の会、国民民主両党の賛成で衆院を通過した。
自民、公明が国民民主の求めた所得税非課税枠「年収103万円の壁」を178万円に上げる目標で合意し、維新と高校教育無償化の協議に入るからだ。
国民民主とはガソリン税に上乗せする暫定税率廃止も一致。衆院選の民意をくんだ新たな一歩といえるかもしれないが、唐突で経緯も不透明である。
具体的な引き上げ方法や幅などは今後協議を続けるという。急ごしらえの域を出ない。
年収の壁は働く人の負担のあり方全般に関わり、税だけでなく130万円などで生じる社会保険と一体で考える問題だ。
すべての政党が国会で議論し枠組みを作り上げるのが筋であろう。熟議こそが大切だ。
補正予算案では立憲民主が修正要求したうち、与党側は本年度当初予備費を使った能登半島地震・豪雨の復旧・復興費の1千億円増額を受け入れた。
一方で半導体関連など基金積み立て計1兆3600億円分の減額は拒んだ。補正で計上せねばならぬほど緊急性が高いのか検証しない姿勢は疑問が残る。
年収の壁、高校無償化は今回の補正予算案に盛り込まれていない。無関係なのに交渉カードとして与党と個別協議していては野党連携は遠のくばかりだ。
もちろん物価高騰の中、30年間据え置かれた年収の壁引き上げは大切だ。このうち基礎控除は憲法に定める「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するため非課税という側面がある。
ただ金額を巡っては最低賃金伸び率を反映した国民民主案のほか、専門家から物価全体や食料品上昇率を基に120万~130万円との意見が出ていた。
自民税制調査会は財政難から引き上げに否定的で、財務省は国税、地方税合わせて7、8兆円の減収試算を示していた。財源問題は棚上げのままである。
自民の森山裕幹事長は「1年でやれるわけではない」と述べ「聖域」とされる党税調で骨抜きにされないか不安は残る。
気がかりなのは、防衛増税財源として2026年4月から法人税とたばこ税を引き上げ、27年1月から所得税の一部を回す政府案が固まったことだ。
防衛増税は規模や内容に疑問点が多く野党も反対してきた。秋の自民党総裁選では当時の茂木敏充幹事長が「追加負担の1兆円分停止」は可能と述べた。
年収の壁やガソリン税に目を奪われることなく、より大きな負担押しつけに注意したい。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月13日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます