【社説②・12.04】:容疑者の権利 道警は尊重を忘れるな
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.04】:容疑者の権利 道警は尊重を忘れるな
勾留中の容疑者が取り調べの内容などを記す「被疑者ノート」を北海道警察が容疑者の手元から一時持ち去ったことに対し、札幌地裁が接見交通権と黙秘権の侵害に当たるとして北海道に賠償を命じた。
接見交通権は、容疑者や被告が警察官などの立ち会いなく弁護士と接見できる権利を指す。
黙秘権は、自己に不利益な供述を強要されない権利だ。
いずれも憲法の手厚い人権保障規定に基づいており、捜査当局に対し立場の弱い容疑者を守る機能が期待されている。
被疑者ノートは不当な取り調べが行われていないかどうかを弁護士が監視するために日弁連が作成しており、そうした権利擁護の一端を担っている。
道警はその点を認識し直して反省し、同じことが繰り返されないよう徹底すべきだ。
息子への監禁容疑で逮捕され、後に不起訴となった女性と当時の担当弁護士が持ち去りの違法性を訴えていた。
道側は持ち去りについて、ノートの破損を修繕するためだったと主張した。
地裁は判決で、被疑者ノートについて「容疑者と弁護人の面会時の意思疎通を補完する」と意義を認めた。
その上で、修繕の必要性があまりみられなかったのに、持ち去られた時間が少なくとも15分間に及び、原告が内容を閲覧されていると危惧するのは当然だったとして「許容の限度を超えている」とした。
弁護士とのやりとりを警察側に知られたと思うことで「原告の供述意思形成に萎縮効果が生じる」とも指摘し、接見交通権と黙秘権の両方を侵害していると結論付けた。
容疑者の権利と弁護権を重んじた判断と言える。
女性側は取調官から黙秘を非難され、人格を否定するような発言を受けたとも訴えていた。これについては判決は「任意の供述を促す範疇(はんちゅう)にとどまる」などとして退けた。
ただ、法廷で公開された取り調べの映像には、取調官が「(黙秘権は)本当のことを言わなくていい権利でもない」などと執拗(しつよう)に迫る様子が記録されていた。捜査権の妥当な行使だったと済ませるには疑問も残る。
警察が、人権よりも捜査を最優先にするような姿勢が冤罪(えんざい)の温床になることは、先に再審無罪が確定した袴田巌さんの例を挙げるまでもない。
道警は、容疑者の権利を最大限尊重することが冤罪を防ぐことにつながると自覚してもらいたい。
元稿:北海道新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月04日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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