前回記事で近況報告した夜のダブルワークですが、やっぱり辞める事にしました。
その第一の理由は、やはり身体が持たない事です。今働いているスーパー物流センターでも、以前、同じようなコンベヤーでの仕分け業務に従事していた事がありましたが、荷物の重さや流れ方が全然違います。夜の仕事は宅急便の荷物の仕分けなので、食料品だけでなく家電製品やゴルフバッグ、キャリーケースや、果てはタイヤや灯油缶みたいな物まで流れて来ます。流れ方も、大小・軽重それぞれの荷物がごちゃ混ぜでひっきりなしに流れてくるので、息つく暇もありません。以前働いていた時は、要領もある程度掴んでいたので、息継ぎも出来ましたが、1日4時間、週3日の勤務シフトでは、要領も掴みようがありません。これでは身体がもちません。
しかも、私は毎週日・月・火曜日の週3日勤務だったのですが、日曜日は人手不足で、2月11日、18日と2回も私一人で仕分けしなければなりませんでした。通常4人で仕分けする所をたった1人で、ですよ。仕分けレーンは対面式になっていて(左上写真)、反対側のボックス(台車)にも荷物を仕分けなければなりませんが、手前側のボックスに仕分けるだけでも精一杯なのに、反対側に回り込んでまで仕分けする余裕なぞあるはずがありません。社員が時々見回りにきてフォローに入ってくれたので、何とか制限時間内に仕分けを終える事が出来ましたが、この酷使はやはり身体に堪えました。
2月中旬のこの時期は、中国では春節、ベトナムではテトと呼ばれる旧正月の休みに当たります。その関係で、ベトナム人バイトの欠勤が集中して、一時的に人手不足になったのかも知れません。しかし、旧正月の時期に欠勤者が増える事は、今までの経験から前もって分かっていたはずです。普通に対策を立てていたら、たとえ前半11日には人手確保が間に合わなかったとしても、後半の18日までには間に合うはずです。それが2回とも1人作業を強いられる破目になったのは何故なのか?元々、日曜日の夜は荷物の量が1週間のうちで一番少ないのです。人手さえ確保できれば難なく仕事を終える事が出来たのに、何故それが出来なかったのか?人件費をケチって、無理すれば1人でもやれると踏んでいたので、何も対策を取らなかったのではないか?これは、私の思い過ごしかも知れませんが、どうもそんな気がしてなりません。
それで遂に、2月20日(火)昼の仕事中に、右腰に軽い違和感を感じたので、夜の仕事の方は大事を取って休ませてもらう事にしました。そして、翌21日(水)の公休日に整骨院に行って診てもらった所、やはり右の腰が使い痛み状態になっていました。これが、夜の仕事を辞めようと思った一番大きな理由です。
ただ、退職の理由はそれだけではありません。第二の理由は、宅急便センターの人使いの粗さです。この宅急便会社は、誰もが知っている大手企業です。派手に求人広告を打ち、見せられた研修ビデオの内容も充実したものでした。ところが、いざ現場に配属されると、ボックス(荷物を積む台車、昼の勤務先ではカゴ車と呼んでいる)の組み立て方も教えてもらわないまま、いきなり作業に就かされました。そして、右も左も分からないのに(実際2日目までトイレの場所も分からなかった)、いきなり「何番(レーン)に行け!」というばかりで、案内もしてくれませんでした。
しかも、作業場はゴミが散らかり放題。掃除道具はおろかゴミ箱さえ置かれていませんでした。そのくせ、仕分け終了時には「掃除しろ!」と拡声器で怒鳴り散らすばかり。ホーキもチリ取りもゴミ箱も無いのに、一体どうやって掃除しろと言うのか?案の定、他のバイトも誰も指示に従わず、ただ突っ立ってベチャベチャ喋るばかり。これが、あの有名な大手の宅急便会社の姿かと、心底から呆れました。
第三の退職理由は、最初は感心したベトナム人バイトの働きぶりも、実態が分かるにつれて、次第に大した事ないと思うようになりました。朝礼が始まってからも、まだゾロゾロと遅刻してやってくるベトナム人が大勢いました。ボックスへの荷物の積み方も、ドライバーからやかましく言われるからか、「ここまで積もう!」の垂れ幕が指し示す基準線まではキチンと積み、ボックスからはみ出ない様に心がけるはするものの、積み方はもうムチャクチャです。「天地無用(上下逆積み禁止)」も「割れ物注意」も関係ありません。実際、そんな事気にしていたらコンベヤーの荷物の流れに付いて行けません。私は、積み方やベトナム人教育のノウハウを昼の仕事にも活かせたらと思って、この夜の宅急便センターの仕事に応募したのですが、これでは何の参考にもなりません。ただシンドイだけです。
ダブルワーカー(掛け持ちバイト)で回している職場の実態が、これでよく分かりました。何故ダブルワーカーで回そうとするのか?ひとえに人件費削減が目的です。だから、会社が社会保険を負担しなくても良い1日4~5時間勤務のシフトで回そうとするのでしょう。慢性的な人手不足であるにも関わらず、「2ヶ月働いたら1ヶ月は休まなくてはならない」という変なルールにしているのも(右上写真)、5年以上勤務しているバイトが「有期雇用から無期雇用に切り替えてくれ」と言って来たら認めなければならないので(労働契約法第18条)、それを避ける為です。そんな「使い捨て」のダブルワーカー職場には、労働者も腰かけ気分の人間しかやって来ません。誰しも副業よりも本業の勤務先の都合を優先します。本業の方が収入も多いし待遇もマシなので当然です。そんな人間しかやって来ないので、使用者も余計に人使いが粗くなるのでしょう。それで余計に人手不足に陥り、更にダブルワークで回そうとする。外国人に頼ろうとする。外国(ベトナム)人も、留学生とは名ばかりで、実際は出稼ぎ目的の人間がほどんどです。
このダブルワーカー職場の実態については、ある程度予想はしていましたが、正直ここまで酷いとは思いませんでした。私の昼の勤務先も、余り偉そうな事は言えませんが、さすがにここまで酷くはありません。でも、ダブルワーカーや外国人労働にばかり頼っていたのでは、昼の勤務先も早晩こうなる事は目に見えています。人手不足→派遣や外国人、ダブルワーカーで埋め合わせ→これらの人達は自分の都合最優先。誰もブラック企業の都合なぞ考えない→人使いも仕事の質も低く、ただシンドイだけの職場。欠勤者続出で更に人手不足に陥る悪循環。
それで、もう夜の仕事を辞めようかと思っていた中で、22日(木)に、昼の職場で契約社員の契約更改面談がありました。そこで私は所長から、ダブルワークの事を聞かれたので、「もう仕事はキツイし人使いも粗いので辞めようかと思っています。ここも人手不足なので、その分ここで同じ時間だけ残業させてくれれば助かるのですが…」とダメ元で聞いてみたら、もう所長は大喜び。「是非そうしてくれ!」という事で、後はもうトントン拍子に話が進みました。その日のうちに、夜間勤務の責任者にも話が伝わっていました。
ただ、ここでも宅急便センターみたいにこき使われては堪らないので、面談で私は所長に次の3つの条件を提示しました。
①どんなに忙しくても19時には退勤させて欲しい。
②17時から17時半まで、30分間の食事休憩を入れて欲しい。
③残業はあくまで個人の自由意思によるものであり、体調がすぐれない時はいつでも拒否できるようにして欲しい。
①は当然の要求でしょう。翌日も早朝7時から勤務開始なのですから。19時退勤でも拘束時間は12時間にもなります。②は、単に「腹が減っては戦(いくさ)は出来ない」というだけの理由で提示した訳ではありません。1R賃貸住まいの私にとって、安価で野菜も摂取できる社内食堂は、今や自分の命綱です。その社内食堂が閉まる17時半までの間に、そこで夕食を取れるようにして欲しいという要求です。勿論、この休憩時間も、私は非正規雇用の契約社員なので、昼休みと同様に無給です。③も当然の要求でしょう。労働基準法にも「残業は強制できない」とありますから。
①については、同時に会社の方からも「残業時間は月40時間以内に抑えて欲しい」との要請がありましたので、正に「願ったり叶(かな)ったり」です。元々、私は、月4万3千円の家賃支払いの足しにダブルワークを始めたのであって、それ以上に無理してまでガツガツ稼ぐ気はありません。一応、私の試算では、月22日ある出勤日のうち、10日(週2日)は17時まで1時間残業、残る12日(週3日)に19時まで2時間半残業すれば(夕食休憩の30分は除く)、1時間×10日+2.5時間×12日=丁度40時間となります。私は毎週水曜日と日曜日が公休なので、それ以外の出勤日の中で、一番暇な火曜日と整骨院に通わなければならない金曜日は1時間だけ残業し、後の曜日は全て2時間半残業しようと考えています。(下記参照。但し月の日数によって残業の合計時間は多少前後します)
正に「渡りに船」です。この面談の日の翌日に、早速、夜のバイト先に退職したい旨の電話を入れました。この電話でも、また以前のコールセンターの時のように、「ああ、そうか。アンタの勝手で辞めるんでしょ!」みたいな素っ気ない対応されると思っていましたが、意外とそうではありませんでした。「そこを何とか…。どうしても無理と言う事であれば仕方ありませんが、体調が回復したら、またいつでもウチに来て下さい」と、かなり引き留められました。よっぽど人手が不足しているのでしょう。
これでようやく、公休日を丸一日ゆっくり休む事ができるようになりました。今までだったら、せっかくの日曜日も、夜には出勤しないといけないので、朝から気分が憂鬱(ゆううつ)でした。また、今度は夜も同じ職場で、仕事内容も大差ないので、今までとは違い勝手も分かるし、もし分からない事があっても、近くには知っている社員や先輩もいるので、いつでも聞けます。そして、早く帰れる事で睡眠時間が確保できるようになりました。今まで夜22時まで仕事でしたから、睡眠時間は5時間位しかありませんでした。
その一方で、デメリットもあります。元々、私がダブルワークしようと思ったのは、今の職場では、いつまで働けるか不安だったからです。昼の職場も、今でこそ人手不足で、猫の手も借りたいような状況ですが、ホンの数年前までは、「このままでは仕事が無くなる」と、リストラの噂が絶えませんでしたから。そこで、今よりもはるかに高時給で、肉体を酷使しなくても済む大手のコールセンターで、ダブルワークをするようになったのです。ところが、そこは、ブース入室の暗証番号が変わっても連絡もくれないような冷淡な会社でした。そして、次にダブルワークを始めた宅急便センターも、今まで書いた通りです。今の職場も、いつまた状況が変わるか分かりません。
それに加え、給与二重支給の恩恵も受ける事が出来なくなりました。昼と夜の勤務先で給与の締め日や支給日が異なるからこそ、繋ぎの生活資金稼ぎに、ダブルワークを始めたのに。しかし、その事で逆に、勤務先が以前のように一本化された事で、確定申告の手間も省けるようになるので、これはまあ一長一短あるでしょう。
ところで、昼にしろ夜にしろ、今の勤務先が、何故これほどまでに人手不足に陥るようになったと思いますか?ホンの数年前まで、「仕事がいつ無くなるか」ヤキモキしていたのに。アベノミクスによる景気回復のおかげでしょうか?いいえ、違います。日本の生産年齢人口は、実は1995年頃を境に、急速に減少の一途をたどるようになりました。この少子・高齢化が、人手不足の最大の原因です。では、この少子・高齢化は先進国の宿命なのでしょうか?それも違います。フランスでは出生率回復で逆に人口増加に転じています。出生率もGDP(国内総生産)も実質賃金も低下しているのは、先進国の中でも日本だけです。保育所も作ろうとせず、正社員をどんどん非正規雇用に置き換え、結婚も出来ない低賃金、奨学金が無ければ高校や大学にも進学できない中で、どうやって子育てしろと言うのか。
それに対して、安倍政権は、今頃になって「生産性革命による効率アップで、この少子・高齢化の国難を乗り切って行かなくてはならない」なぞと言い出していますが、アホかと思いますね。自分達で少子・高齢化の原因を作っておいて、何が「国難」か、アホンダラ!今や、安倍政権の存在そのものが最大の「国難」であり「癌(がん)」です。年金支給年齢を繰り下げて老人を死ぬまで働かそうとしたり、低賃金の外国人労働に頼ったり、AI(人気知能)で機械化を図るよりも、まず、この最大の「癌」を摘出する方が先でしょう。
それどころか、今や安倍政権は、正当な残業代の支給まで無くそうと画策しています。それが、いわゆる「働き方改革」の中で議論されている「裁量労働制拡大」問題です。ワタミや電通の過労死事件をきっかけに、「長時間労働を無くそう、残業を減らそう」として始まった議論が、いつしか「残業代削減」の話にすり替えられ、「今までの8時間労働制から裁量労働制に変えれば、仕事の能率もアップし、早く帰れるようになるだろう」と、安倍のボンクラが言い出したのです。
アホか。「残業(労働時間)削減」と「残業代(人件費)削減」は、本来全く違う次元の話です。後者は単なるカネの話ですが、前者は労働者の命に直結する問題です。それが何故、安倍の頭の中ではイコールで結びつくのか?「電通で過労死されられた女性社員の高橋まつりさんは、残業代欲しさに長時間労働していた」と言いたいのか?そう考えない限り、こんな発想にはなりません。
安倍は、低所得層のエンゲル係数上昇についても、「貧乏人も食事に金をかける事が出来るようになった」と、血もカケラもない事を平気で言える人物なので(1月31日参院予算委員会での答弁)、案外、本気でそう思っているのかも知れません。今までなら、いくら自民党でも、こんなボンクラが総理になる事はありませんでした。でも、今は、安倍のお友達が国有地をタダ同然で払い下げられたり、国税庁長官に抜擢(ばってき)されたり、レイプをもみ消されたりできる時代です。閣僚の中で、「裸の王様」を諫(いさ)める人は誰もいなくなってしまいました。
そもそも「裁量労働制」という言葉自体がマヤカシです。経営権や人事権もない労働者に、一体どんな裁量があると言うのか?休憩時間をずらしたり休日を変更する位の事は、今までもずっとやって来ました。わざわざ法律を変えなければ出来ないものではありません。そんな無意味な法改正を何故行うのか?「自分達の裁量で、6時間で仕事を終える事が出来ても、8時間分の給料を払うよ」と騙(だま)して、「16時間分の仕事を押し付けても8時間分の給料しか払わない」という形にしたいからです。
だから、「1日の残業が4時間半なのに1ヶ月の残業は0時間」とか「1日の残業が45時間(!)なのに1ヶ月の残業は13時間24分」なんてデタラメなデータで、形だけの議論を財界主導で行って、労働者側の反対を押し切って、審議会の答申を出したのです(上記写真参照)。そして、そんなデタラメなデータが、何十個もある大きな段ボール箱に入って倉庫の地下室に保管されていたのに、ろくに調べもせず「記録は破棄した」でもみ消される所だったのです(下記写真参照)。そんな超デタラメな「働き方改革」関連法案が、今度の国会で、ろくに議論もされずに、与党による強行採決で通されようとしています。
「裁量労働制」という言葉の響きから、株のディーラーやプロ野球選手のような働き方を連想する人もいるかも知れません。私の職場なら、競馬騎手を連想する人が多いかも。確かに、この人たちの給与体系は、一種の年俸給や出来高制になっています。しかし、それはあくまで特殊な事例です。プロのスポーツ選手は、希少価値だからこそ存在価値があるのです。それを普通のサラリーマンにまで適用するのは間違いです。ところが、安倍は、今までのような年収制限も取り払い、ゆくゆくは非正規雇用や最低賃金で働いているような人にまで、裁量労働制を適用しようとしているのです。現に、経団連会長の榊原は、「将来は年収400万円以上の労働者全員に裁量労働制を適用しようと考えている」と公言しています。
ピョンチャン・オリンピック一色報道の裏で、実はこんな恐るべき事態が進行しているのです。これは私たち非正規労働者にとっても、決して他人事ではありません。私は今まで残業が認められた話を書いて来ましたが、生活できるだけのまともな賃金が支払われていたら、わざわざ残業する必要もないのです。誰が好き好んで残業やダブルワークをしたいと思うのか。それを、まるで「お前らが残業代欲しさに、わざと長時間労働に甘んじている」みたいに捉える冷血漢の安倍晋三を、私は絶対に許しはしない。