《社説②・12.13》:水道水のPFAS検査 安心できる基準が必要だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.13》:水道水のPFAS検査 安心できる基準が必要だ
水道水の安全と安心を確保するには、リスクと向き合い、迅速に対処する姿勢が求められる。
有機フッ素化合物「PFAS」が水道水に含まれているかどうかについて、環境省と国土交通省が全国3755の水道事業者による検査状況を初めて集計した。
検査対象は、PFASのうち水や油をはじき熱に強い性質を持つ2種類の化学物質だ。発がん性などが指摘され、すでに製造や輸入が原則禁止されている。
食品の包装紙、焦げ付きにくいフライパン、燃料火災向けの泡消火剤などに利用されてきた。各地の米軍基地や工場周辺の河川などから検出報告が相次いでいる。
国は2020年、安全性の目安として、水道水1リットル当たり50ナノグラム以下とする「暫定目標値」を設定した。
20年度以降に目標値を超えたのは1都2府9県の計14事業者だった。今年度は9月末時点で超過は確認されず、環境省の担当者は「水源の変更などが奏功したのではないか」と説明している。
PFASが問題なのは、「永遠の化学物質」と呼ばれるほど分解されにくいためだ。過去の使用分が環境中に残ってしまう。
だが、水銀やヒ素とは異なり、水質基準の対象項目ではなく、検査は任意だ。約4割の事業者は「汚染されているとは考えにくい」「費用負担が重い」などを理由に検査していない。
今年度は目標値を下回っているものの、検出された事業者も333あった。汚染源の大半は特定されず、対策は難しい。今後、新たに検出されたり、目標値を超えたりする可能性もある。
政府は水質基準に格上げし、検査などを義務づけることを検討している。科学的知見に基づき、実効性のある基準となるよう調査研究を強化することも欠かせない。
健康や環境に重大な影響を及ぼす恐れがある場合、因果関係が十分証明されていなくても規制措置を取る「予防原則」が対策の基本である。
日本では高度成長期に公害対策が遅れ、多くの犠牲者を出した。今も健康被害に苦しむ人がいる。その二の舞いとならないよう、政府は検査や除去技術などで事業者を支援しなければならない。
元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月13日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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