原子力発電環境整備機構(NUMO)が作成した文献調査報告書が、北海道寿都町長、同神恵内村長、北海道知事に提出された。
原子力発電で生じる高レベル放射性廃棄物(HLW)を地下深くの岩盤に埋設する地層処分事業の候補地探しは3段階の調査で進められ、その第1段階が文献調査だ。
原発の高レベル放射性廃棄物の最終処分場を巡り、原子力発電環境整備機構の山口彰理事長(左)から文献調査の報告書を受け取る北海道の鈴木直道知事=北海道庁
この報告書には、多数の研究論文などを基にNUMOが分析した両町村の地質情報や、地下処分場の建設が可能なエリアなどが記載されている。報告書は公開され、国民からの意見公募も行われる。こうした手続きを経るため、第2段階の概要調査に進むかどうかの判断を国が両町村長と知事に確認する時期は来春以降になるとみられる。
その間に寿都町では住民投票が予定されている。神恵内村と寿都町では令和3年以降、NUMOとの間での対話交流が重ねられてきた。両町村それぞれの熟慮の選択を尊重したい。
懸念されるのは鈴木直道知事の対応だ。北海道にはHLWなどの持ち込みを受け入れ難いとする条例があることを理由に、鈴木氏は概要調査への移行に難色を示し続けている。
寿都町と神恵内村が賛成でも、知事が反対すれば制度上、概要調査には進めない。その場合、知事の拒否は民意の軽視にとどまらず、最終処分に関わる自治体が文献調査中の佐賀県玄海町のみとなる事態を招く。
鈴木氏が同意して地下構造を実地に調べる概要調査が始まると地層処分への関心が全国的に高まるはずだ。これまで思案していた他市町村からの文献調査の申し出も期待される。
北海道にも原発が存在し、道民も原子力発電の利便性に浴してきた。その現実を無視しての地層処分の候補地探しに対する否定的対応は、他県などへのHLWの押しつけに他ならない。自治体の首長としての道義的責任が問われよう。
概要調査で地質条件が不適なら、第3段階の精密調査には進めない。適している場合でも知事や市町村長には移行停止を求める権限が認められている。現段階での硬直対応では、器量のほどが疑われる。
核のごみともいわれるHLW処分の問題は北欧諸国などで完遂に向けて進行中だ。世界に視野を広げての翻意を鈴木氏に強く求める。
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