【社説①・12.04】:PFAS汚染 米軍基地の調査拒むな
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.04】:PFAS汚染 米軍基地の調査拒むな
発がん性の疑いがある有機フッ素化合物(PFAS(ピーファス))を巡る調査が全国で進む中、汚染源とみられる各地の在日米軍基地では実態解明が進んでいない。
消火剤に含まれるPFASが地下水を汚染したと考えられるが、米軍に特権的な法的地位を認めた日米地位協定が壁となっている。国民の健康を守るため、協定改定に踏み込むよう政府に求める。
横田基地(東京都福生市など)=写真=では8月、PFASを含む汚染水が基地外に出た恐れがある。都などが米軍に現地での説明を求めたが、実現していない。
汚染事故時の日本側の立ち入り調査について、2015年に結ばれた日米地位協定の環境補足協定では「手続きを日米で定める」などと規定するが、普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)や横須賀基地(神奈川県横須賀市)で立ち入りが米軍に拒まれる例が相次ぐ。
米軍の特権的な立場は、費用負担にも及ぶ。地位協定は基地の維持費を米軍負担と定めているが、普天間飛行場では日本が肩代わりしたPFAS汚染対策費が計6億円近くに達する。
実態解明できずに費用負担を強いられる現状は放置できない。
日弁連によると、ドイツの米軍基地周辺でPFASが検出された際、米軍は浄化費用を負担した。イタリアや韓国では、基地内への立ち入り権が規定されている。日本が結ぶ協定とは大差がある。
地位協定の改定は石破茂首相の持論でもある。極端な米国第一主義を掲げるトランプ次期政権との交渉は容易ではないが、PFAS問題を突破口に、日本側が主権を行使できるよう協定の改定を米側に提起してはどうか。
PFAS汚染は、自衛隊基地や半導体工場周辺などにも広がる。航空自衛隊基地がある岐阜県各務原市では、水道水源の地下水から国の暫定目標値を超えるPFASを検出した。浄化対策に年間1億円超が必要だという。
各地の水道事業は人口減少や施設老朽化で維持が難しくなっており、PFAS対策は新たな負担になる。政府は米軍よりも自治体への財政支援を優先すべきである。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月04日 07:07:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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