【社説②・12.13】:生活保護費 物価高反映した増額を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.13】:生活保護費 物価高反映した増額を
憲法が保障する「健康で文化的な生活」にかなうのかが、問われている。
困窮者支援に取り組む全国の32団体が先月、物価上昇に見合う生活保護費へ引き上げるよう政府に求める要望書を出した。
食料品をはじめ必需品の値上がりが、生活保護受給者にとって「死活問題」になっていると訴えた。食費や光熱費などの生活扶助費の基準額を、単身世帯13%、家族のいる世帯は12・6%それぞれ引き上げるよう求めた。
前回改定した2020年度以降の全国の消費者物価指数は3年連続で上昇し、23年度の生鮮食料品を除く食料は前年度比7・5%も上がった。
必需品の値上がりは、所得の低い人や生活保護世帯ほど影響が大きい。受給者や支援者は危機感を強めている。政府は厳しい実態を直視すべきである。
生活保護費を含んだ社会保障費について、年末の予算編成に向けた見直しの議論が大詰めを迎えている。
現行の生活保護費は、低所得者層の消費実態とのバランスを理由に23年度からの減額がいったん決まったものの、特例で据え置かれた経緯がある。新型コロナウイルス禍や、21年からの物価高が反映されていないとの指摘が相次いだからだ。
コメの価格をはじめ、値上がりは広がっており、生活費増を補う視点こそ欠かせない。
生活保護費を巡っては、安倍晋三政権が13年に実施した保護基準額の引き下げは生存権を冒すとして、全国29都道府県で取り消しを求める訴訟が起こされている。
地裁では、行政訴訟としては異例の原告勝訴判決が相次ぐ。昨年11月の名古屋高裁判決は、政治による恣意(しい)的な生活保護費の切り下げは「裁量権の逸脱」として違憲と断じ、原告の逆転勝訴と初の国家賠償も認めた。政府は重く受け止めねばならない。
そもそも日本の生活保護制度は、対象となる層の15~20%しか利用しておらず、欧米より格段に捕捉率が低い。
門前払いなど自治体の水際対策や、全体の中ではごく一部にとどまる不正受給を強調し、周りの目を気にさせる状況も問題視されている。
ドイツでは、3カ月の物価に応じた保護基準額や課税最低限の調整が行われている。日本でも「最後のセーフティーネット」の役割を果たしうる水準が必要だ。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月13日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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