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【大手小町】:今年の漢字5度目の「金」に違和感…世相反映が共感されなくなった理由

2024-12-14 00:01:30 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【大手小町】:今年の漢字5度目の「金」に違和感…世相反映が共感されなくなった理由

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【大手小町】:今年の漢字5度目の「金」に違和感…世相反映が共感されなくなった理由

 2024年の「今年の漢字」が「金」に決まりました。「金」はオリンピックが開催された年に、過去4回選ばれており5回目。1995年に始まり、今年30回目を迎えた「今年の漢字」は、その年を象徴する漢字一字を全国から募集。応募の最も多かった漢字を、京都・清水寺で 貫主かんす が 揮毫きごう します。流行語やヒット商品などのブームは、世相を反映していると言われるものの、選考結果を見て「どこではやってた?」「ちょっとピンと来ない」と拍子抜けすることも。人々の「共感ポイント」とズレが生じている理由と対策について、「今年の漢字」を企画・発案したPRプロデューサーの殿村美樹さんが解説します。

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 ◆「一年間の出来事を振り返る」という企画自体に無理 

 「今年の漢字」の立ち上げに携わったのは1995年。あれからおよそ30年が  ちました。私はずいぶん前に離れたので、今では毎年懐かしさに浸りながら、「今年の漢字」を年末の風物詩に育て上げた主催者様に敬意を表しています。

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写真はイメージです

 ただ最近、発表される漢字と人々の認識にズレが生じて「ちょっとピンと来ない」と感じるケースが増えてしまいました。

 原因は、インターネットやSNSの急速な普及で情報量が爆発的に増加し、人々の価値観と認識が多様化したからに他なりません。

 「今年の漢字」が始まった1995年はWindows95が発売された年。「インターネット元年」と言われ、この年を境に情報の伝わり方が劇的に変わりました。そんな中で、当初は人々の心に響いた企画が、徐々に かす んでしまうのは仕方ありません。すでに「一年間の出来事を振り返る」という企画自体に無理が生じているのです。

 解決策はただ一つ、人々の記憶が多様化した過去ではなく、誰もが幸せを願う未来を語る企画にブラッシュアップするしかありません。「今年の漢字」も「過去を表す漢字」から「未来を表す漢字」へ進化する方が共感を得やすいでしょう。

 かといって企画スキームを変える必要はありません。世界でも珍しい表意文字・漢字だからこそ、人々の意思を表現できるのです。その 醍醐だいご 味は大切にしなければなりません。

 ◆信念は絶対に変えず、伝え方を時代に合わせて修正

 ただ、企画を進めるスピードは、時代に合わせて加速しなければ“共感ポイント”を逃してしまいます。

 そのために漢字の募集は、現在の「今年の漢字」発表日である12月12日の「漢字の日」からスタートすることをお勧めします。この日から約10日間、「新年への思いを漢字一文字に託して、理由とともに送ってください」とインターネットで募集すれば、「漢字の日」も記念日として残すことができ、選ばれた漢字と人々の認識のズレも解消できるでしょう。

 発表は「元日」がベストです。タイトルは「今年の漢字」のままで、1位に選ばれた漢字を清水寺で発表すれば、新年の話題として強烈な印象を残すことができるでしょう。元日ほど人々が未来の幸せを願う時はないからです。

 また、お正月効果によって、清水寺の奥の院・千手観世音 菩薩ぼさつ 様へ揮毫した漢字を奉納している儀式が改めて注目を集め、新年を祝う風物詩として日本の伝統行事へ、さらなる進化を遂げるでしょう。

 時代を超えて存在感を高めるためには、信念は絶対に変えず、伝え方を時代に合わせて修正しなければなりません。ラジオのように、共感ポイントをチューニングするようなイメージです。

 たとえば、江戸時代まで女人禁制だった比叡山延暦寺とその周辺には今、オシャレなカフェが複数あって女性の人気を集めていますが、1200年以上前に最澄が とも した「不滅の法灯」は、これからも決して消えることはありません。このように信念を決して変えることなく、時代の価値観に合わせて共感ポイントをチューニングすることで、真のメッセージを伝え続けることができるのです。

 「今年の漢字」も当初の企画コンセプト「人々の意思を表す漢字で、時代を表現する」を全うしながら、進化してほしいと願っています。

【歴代の今年の漢字一覧表】「金」や「税」など過去に複数回選ばれた漢字もある
【歴代の今年の漢字一覧表】「金」や「税」など過去に複数回選ばれた漢字もある

 ■プロフィル 殿村美樹( とのむら・みき )

 PRプロデューサー。京都府宇治市生まれ。 TMオフィス 代表取締役。同志社大学大学院ビジネス研究科「地域ブランド戦略」教員。内閣府地域活性化伝道師。「ひこにゃん」(滋賀県彦根市)、「うどん県」(香川県)など数多くの地方PRを手がけてきた。主な著書に「テレビが飛びつくPR」(ダイヤモンド社)、「ブームをつくる」(集英社新書)など。

 元稿:讀賣新聞社 主要ニュース ニュース&トピックス コラム 【大手小町・どんな私も、好きになる】  2024年12月12日  15:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。


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