《社説②・12.13》:オスプレイの再開 まだ安全を軽視するのか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.13》:オスプレイの再開 まだ安全を軽視するのか
安全性に対する疑念は拭えない。
在日米軍が一時的に運用を停止していた輸送機オスプレイの飛行を再開した。
11月20日に米西部の米軍基地で発生した事故を受け、6日(米国時間)から96時間、運用を停止していた。昨年11月に鹿児島県・屋久島沖で米兵8人が死亡した墜落事故と、類似点が見つかったためである。
米空軍の報告書によると、屋久島沖の事故では、変速機の歯車が破断し、破片で別の歯車がすり減って、ローターに動力が伝わらなくなり墜落した。搭乗員は警報が複数回出たのに飛行を続けた。
今回は、離陸直後に同様の警報が出て動力を失ったものの、搭乗員が迅速に着陸させた。屋久島沖事故と同様の金属劣化が関与している可能性があるという。
米軍は「徹底的に機体を見直し再開した」と強調している。ただし、米軍は屋久島沖の事故で歯車が破断した理由を解明できていないままだ。
AP通信は8月、変速機の故障が過去5年間で60件報告されたと報道。うち41件に破損の兆候があったという。米海軍の司令官も6月、議会で安全性の懸念が解消されていないと認めている。
オスプレイは2007年に実戦配備されて以降、事故が続いている。近年では22年にノルウェーと米カリフォルニア州、23年にオーストラリアでそれぞれ墜落した。
米軍によると、オスプレイの事故による死者数の合計は64人、けが人は93人に上っている。それでも米軍は、ヘリコプターと飛行機の特徴を兼ね備え、滑走路がなくても部隊や物資を運べるオスプレイを重視し、中東やインド太平洋地域に多数配備している。
日本では米軍が普天間飛行場(沖縄県)などで運用し、11月には山口県岩国基地にも在日米海軍が4機程度を配備した。事故の根本原因を解明できないまま、飛行を続けるのは安全性の軽視である。看過できない。
沖縄県の玉城デニー知事は「構造欠陥が指摘されている機材だ。退役させるしかないと思う」と述べている。当然の見解だろう。
陸上自衛隊も千葉県の木更津駐屯地に17機を暫定配備しており、建設中の佐賀駐屯地に移駐する予定になっている。
自衛隊は今回の米軍の運用停止を受け、飛行を見合わせている。原因の徹底究明を米軍に要請し、結果の詳細な報告を求めるべきだ。米軍の再開に合わせた安易な追従は認められない。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月13日 09:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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