映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は2019年日本公開の中東レバノン出身の女性監督ナディーン・ラバキー監督による子供が両親を告訴に至る過程を描いた社会派ヒューマンドラマ「存在のない子供たち」です。
今回の作品は、2018年の第71回カンヌ国際映画祭で審査員賞とエキュメニカル審査員賞を受賞し、日本でもかなり評価の高い作品でした。劇場での鑑賞を逃したのでDVDの発売を心待ちにしながら、なかなかレンタルできない状態で現在に至ってます。
物語は、中東レバノンの貧困地域で戸籍もなく教育を受けられず路上で飲料を売る12歳の少年ゼインが、裁判所で両親を訴える場面からスタートします。ゼインは、妹が強制的に結婚させられたことで反発し家出をしていたのですが、そこで知り合ったエチオピア移民の女性の子供の面倒を見ることに。その後にある出来事をきっかけに事件を起こし留置されてしまいます。
12歳のゼインの犯行と両親への訴訟に至る過程を克明に描きながら、中東地域が抱える貧困問題を女性監督ならではの視点で抉り出していきます。そこには、性差別や宗教的慣習などが絡み、解決には困難を極めるものですが、彼女の勇気ある発信力に感銘を受けました。
主人公のゼインや貧困をあえぐ子供たちは、それぞれに役柄と同じ境遇を経験している素人たち。絶望的な境遇の中で、懸命に生きる子供たちの姿にはどこか躍動感があり、ゼインの覚めた眼の奥には、大切の人を守ろうと勇気に満ち満ちています。ゼインの行動は、明日の見えない子供たちに希望の灯を点火しているように感じました。
出生の証拠もない存在のない子供たち。子供たちの求めるものは、ただ一つ自分に与えられる愛だけが確かなものなのかもしれません。