【社説・11.16】:少数与党時代 熟議で政策の合意点探れ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.16】:少数与党時代 熟議で政策の合意点探れ
与野党間の議論を通じて一致点を見いだす。そんな民主主義の原点ともいうべき政治の在り方を構築できるかどうかの分岐点にある。
衆院選の結果を受け、国会は「自民1強体制」から様変わりした。衆院に17ある常任委員長のうち7が野党に配分され、野党第1党の立憲民主党が国会論戦をリードする予算委員長のポストを握った。
少数与党となった自民、公明両党は国民民主党との政策協議を通じ、多数派を形成したい意向だ。だが、他の野党からも幅広く意見を聞き、政策の合意点を探る謙虚な姿勢が求められる。
与野党の間では、年収が103万円を超えると所得税が発生する「年収の壁」の見直しが主要テーマに浮上する。国民民主党が非課税枠の178万円への引き上げを求めているからだ。
ガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除とともに、臨時国会で政府の経済対策の裏付けとなる補正予算案に賛成する事実上の条件となっている。臨時国会は28日召集の予定で、「自公国」の枠組みによる政策責任者の協議が始まっている。
「手取りを増やす」を掲げた国民民主党の議席伸長を見れば引き上げは必要だろう。主張通り改めれば税収は7兆6千億円減る。地方分は半分超の4兆円と見込まれ、影響は大きい。勤務先企業の規模などに応じ社会保険料がかかる「106万円の壁」と「130万円の壁」もある。
これらの課題をどう乗り越えるのか。仮に自公国の合意案で押し切るようであれば政権維持や人気取りのための密室協議に過ぎない。有権者の理解は得られず、石破政権は行き詰まるはずだ。
野党の見識と力量も問われよう。立憲民主党は「130万円の壁」に焦点を絞り、保険料負担に伴う収入減を給付金で埋める制度を設ける法案を衆院に提出した。この対案には、国会改革を進める狙いもありそうだ。
これまで法案や予算案は与党が事前審査し、国会に提出して審議日程さえこなせば、ほぼ原案通り可決、成立できた。野党の提出法案はたなざらしのままだった。国会を経ることなく内閣で使途を決める予備費の乱用も同様だ。第2次安倍政権以降は顕著で、国会審議の空洞化を招いた。
今後は政府、野党双方の法案を審議し、合意形成に向けて議論を重ねる「熟議」と「プロセスの可視化」の国会運営が求められる。税制や社会保障制度などを巡っては委員会や本会議に舞台を限らないケースがあろう。その場合も議論の結果を逐次、説明する必要がある。
実現可能性や持続可能性も重要な論点になる。合意形成の主役は実は野党なのかもしれない。法案や予算案に幅広い民意を反映させる立法府の使命を取り戻すべきだ。
石破茂首相は、第2次石破内閣発足を受けた記者会見で、少数与党に関して「ある意味で、こういう状況は民主主義にとって望ましいことかもしれない」と述べた。その言葉を忘れてはならない。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月16日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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