《社説②・12.01》:デフリンピックまで1年 聴覚障害理解する契機に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.01》:デフリンピックまで1年 聴覚障害理解する契機に
聴覚障害への理解を深め、耳の不自由な人が暮らしやすい社会を作る契機とすべきだ。
聴覚障害者の国際スポーツ大会「デフリンピック」の東京開催まで1年を切った。1世紀の歴史を持つが、日本で開かれるのは初めてだ。
大会名称は、耳が聞こえないことを意味する英語「デフ」とオリンピックを組み合わせたものだ。国際ろう者スポーツ委員会が主催し、夏季、冬季大会がそれぞれ原則4年に1度開催されている。
東京大会では、福島、静岡両県の会場も使いながら夏季の19競技を実施する。70~80カ国・地域から選手や役員を合わせて、約6000人が参加する。
第1回大会は1924年にパリで開かれた。第二次世界大戦で負傷した兵士のリハビリを起源とするパラリンピックよりも長い伝統を誇る。
聴覚障害者は音声によるコミュニケーションが難しく、手話通訳などの助けを必要とすることも多い。このため、身体、視覚、知的障害を対象とするパラリンピックには参加してこなかった。
競技のルールは健常者のスポーツとほぼ同じだが、障害に合わせた工夫も取り入れている。
陸上や競泳のスタート時には、電子音ピストルと連動して発光するランプが用いられる。柔道の審判は選手の肩をたたいて「始め」や「待て」を知らせる。サッカーではレフェリー全員が旗を持ち、多方向から選手に判定を伝える。
3年前の東京五輪・パラリンピックはコロナ下で大半が無観客となり、大会を間近に観戦できる機会が失われた。
今回は現場で競技を観戦でき、3000人のボランティアが大会を支える。子どもが手話などに関心を持つ機会にもなるだろう。
だが、認知度はまだ低い。日本財団パラスポーツサポートセンターの調査によると、国内では、パラリンピックを「知っている」「見たり聞いたりしたことがある」と答えた人が97・9%に上ったが、デフリンピックは16・3%にとどまった。
障害の種類や有無に関わらず、誰もがスポーツに親しめる。そうした共生社会の実現に向けて、大会への機運を高めていきたい。
元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月01日 02:03:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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