《社説①・10.20》:自民党本部に火炎瓶 許せぬ民主政治への暴力
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・10.20》:自民党本部に火炎瓶 許せぬ民主政治への暴力
衆院選のさなかに、政党の中枢が襲われた。民主政治の根幹を揺るがすような暴力は許されない。
東京・永田町の自民党本部に火炎瓶が投げ込まれ、警備中の警察車両などが焼けた。
その後、投げ込んだ男性は、近くにある首相官邸の柵に車で突っ込んだ。警察官らに発煙筒のようなものなどを投げ、公務執行妨害容疑で現行犯逮捕された。一連の事件で、けが人はいなかった。
車の中には10個ほどのポリタンク、火炎瓶や発煙筒のようなものなどが積まれていた。
男性は調べに黙秘しているという。かつて原発再稼働に反対する活動に関わったとされる。国政選挙への出馬を考え、供託金に不満を抱いたこともあるという。
警視庁は捜査を尽くし、全容を解明する必要がある。
近年、選挙期間中に政治家が襲われる事件が続く。
2022年7月の参院選では、奈良市で演説をしていた安倍晋三元首相が銃撃され、死亡した。
昨年4月には、衆院補欠選挙の応援で和歌山市を訪れた岸田文雄前首相に向かって、爆発物が投げられた。
米国でも今年7月、大統領選に向けた屋外の集会で演説していたトランプ前大統領が銃撃され、負傷した。その後も襲撃未遂事件が起きている。
主義や意見の対立があっても、議論を重ねて物事を決めていくのが民主政治だ。その根幹をなすのが選挙である。言論を暴力で封じるような行為が横行すれば、民主主義の破壊につながる。
今回の事件に対し、石破茂首相や森山裕幹事長ら自民党幹部だけでなく、野党幹部からも抗議や非難の声が上がったのは当然だ。候補者や政党の選挙運動が萎縮することがあってはならない。
安倍氏や岸田氏の事件後、警察は要人警護や選挙活動の警備を強化してきた。警察庁は今回、改めて警戒警備の徹底を全国の警察に指示した。ただ、候補者の主張を有権者が直接聞く機会が過剰に制約されないよう、バランスを取る必要がある。
衆院選は投開票日まで1週間を残す。日本の政治を誰に託すべきか、国民が判断する機会が守られなければならない。
元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年10月20日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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