私の本棚

※読書感想メイン

羆嵐/吉村昭

2021-02-18 | ルポルタージュ
[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

羆嵐 (新潮文庫 よー5-13 新潮文庫) [ 吉村 昭 ]
価格:605円(税込、送料無料) (2021/2/18時点)


 

余談ですが、北海道に住んでいるので、羆には2回ほど遭遇しています💦

羆が冬に活動をすれば、アナウンサーは「熊は冬の間は冬眠するはずなのに…」と言うのですが

友人や主人が言うには、冬眠ではないそうです

食料がなくなる冬の間、空腹を避けるために余計な動きをせず

穴の中に潜っているだけで、冬でも食料があれば活動するそうです。

本来羆は臆病で、人間の姿を見ると逃げるのですが、この事件の加害者と言われる羆は

お腹が満たされず、空腹を満たすために人間を襲いました

熊は一度食した物に執着すると言われ、最初に食した被害者が女性だったため、女性ばかりを狙いました。

なんでタイトルが『羆嵐』なのか、不思議に思ったのですが

仕留められた羆を村落に運び出される途中、強い風か吹いたので、銀次郎が「『羆嵐』だな」こうつぶやくのです。

羆を仕留めた時に、強い風が吹き荒れると言い伝えがあり、それを『羆嵐』と呼ぶので、タイトルにしたのですね。

今から20年くらい前、会社の後輩から人食い熊の事件の話を聞き

彼が持ってきた資料をみんなでコピーし、それを家に持ち帰り読んだことがありました。

資料には羆が人骨を噛み砕く音や、身重の女性が

「お腹の子どもだけは助けてくれ」と、言いながら息絶えていく姿がリアルに表現され

読んだときは背筋がゾッとしたのですが、この本には、そこまでのリアルさはありません。

ただ、最初の犠牲者が出てから、銀次郎の手によって、羆が仕留められるまでの

村落に住む男たち心の動きが、表現されています。

その銀次郎ですが、彼のタフガイにも感心させられます。

村に到着してすぐ、事件現場を見たいと周囲を呆れさせるのですが

村人が避難した場所から3キロほどある事件現場まで、区長案内の元、雪の中を歩くのです。

そこで目にした光景で、羆が避難場所を襲う危険があることを察し、翌日には、羆を仕留める事を決めます。

大の男たち200名以上が、手に負えなかった羆を、簡単に仕留めてしまう。

酒癖が悪く、酒場でトラブルを起こしては大暴れするので、みんなの厄介者で嫌われ者の銀次郎ですが

彼がいなければ第3・第4の犠牲者が出ていたことを考えると、銀次郎はスーパーヒーロー的な存在です。

ところで、犠牲者を供養するため、羆を食べるアイヌの風習があるそうです。

彼らは戸惑いながらアイヌの風習に従い、1人又1人と羆を食べ、最後には、みんな争うように食べていたそうです。

いくら、風習で供養とはいえ、自分の家族・仲間を襲い食い殺した羆を

なんの躊躇いも無く、食べられることが出来るだろうか?

私は、ちょっと無理だな・・・



最新の画像もっと見る