《社説①・12.01》:PFAS全国調査 水道の安全につなげねば
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・12.01》:PFAS全国調査 水道の安全につなげねば
健康への悪影響が懸念されているPFAS(有機フッ素化合物)をめぐり、環境省と国土交通省が5~9月に行った水道水の全国調査の結果を公表した。
1リットル当たり50ナノグラム(ナノは10億分の1)という国の暫定目標値を超えたところはなかったが、検査済み全体の2割に当たる332の水道事業で検出された。
長野県内も中野市や長野市、大町市などの7事業で確認された。検査が推奨されるようになった2020年以降では東北中南信すべてで検出例がある。それだけ身近な化学物質になっている現実を、あらためて共有したい。
PFASは水や油をはじき、熱にも強い。フライパンや食品包装といった生活用品の皮膜、泡消火剤、半導体の生産工程などで幅広く使われている。
その便利さと裏腹に、健康リスクについての疫学研究が蓄積されている。世界保健機関(WHO)の研究機関も発がん性があるなどと評価した。各地で住民の血液中から検出される例が相次ぎ、浄水場で高濃度の汚染が確認された岡山県吉備中央町は公費による住民の血液検査を始めた。
住民の不安に応えるには、まずは定期的な水質検査と結果の公表が欠かせない。
暫定目標値のままだと、検査や水質改善などは努力義務でしかないため、環境省は水道法上の「水質基準」とし、対応を法的に義務付けるかどうか検討している。欧米に比べて緩い50ナノグラムという現在の基準値の見直しも含め、対応の強化が要る。
発生源の特定と環境中への漏出防止の強化も必要になる。
暫定目標値を超えた水道事業は20年度の11から減り、初めてゼロになった。主に取水停止や水源の切り替え、活性炭吸着などの浄水強化による。20年度に一部水源で暫定目標値を超えた長野市も検出値を下げてきている。
それらは根本的な解決策ではない。これまでは化学工場や泡消火剤を使う米軍基地からの漏出、PFASを含む廃棄物の放置などが発生源として疑われてきた。ただ、水道水や人の血液中に入り込む経路には不明な点も多く、特定に至らないケースが目立つ。
1万種類以上あるとされるPFASのうち代表的な数種類は国内製造や輸入が禁止されたが、使われ続ける限り、混入するおそれはいつでも、どこででもあり得る。それを前提に、生産、流通における規制や自治体の調査権限の強化も考える必要がある。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月01日 09:31:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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