【社説・12.10】:J1神戸の連覇/天皇杯との2冠たたえる
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.10】:J1神戸の連覇/天皇杯との2冠たたえる
サッカー・Jリーグ1部(J1)のヴィッセル神戸が、創設29年目でJ1の頂点をつかんだ昨季に続き、リーグ優勝を果たした。最終節まで3チームが首位を争う中、ホームのノエビアスタジアム神戸(神戸市兵庫区)での最終戦で湘南ベルマーレに3-0で快勝した。連覇はチーム初の快挙で史上6クラブ目である。神戸は先月、第104回天皇杯全日本選手権でも5大会ぶり2度目の優勝に輝いている。連覇との2冠という栄誉を心からたたえたい。
神戸は、岡山県倉敷市を拠点とする川崎製鉄水島サッカー部を母体にして発足した。だが、初練習を予定していた1995年1月17日に阪神・淡路大震災に見舞われた。96年の日本フットボールリーグ2位でJリーグに昇格し、2度の2部降格などの苦難も乗り越えながら、震災被災地の人々と歩んできた。
〈共に傷つき 共に立ち上がり これからもずっと 歩んでゆこう〉
シャンソンの名曲として知られる「愛の讃歌(さんか)」の歌詞を書き換えて誕生した応援歌「神戸讃歌」を、サポーターと選手が大切に歌い続ける。震災から30年の節目を前に、最高の成果を市民に届け、輝かしい記録をチーム史に刻んだ意味は大きい。
チームの初タイトルは、元スペイン代表アンドレス・イニエスタ選手を擁して2020年の元日に獲得した天皇杯だった。大迫勇也選手ら主力選手の多くは、神戸に加入した理由の一つにイニエスタ選手の存在を挙げている。同選手は昨年神戸を退団し、今年現役引退も表明したが、彼が神戸に残した多くの財産をサポーターは忘れないだろう。
クラブの数が18から20に増えたJ1は今季、混戦が予想された。神戸では、昨季の優勝に貢献した元日本代表の大迫選手、武藤嘉紀選手、山口蛍選手、酒井高徳選手らが引き続き存在感を示した。そこに川崎フロンターレから移籍した宮代大聖選手ら若手が加わり、攻守にバランスの取れた戦いぶりを見せた。
ただ、チームは選手の故障やアジア・チャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)への参戦による過密日程などに悩まされた。首位との勝ち点差が最大8に広がるなど苦しい時期もあったが、11月に半年ぶりに首位に戻り、激戦を制した。
22年6月からチームを引っ張る吉田孝行監督の存在も大きい。「競争と共存」を掲げ、自ら信じる戦術を選手に徹底させた指導力と采配がなければ、連覇はなし得なかった。
大迫選手が「タイトルを取り続けるチームになりたい」と話すように「常勝神戸」は夢ではない。次はACLEを勝ち抜き、初めてとなるアジアの頂点を極めてほしい。
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月10日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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