気が付けばもう11月27日。このままでは今年は紅葉も見ずに終わってしまうと思い、公休日の当日に急きょ兵庫県の武庫川渓谷に行って来ました。ここは武庫川に沿って昔のJR福知山線の廃線跡がハイキングコースに指定されています。武田尾温泉も近くにあります。紅葉・渓谷美・鉄道・温泉と見所満載の行楽地です。行って正解でした。京阪神の郊外に、まだこんな秘境感漂う深山幽谷の地があるとは思いませんでした。その一方で、単なる思い付きで行ける所ではない事も同時に思い知らされました。次からはそれなりの装備で行かなければなりません。
武庫川渓谷の最寄駅はJR福知山線の生瀬・西宮名塩・武田尾の3駅です。どの駅からもスタート出来ますが、私のお勧めは西宮名塩です。西宮名塩の駅前にはスーパーの阪急オアシスがあるので、ランチや弁当はそこで調達出来ます。私が駅に着いた時は丁度お昼時だったので、オアシスのイートインコーナーでランチを済ます事が出来ました。
それに対し、生瀬の駅前には小さなコンビニがあるだけです。武田尾の駅前に至っては何もありません。もし武田尾駅からスタートする場合は、弁当は必ず持参しなければなりません。但し、一点気を付けておかなければならない事も。生瀬や武田尾の駅からだと目の前に武庫川が流れているので廃線跡のハイキングコースにたどり着くのも比較的簡単ですが、西宮名塩からだと離れているのでナビは必須です。西宮名塩の駅には案内チラシの類は一切置いていません。駅員に聞けば、ひょっとしたら道順教えてくれるかも知れませんが。私はナビで調べました。
駅前ロータリーの阪急オアシスの横を、武庫川支流の名塩川に沿ってひたすら下ります。川の左側には新興住宅街が広がりますが、川はもう深山幽谷の風景そのもの。そのコントラストの対比にまず驚かされます。しかも、その新興住宅地の傾斜の急な事。これでは災害で土砂崩れの恐怖と隣り合わせです。日本で災害が多発するのは、この住宅政策の貧困も一因にあるのかも知れません。名塩道路の高架が見えて来る辺りまで来ると廃線跡に向かう道標が現れますので、その矢印の方向に進みます。但し、田舎道で分かりやすい目印もないので、ナビとの併用は必要です。幹線道路を通る時は自動車にも注意。
弁当以外に、もう一つ持参必須の物があります。それは懐中電灯です。廃線跡のハイキングコースでは長いトンネルを何ヶ所も潜ります。トンネル内には照明は一切ありません。スマホのか細い灯りではとても照明代わりにはなりません。私は他の方の懐中電灯の灯りを頼りに何とかトンネルを踏破出来ましたが、それでも無灯火のハイカーに危うくぶつかりそうになりました。足元にも大きな砂利や水たまりが何ヶ所もありました。靴も出来れば登山靴の方が良いでしょう。
この廃線跡のトンネルは夜は真っ暗闇になるので、地元では心霊スポットの噂もあります。実際ここではトンネル工事の際に大勢の労働者が落盤事故で亡くなっています。その労働者の大半は朝鮮半島から日本に連れて来られた在日朝鮮人の日雇い人夫です。ハイキングコースの武田尾寄りにある「越鳥南枝」の碑は、その朝鮮人日雇い人夫の慰霊碑です。
「越鳥南枝(えっちょうなんし)」の意味:中国南方の越の国(今のベトナム)から渡って来た鳥は、木の枝に止まる時も、故郷を思い出して南の方の枝に止まる。鳥ですら、そうやって自分の故郷を懐かしむのだ。→望郷の念を詠った中国の故事成語だそうです。
思えば、近鉄奈良線生駒トンネルも、旧トンネルは心霊スポットとして有名ですが、興味本位で訪ねるのではなく、慰霊の気持ちで、もう二度と戦争や植民地支配の負の歴史を繰り返さないようにしなければなりません。そうしてこそ初めて、トンネル工事で亡くなった朝鮮人労働者の霊も浮かばれるでしょう。
気を付けておかなければならない事は他にもあります。トイレも事前に必ず済ませておかなければなりません。駅を抜けるとゴール付近までトイレはありません。私は出発前に駅でトイレを済ませましたが、それでも山間部は市街地より冷えるので、ハイク途中でもよおし、トイレ確保に苦労しました。
そして近くにある武田尾温泉の営業時間も把握しておく必要があります。武田尾温泉には旅館が2軒ありますが、そのうち1軒は土日祝日しか日帰り入浴のサービスがありません。もう1軒は平日も日帰り入浴のサービスをやっていますが、営業は15時までです。私が着いた時は平日で15時も過ぎていたので、入浴は諦めざるを得ませんでした。しかし、その点さえクリアすれば、紅葉・渓谷美・鉄道・温泉と四拍子揃った絶景を堪能する事が出来ます。次は準備万端で臨みたいと思います。(グーグルマップのクチコミにも同じ文章を投稿しました。写真もそちらの方が多いです)