【社説・12.14】:米兵少女誘拐暴行判決 「同意」主張を断罪した
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.14】:米兵少女誘拐暴行判決 「同意」主張を断罪した
米兵少女誘拐暴行事件で、16歳未満の少女へのわいせつ誘拐、不同意性交の罪に問われた米空軍兵長の被告(25)=嘉手納基地所属=に対し、那覇地裁は懲役5年の判決を下した。
判決は無罪を訴えていた被告の主張を退け、「悪質さが際立つ」と断じた。被告が少女に謝罪していないことなどを踏まえ「犯情は重く実刑は免れない」と指摘した。
事件から1年近くが経過した。被害に遭い、法廷で証言した少女や家族にとってつらい日々であっただろう。平穏な暮らしが訪れることを願いたい。関係者は少女の精神的ケアを重ねてほしい。
起訴状によると、米兵は昨年12月24日、本島内の公園にいた少女を車に誘い込んだ上で、少女が16歳未満であることを知りながら自宅で性的暴行を加えた。
少女が16歳未満であることを認識していたか、同意があったかどうかが争点となった。法廷での証言で少女はジェスチャーで実年齢を伝え、わいせつ行為に対して抵抗したと主張した。被告米兵側は少女を18歳と認識し、同意があったとして無実を主張した。判決は、少女の証言は「不自然不合理ではなく整合的で信用できる」とした。
被告に適用された不同意性交罪は、性犯罪事件の無罪判決に抗議するフラワーデモの高まりなどで昨年6月に可決成立した刑法改正で設けられた。同意のない性行為は犯罪であることを明確にした。判決は被告の「同意」主張を、法に基づき断罪したのだ。
判決後、米空軍嘉手納基地第18航空団司令官のニコラス・エバンス准将は「このような事件が起きたことを心から遺憾に思う」とした声明を発表した。この中で「日米同盟を支えるために沖縄で名誉ある任務に就いている何千もの米軍兵士の価値観を反映したものでは決してない」と強調している。
この発言は容認できない。日米同盟こそ米軍絡みの事件・事故の温床であり、県民の人権を侵す元凶である。判決直後の声明が22日に予定されている県民大会を念頭に、世論の沈静化を図る狙いがあったとすれば言語道断だ。米軍、日米両政府は日米同盟を称揚するのではなく、米軍人・軍属による性犯罪抑止の抜本策を確立すべきだ。
今回の事件を巡っては、政府が沖縄県に通知しなかったことも問題となった。今年5月に発生した事件についても報道で発覚するまで県に連絡はなかった。速やかな情報提供があれば、関係機関の連携でその後の事件を防ぐことができた可能性がある。
米兵は逮捕されることなく、起訴後も否認しているのにもかかわらず釈放されるなど、日米地位協定下で特権的な扱いを受けた。被疑者が米兵だという理由で特別扱いされる現状は異常である。日米両政府は直ちにこの不平等を解消すべきである。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月14日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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