【社説②・12.06】:デフリンピック 聴覚障害への理解を深めたい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.06】:デフリンピック 聴覚障害への理解を深めたい
障害の有無にかかわらず、誰もが安心してスポーツを楽しめる社会を実現することが大切だ。耳が聞こえない、聞こえにくい人たちへの理解を深める契機としたい。
来年11月に日本で開催される聴覚障害者の国際スポーツ大会「デフリンピック」まで、残り1年を切った。70~80の国と地域から約3000人の選手が参加する予定で、12日間で東京を中心に陸上や球技など21競技が行われる。
全日本ろうあ連盟が招致活動を展開し、東京五輪・パラリンピックの開催決定を追い風に、2022年に日本初開催が決まった。
第1回の大会は100年前にパリで開かれ、パラリンピックより歴史が長い。日本開催を機に、官民挙げて、伝統ある大会を盛り上げたい。選手たちが実力を発揮できるよう、サポートすべきだ。
競技の基本的なルールは五輪と同じで、陸上や水泳のスタートはランプで選手に知らせる。競技会場では、条件の公平を期すため補聴器などは使用できない。
聴覚障害者の意思疎通に重要な手話は、国や地域によって異なる。そのため大会中は、選手同士の対話や交流に「共通語」とされる「国際手話」が用いられる。
大会には日本のろう者がスタッフとして協力する予定で、すでに国際手話の講習を受けた。スムーズな意思疎通ができるよう、さらに技量を高めてほしい。
今大会では、五輪のような選手村は設置されない。そのため多くの選手や関係者らが民間の施設に宿泊することになる。ホテルのフロントに、従業員の音声を文字化して表示する機器を設置するなど十分な配慮が求められる。
日本は大会に1965年から参加している。2022年の前回ブラジル大会は、新型コロナウイルスの流行で、途中での辞退を余儀なくされたが、メダルの獲得総数は過去最多の30個だった。
競泳男子の茨隆太郎選手は、400メートル個人メドレーなど「4冠」を獲得した。バレーボール女子も強豪として知られている。
「音のない世界」で競技に集中する選手たちのひたむきな姿に、エールを送りたい。
デフリンピックは、社会的な認知度が高いとは言えない。東京都が昨年、都民に実施した調査では、パラリンピックを知っていた人が93%だったのに対し、デフリンピックは15%にとどまった。
認知度が上がれば、支援する企業も増えるはずだ。来年の大会を将来につなげたい。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月06日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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