《社説②・11.28》:レバノン停戦合意 中東の戦禍止める一歩に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・11.28》:レバノン停戦合意 中東の戦禍止める一歩に
中東の戦火の収束につなげなければならない。レバノンでの停戦合意を確実に履行させるとともに、ガザの停戦に国際社会は全力を挙げる必要がある。
イスラエルと隣国レバノンの民兵組織ヒズボラの戦闘をめぐり、両政府が停戦に合意した。しかし、実際に停戦を維持できるかは、予断を許さない状況にある。
イスラエルのネタニヤフ首相は依然、強硬だ。ヒズボラが合意を破ろうとすれば軍事行動をためらわないと警告した。ガザへの攻撃を続けることも言明し、ヒズボラとの停戦で武器・弾薬や兵員に余裕ができる、と述べている。
停戦合意は、イスラエルの後ろ盾である米国と、レバノンの旧宗主国のフランスが仲介した。発効から60日の期間内に、イスラエル軍とヒズボラの双方がレバノン南部から撤退し、レバノン軍と国連レバノン暫定軍(UNIFIL)が停戦の監視にあたる。
2006年にイスラエルとヒズボラの大規模な戦闘が起きた際、停戦を取り決めた国連安全保障理事会の決議に沿った内容である。再びなおざりにされることがないよう、停戦監視の態勢を整え直さなくてはならない。
ヒズボラはガザのイスラム組織ハマスを支援し、昨年10月からイスラエルと交戦してきた。イスラエル軍が地上侵攻したレバノン側では、これまでに3800人余の死者が出ている。イスラエル側は100人以上が死亡した。
薄氷の停戦合意である。イスラエルがガザへの攻撃を止めなければ、いつ破綻するか分からない。米国のバイデン大統領は、ガザの停戦に向けて「新たな外交攻勢をかける」と表明した。エジプトやカタール、トルコと協力して交渉を強化するという。
その言葉は信頼に足るのか。先週の国連安保理で米国は、ガザの即時停戦を求める決議案に拒否権をまたも行使した。イスラエルに攻撃継続の許可を出すような振る舞いは、安保理の常任理事国として無責任に過ぎる。
米政府がなすべきは、イスラエルへの武器の供与を停止し、ガザの停戦を強く迫ることだ。国際社会の批判に背を向け、あくまでもイスラエルを擁護する姿勢を改めなければならない。
国際司法裁判所(ICJ)は、ジェノサイド(集団殺害)を防ぐあらゆる措置を取るよう、今年1月の段階で命じている。ジェノサイドの防止は、すべての国の責務だ。日本政府もそのための行動を起こす必要がある。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月28日 09:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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