【社説・05.08】:コロナ「5類」1年 感染症への備え平時から
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・05.08】:コロナ「5類」1年 感染症への備え平時から
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に引き下げられて8日で1年となった。コロナ医療は一部で残っていた公費負担が終了し、4月から通常の医療体制に移行した。大型連休中の熊本県内はインバウンド(訪日客)を含む観光客でにぎわい、日常を取り戻したように見える。
だが、変異を繰り返すコロナウイルスへの警戒が続く状況に変わりはなく、気候変動によって新たな感染症が広まるリスクも高まっているとされる。いつ再びコロナ禍と同様の、もしくはより深刻な危機に直面するか分からない。
新型コロナでは医療が逼迫[ひっぱく]し、重症化しても入院できずに自宅や施設で亡くなるケースが頻発した。このような事態を再び生じさせてはならない。全ての関係機関がそれぞれの役割と、連携して対応すべき事柄を確認し、平時から備えておくことが肝要だ。
コロナ対応の教訓を踏まえ、政府は深刻な感染症への対応をまとめた「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」を近く改定する。6月に閣議決定する方針で、2013年の策定以来、初の抜本改定となる。
4月に公表した改定案では、対策項目を6から13に拡充。「水際対策」「ワクチン」「検査」などの項目を独立させ、それぞれ「準備期」「初動期」「対応期」の各段階での対応を整理している。
「医療」に関しては、4月に施行された改正感染症法に基づき、都道府県と医療機関があらかじめ協定を結び、流行時に医療を提供できる体制を整えるとしている。熊本県は確保病床や発熱外来、検査数などの目標値を盛り込んだ感染症予防計画を3月に改定し、医療機関との協定締結に向けた協議を進めている。
ただ、病床確保の義務付け対象となった地域の中核病院は、医師の残業規制を強化する「2024年問題」への対応も加わり人手不足が深刻さを増している。一般の病院や診療所の協力を取り付け、人員派遣や後方支援などの形でマンパワーを活用できる体制を、県が調整を尽くし築いてほしい。
コロナ医療やワクチン接種の変更について、国民への周知が十分になされているかも気がかりだ。
医療費の公費負担は3月末で終了した。高額な治療薬にも1~3割の自己負担が発生し、入院費の補助もなくなった。医療機関にコロナの病床確保料を交付する制度も廃止され、一般病床での受け入れに変わった。一連の変更によって必要な医療を受けられない人が出ていないか、行政は現場を注視してほしい。
これまで無料だったワクチン接種は原則有料の「定期接種」となり、今秋から65歳以上の高齢者と60~64歳で基礎疾患のある人を対象に年1回の接種が始まる。国は費用の一部を助成し、自己負担を7千円程度にするという。それでも費用を理由に接種をためらう人は多いだろう。公費負担のあり方についても検討を深めるべきだ。
元稿:熊本日日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年05月08日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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