アフガン・イラク・北朝鮮と日本

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安倍や靖国神社の思想は「闇金ウシジマくん」と同じ

2007年05月21日 22時26分46秒 | 戦争・改憲よりも平和・人権
   

 「闇金ウシジマくん」という漫画があります(真鍋昌平・作、小学館ビッグコミックス・刊)。闇金融社長の若者ウシジマくんが主人公の漫画で、「奴隷くん」と呼ばれる多重債務者たちから彼が如何に金をむしり取るか、そして「奴隷くん」が如何に「壊れていく」か、というのが描かれています。

 私も、ひょうんな事からこの漫画の存在を知って、全8巻まで出ているこの漫画の第1巻だけ通読したのですが、やはり聞きしに勝る「キツ~イ」内容でした。
 この手の金融モノを扱ったピカレスク・ロマン(悪漢小説風)漫画には、今までにも「ミナミの帝王」や「ナニワ金融道」といった有名どころが既に世に出ていますが、こちらはまだ救いようがあります。これらの漫画は、闇金・万田銀次郎や街金・帝国金融の社員たちなどのピカレスク(悪漢)が、彼らは彼らなりの論理で、より大きな悪事を暴き、時には弱きも助け、というストーリーになっていて、その中で資本主義経済の実態も窺い知る事が出来るという、生きた社会科教材や消費者教育としても使える内容になっているからです。
 それに対して「闇金ウシジマくん」の方はと言うと、正直言って、「キツ~イ」の一言以外、もう返す言葉が無いです。パチンコジャンキーの主婦を風俗業に売り飛ばし、ショッピング依存症のOLをシャブ漬けの廃人に追い込み、ライバルや詐欺師相手にタイマンを張る。そうして、人間が壊れていく姿をこれでもかこれでもかと見せつける中で、自分たちがのし上がっていく。そういうストーリーなのですから。

 その漫画「闇金ウシジマくん」第1巻の中で、目に留まった箇所があります。それは、第1話「奴隷くん」中の、闇金カウカウ・ファイナンス社長のウシジマが新入社員の高田にヤキを入れる所です。ウシジマがパチンコジャンキーの主婦・加山を風俗業に売り飛ばした場面を目の当たりにした高田が、「社長は罪悪感とか感じないんスか?」とウシジマ社長にもらしたのに対して、ウシジマが次の様な言葉を高田に返すくだりです。「小国は大国に支配され、労働者は資本家に搾取される。この世の中に奪(と)られるモノと奪るモノしかいないなら、俺は奪る方を選ぶ!」と。

 私これを見て、ふと思いました。靖国神社・遊就館の展示や特攻賛美映画「俺は君のためにこそ死ににいく」の根底に流れ、安倍や石原が絶賛して止まない、この靖国史観・靖国思想を、一言で言い表した言葉が正しくこれではないのか、と。

 私が前号記事で取り上げた靖国DVDの中にも、以下の様なくだりが出てきます。

----(引用開始)-----
日露戦争以降、欧米列強は自国の利益のみを考えたブロック経済政策を推し進めた。これは、自国と植民地の間では関税を優遇し、それ以外の国との貿易に対しては、非常に高い関税を課すというものであった。・・・(中略)・・・ アメリカは、アジアにおける主導権を確立しつつある日本に脅威を感じて仮想敵国と見なし、様々な戦略を練っていた。日本を抑え込むために、中国・イギリス・オランダと協同し、石油やゴム、鉄鉱の輸出を禁止し、あらゆる資源の貿易を取り止めるという経済封鎖を行なった。・・・(中略)・・・ 当時のアメリカの国務長官コーデル.ハルは、《ハル・ノート》と呼ばれる最後通牒を付き突けて来た。これは、日清、日露戦争の勝利により獲得してきた満州や中国大陸における一切の権利を放棄し、軍隊を引き上げろ、というもので、とても対等外交などと言えるものではなかった。日本は、亡国の道を歩むか、戦争に突入するか―二つに一つの決断を迫られ、アメリカをはじめとする連合国軍との戦争という苦渋の決断を強いられた。
----(引用終了)-----

 上記の理屈は、端的に言えば、「日本は、当時の朝鮮や中国とは違って、獲る方の大国になる事が出来た。折角獲った朝鮮・台湾や満州を、再び誰かに奪われてなるものか」という事です。 前述の闇金ウシジマ社長の「俺は獲る方を選ぶ!」と同じです。だから当時の国際社会とも摩擦を起こして、ABCD包囲網を引かれて経済封鎖の憂き目にあった挙句に、満州事変や日華事変を引き起こして、自ら戦争の泥沼にはまりこんで行っただけなのです。安倍首相や靖国神社が主張する「大東亜(太平洋)戦争は白人の植民地支配からアジアを解放するための戦争だった」などという屁理屈は、戦争が本格化してから後で取り繕ったものなのです。何故なら、当時の日本が本当にアジア解放を考えていたのなら、日本から率先して自国植民地の朝鮮・台湾独立に踏み出していた筈ですが、一切そんな事はしませんでしたから。

 靖国史観派がよく言う「当時は植民地独立など画餅にしか過ぎなかった、まずは日本が中心になってアジアの近代化に勤めなければならなかったのだ」という理屈も、嘘っぱちです。19世紀の幕末・明治維新や日清・日露戦争の頃なら、そういう事もあったでしょう。それから第一次大戦を経て1930年代ともなると、19世紀とは様相が根本的に異なり、当時の国際社会は現代の世界に徐々に近づいていたのです。
 ロシアとドイツの革命で、社会主義国ソ連が誕生し、帝政ドイツも崩壊し、欧米を中心にして、民主主義や人権の思想が広まります(8時間労働制、社会保障、男女平等、普通選挙など)。中国・朝鮮・台湾を始め、アジア・中東・中南米でも民族解放運動が本格的に広がります(中国革命、朝鮮・インドの独立運動、トルコ・イラン・エジプトの民族運動など)。国際連盟が出来て不戦条約も結ばれます(当時の日本も批准)。だから20世紀が別名「民衆の世紀」と呼ばれるのです。
 そんな中で日本だけが、「民衆の世紀」になっても依然として主権在君の絶対主義的天皇制のまま、「奪るか奪られるか」といった段階からは徐々に抜け出しつつあった時代の趨勢も読めずに、明治初期の征韓論そのままの旧態依然とした「奪る」やり方でアジアを支配し続けようとしたのが、そもそもの間違いなのです。

 そりゃあ、19世紀とは根本的に環境が異なるとは言っても、1930年代当時も依然として帝国主義が猛威を揮っていた事には変わりありませんでした。しかし、日本以外の米英帝国主義の方はというと、アジアその他の民族解放運動や宗主国本国での大衆運動の前進(8時間労働制や普通選挙制の要求など)にも一定向き合うようになっていたのです。そんな中で、ひとり日本だけが依然として、本土では旧態依然たる弾圧政治(不敬罪や治安維持法による)を、植民地・周辺国では過酷な植民地支配や戦争政策を続け(対華21ヵ条要求、シベリア出兵、満州事変など)、次第に諸外国とも軋轢を起こすようになり、徐々に国際的に孤立するようになっていったのです。

 これを先の「ウシジマくん」の喩えで言うと、「かつての闇金アングロサクソン(米英)は、次第に渋々ながらも武富士・アコム・プロミスなどの業界大手に(本質的には帝国主義に変わりないが上辺だけは植民地独立や民衆の権利拡充を認める方向に)変わりつつあったのに、日本だけが依然として旧態依然たる闇金(侵略戦争・弾圧政治)のままだったので、次第に債務者(日本・アジアの民衆)からも業界大手(米英や国際連盟)からも疎まれ孤立して一戦交えた果てに敗北した、という事です。それを戦後60年も経ってから、当時のヤクザさながらの自らの姿は棚に上げて、その時の業界大手(米英)に対して「お前らも裏に回れば俺と同じ様な事をしていたじゃないか」と居直っているのが、安倍政権の靖国思想なのです。
 しかも、今は1930年代当時から更に進んで、灰色金利の見直し(イラク反戦運動や戦争違法化の取組み)にまで至り、業界大手(米英)も淘汰されようとしている時代なのに、それを未だに「以前のヤクザ紛いの取立て(侵略戦争・弾圧政治)にも理由があった、それを今の業界大手(米英・国連・国際社会)の理屈で律するなどケシカラン」と言っているレベルなのですから、もうお話にもなりません。

 安倍首相や靖国派は、そもそも「民衆の権利」とか「男女平等」とか、そういう人権・民主主義の発想そのものが嫌いなのです。世の中はすべからく男尊女卑・弱肉強食・お上第一・序列最優先で、幼い時は親に従い老いては子に従う、その頂点に天皇がいて、臣民は天皇とその現代の守護神であるアメリカ様・財界様の言いなりになって、24時間休み無く薄給・ただ働きでこきつかわれ、いざとなればお国の為に海外のどこにでも行って戦って死んでくる。それが彼らの言う理想の「美しい国、希望の国」なのです。
 安倍首相はいつぞや、NATOの理事会にまで出掛けていって、「日本と欧米は同じ民主主義の価値観を共有する国だ」と言ったようですが、何をか況やです。今日び、「権利、民衆」嫌いの安倍・靖国派の前述の価値観と同じモノを共有する国と言えばもう、北朝鮮・中国・ロシア・ミャンマーその他の封建的な人権弾圧国ぐらいしかありません。また、ブッシュ政権下の米国も、民主主義の表向きの看板とは裏腹に、実態にはこれに近いモノがあります(例:愛国者法の下での盗聴・スパイ活動)。だから近親憎悪(+過去の戦争の仕返し)で、「特定アジア」や、最近の一部には米国にも憎しみを募らせるのでしょう。

 その安倍・靖国派の尻馬に乗せられて、同じ様に「中国・北朝鮮・韓国をやっつけろー」と言っている人たちに私が言いたいのは、次の事です。安倍・靖国派が中国その他の「特定アジア」に向けている刃は、同時に自分たちの自由や平等や平和や暮らしや権利にも向けられている事に、何故気付かないのか。これからの日本を、「闇金ウシジマ」がのさばりかえるような国にしたいのか。安倍・靖国派や北朝鮮と同じ「闇金ウシジマ」の論理にのっかっている限り、仮に北朝鮮をやっつけた所で、日本や世界が「第二の北朝鮮」になるだけにしかならない事に、何故気が付かないのか。
コメント (4)
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