【社説②・12.02】:マスク氏のX 暴論放置が利用減招く
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.02】:マスク氏のX 暴論放置が利用減招く
SNS大手の「X」(旧ツイッター)から、欧米を中心に利用者や広告主が離れ始めている。誰もが自由に情報発信し安心して交流できる「プラットフォーム(共用基盤)」の一つとされてきたが、2022年の実業家マスク氏による買収後は暴論が放置され、健全性が疑われている。
マスク氏と米国のトランプ次期大統領との蜜月関係から政治利用の懸念も強まり、もはや社会的な共通基盤とは言えない状況だ。広告主や利用者離れもあり、健全な言論空間に戻るには抜本的な対策を講じる必要がある。
米調査会社センサータワーによると、世界の1日当たりの利用者数は24年2月時点で平均1億7400万人と、前年同期から15%減った。マスク氏が買収してから減少傾向が続き、米国では22年11月と比べて23%減ったという。旧ツイッター創業者が立ち上げた「ブルースカイ」などに流れている。
マスク氏は「言論の自由」を名目に投稿規制を緩和したため、虚偽情報や憎悪をあおる投稿が急増し、英国では移民排斥を求める暴動を招いた。日本でも兵庫県知事選で真偽不明の情報が飛び交い、中傷された県議が「家族を守る」として辞職に追い込まれた。
マスク氏はトランプ氏当選に向けて自らXで虚偽情報を拡散。新政権では閣僚級ポストに就く見通しだ。権力と一体化したXは「トランプ氏や極右勢力のプロパガンダ機関としての機能が加速する」(ニューヨーク大学のベンギアット教授)との不安も広がる。
極右台頭を強く警戒するドイツではプロサッカークラブ・ザンクトパウリが「マスク氏がXをヘイトマシンに変えた」と利用停止。同ブレーメンも米大統領選を挙げて「SNSを政治的な武器として利用している」としてXから撤退した。ベルリン国際映画祭のアカウントは、来年からはほかのSNSで情報発信すると発表した。
英国のガーディアンなど欧州の主要メディアも相次いで利用を停止し、米公共ラジオNPRは23年に撤退している。
フェイスブックなど大手SNSは言論空間が「無法地帯」と化すことを避けるため、投稿に関する自主規制を改善してきた。Xはその流れに逆行しており、利用者離れに加え、ブランド価値の毀損(きそん)を恐れる企業が広告出稿を見合わせるのも当然の成り行きである。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月02日 07:09:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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