【主張①・12.03】:イプシロン事故 背景検証し信頼回復せよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張①・12.03】:イプシロン事故 背景検証し信頼回復せよ
国産ロケットへの信頼がまたしても揺らいだ。小型ロケット「イプシロンS」のエンジンが燃焼試験中に爆発した事故で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の開発の在り方が問われている。
イプシロンSは小型衛星を打ち上げるイプシロンの改良型だ。新たに開発した2段目エンジンの性能を確認するため、鹿児島県の種子島宇宙センターで11月26日に燃焼試験を行ったところ爆発し、大破した。この影響で今年度中に予定していた初号機の打ち上げは遅れが確実になった。
燃焼試験中に爆発し、大きな炎と白煙を上げるイプシロンSロケットの2段目エンジン(JAXA提供)
2段目エンジンは秋田県内で昨年実施した燃焼試験でも爆発し、試験棟が全焼した。JAXAは対策を完了したとして今回の再試験に臨んだが、判断が妥当だったか検証が求められる。2回連続の爆発事故は異例で深刻な事態だ。
直接の原因究明だけでは、もはや不十分だろう。イプシロンは約2年前に6号機の打ち上げに失敗しており、相次ぐ事故の裏側に開発体制や組織の風土などの構造的な問題が潜んでいる懸念がある。背景にまで踏み込んで点検し、抜本的な再発防止につなげるべきだ。
イプシロンSは低価格化を目指している。コスト削減や、遅れている開発スケジュールを急ぐなどの事情が、肝心の信頼性を損なう要因になってはいないか。外部からの人為的な工作活動の有無を含め、あらゆる可能性を排除せず原因を究明しなければならない。
国産ロケットは昨年、次世代大型機H3の初号機も打ち上げに失敗しており、JAXAは一連の失敗の背景を経営の視点で分析した報告書を今年4月にまとめた。組織全体の共通課題として人員不足や技術継承の難しさなどを挙げ、解決に向け改革の決意を示したが、事故の連鎖を断ち切れていない。
元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】 2024年12月03日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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