【社説・12.14】:河井事件裁判終結 政治とカネ 教訓忘れるな
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.14】:河井事件裁判終結 政治とカネ 教訓忘れるな
2019年の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件はおととい、法廷で争った12人を含む全被告の公選法違反罪が確定した。発覚から5年以上を費やし、全ての刑事手続きが終結したことになる。
ただ、被買収議員の失職に伴う補選が告示されるなど余波は続いている。深刻な政治不信が広島県内外にばらまかれ、今も根強く残ることも忘れてはならない。
事件で河井克行元法相は妻案里氏を当選させる目的で地方議員ら100人に計2871万円を渡した。まさに「ばらまき」だが、案里氏は結果的に同じ自民党のベテラン現職を上回って当選した。カネで票が買われた証左として記憶にとどめたい。
事件で問われたのは、自民党の国会議員が地方議員にカネを配ることと、それを当然とする慣習、土壌である。
年末の餅代や夏前の氷代、選挙での陣中見舞い、当選祝い…。日常的なカネのやりとりを通じ、買収の意識や罪悪感が既に薄れていた面は否めまい。「カネのかかる政治」の温床にほかならない。
法廷で争った地方議員も買収の意図を否定し、慣習で受け取るカネだったと主張した。司法が退けたのは当然として、定期的に「小遣い」を授受する関係とそれを許容する仕組みが時代にも、国民感覚にもマッチしていないことを肝に銘じるべきだ。
河井夫妻のカネの出どころには謎が残る。当時の安倍政権の幹部が計6700万円を提供した疑いを示すメモの存在が本紙の取材で浮上したが、真相解明には至っていない。原資として、使途の公表義務のない政策活動費が疑われるのは当然だ。
河井事件で表面化したカネのかかる政治の弊害は、派閥の裏金事件とも共通する。だが今国会を見る限り、自民党が教訓や反省を生かしているとは思えない。先の衆院選で惨敗し、少数与党となったにもかかわらずである。
自民党は政策活動費を廃止する代わりに、支出先を非公開にできる「公開方法工夫支出」の新設を訴える。野党に「新たなブラックボックス」と批判されるのも無理はない。外交や個人の秘密への配慮などを名目に、新たな抜け道をつくることは許されまい。
政治資金全体のチェックでも、連立を組む公明党や国民民主党が提案する第三者機関の新設には距離を置く。透明化にどれだけ消極的なのか。
焦点の企業・団体献金の禁止でも「ゼロ回答」を続ける。野党の攻勢に対し、石破茂首相は表現の自由を定めた憲法21条に触れると力説する場面もあった。企業の政治献金を認めた1970年の最高裁判決が念頭にあるのだろう。
ただ、半世紀以上も前の判決である上に、金権政治の弊害などがあれば「立法政策」で対処すべきだと指摘した点に触れないのは不自然だ。政治家個人への献金は禁じているのに、矛盾を感じる。
衆院選で示された民意を、自民党は思い起こすべきだ。まだ遅くはない。野党に歩み寄り、透明で実効性のある法案の成立に努めてほしい。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月14日 07:00:00 これは2自で判断下さい。
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