【沖縄・石垣市】:〈届かぬ1万4263筆 「石垣住民投票」が問うもの〉(上) 「陸自配備、島で考えたい」 市民の期待に市、議会応えず
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【沖縄・石垣市】:〈届かぬ1万4263筆 「石垣住民投票」が問うもの〉(上) 「陸自配備、島で考えたい」 市民の期待に市、議会応えず
拍手と歓声が沸き起こり、会場を包んだ。人々の表情には喜び、安堵、達成感がにじむ。2018年12月1日夜、石垣市大浜公民館であった「石垣市住民投票を求める会」の署名活動結果報告会。目標の1万筆を超え、有権者の約4割に当たる1万4千筆余りが集まったことが伝えられると、市民は投票実現を期待し、沸いた。その後、法廷闘争を含め6年の月日がかかる長い闘いになるとは、この時多くの人が想像もしていなかった。
住民投票に向けた署名数の報告を受け、歓喜に沸く会場=2018年12月1日夜、石垣市の大浜公民館
15年11月26日。若宮健嗣防衛副大臣(当時)が石垣市内で、中山義隆市長と会談。陸上自衛隊部隊の配備を正式に打診した。候補地に市平得大俣地区周辺を挙げた。
「平和の島を壊す。不利益だけだ」「安全保障のために重要だ」。市民が賛否で割れる中、中山市長は16年12月に配備に向けた手続きを進めることを了承。18年7月18日、定例記者懇談会後に急きょ会見を設定し、配備受け入れを正式に表明した。
「(国防・安全保障は)国の専権(専管)事項なので受け入れないという判断はない」。国策が島を揺さぶり始めた。
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「市民の意思がはっきりと分かるようにすべきだ」。揺れる島で、当時20代の島の若者たちが立ち上がった。18年10月13日。石垣市住民投票を求める会を発足した。代表に就いたのは平得大俣からほど近い嵩田地区のマンゴー農家、金城龍太郎さん(34)=当時28歳。陸自配備について「島全体で考えるきっかけになれば」との思いがあった。仲間と共に10月31日~11月30日の1カ月間、署名活動に奔走した。最終的に1万4263筆(有効署名総数)を集めた。
当時の金城さんが何度も口にした2文字がある。
「期待」。署名結果報告会で、市選管への署名提出時に、そして住民投票条例を市長に請求した時も―。
市長や市議会が1万4000筆の「重さ」を受け止め、市民の声を聞き、投票を実施すると信じていた。島のあり方を左右する自衛隊の配備計画。賛成のためでも反対のためでもない。市民が「考えるきっかけ」「意思表示する機会」を、金城さんは愚直に求め続けた。
「(市長、市議会は)市民の気持ちをくみ取ってくれる」、そう願い、何度も「期待」と口にした。だが、中山市長、市議会が応えることはなく、司法の壁にも阻まれ続けることになる。6年たった今、金城さんはこう振り返る。「期待」が「政治不信」に変わっていた。(照屋大哲)
(23面に続く)
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石垣市住民投票を求める会が27日午後7時から、市健康福祉センターで解散集会を開き、活動を終える。会の6年間を中心に振り返り、関係者に思いを聞いた。
元稿:琉球新報社 主要ニュース 社会 【話題・石垣市・島のあり方を左右する自衛隊の配備計画・住民投票】 2024年11月24日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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